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40 因縁のある人たち

 高等学院に入って気づいたのは、図書室の蔵書が充実しているということだった。特に、貴族年鑑の類が整っている。まあ、平民ばかりが通う学校と貴族出身者が生徒と職員の大半を占める高等学院の違いなのかもしれないが。

 貴族年鑑というものの存在は、高等学院に入って、魔法の本を借りるために図書室に通い始めてからマリちゃんに教えてもらった。どういう風に見るのかも教えてもらった。

 で、私が最初に調べたのはガリエス伯爵家だった。

 六年前に私たちを襲った魔法使いの家。そして、ガリエス先輩の家でもある。

 ガリエス家は、元は侯爵家だが、六年前に当主及び子弟の一人が不祥事を起こし、伯爵家に格下げされたという。当主は六年前の不祥事の際に死亡し、ガリエス先輩の兄に当たる人が継いでいる、と。その人は王国軍に所属して、どっかの守備隊隊長をしている、と書かれていたのが記憶にあった。

 あー、そっか。ということは。

「あの……。もしかして、フロリゼル・テウル・ガリエス先輩のお兄さん、ですか」

「ああ、あれは末の弟だ」

 隊長が答える。

 ということは、この人は六年前に私たちを襲ってきた魔法使いの兄ということでもある。

 ヨハンが苦笑しながら言った。

「そんな風に睨まないで大丈夫だよ。こちらのガリエス伯爵は、六年前の件とは無関係だったと証明されている。というか、六年前、君たちが襲われていた場所に騎士隊が向かっていたのも、元はと言うとこの伯爵が情報をくれたからなんだ」

「はあ……」

「それより、君はなぜそちらの彼を捕まえてるんだい」

 ホリィと同じことを訊いてくるので、私は同じ答えを返した。

「この人にききたいことがあって。こうでもしないと行方をくらましそうなんで」

「何を訊きたいの?」

「魔素術と魔法の使い分けの方法を」

 ヨハンが少しばかり驚いたように目を見開いた。

「ああ……。君はこの男のことを知っているのか」

「ええ。八年前に」

「なるほどね。わかった、ひとまずはこの男を解放してやってくれないか。逃げることはしない、と私が保証する。彼は我が家の人間だからね」

「……わかりました。あなたの言葉を信用します」

 私は羽衣を男の手首から放した。

 男は手首を揺すりながら私をまっすぐに見た。いつものように無表情ではあるが、口元が少しばかりゆがんでいて、面倒くさがっている感じがあった。

 私は相手に向かって言った。

「私が神々の宴に出ることになってるってのは知ってるんでしょ。それに生き残るために必要なことなのよ。頼むわよ、タロちゃん」

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