33 時には知識を入れることも必要
昔、世界が出来たとき、人間は魔素術を使えるように神々に作られた。
魔素術、というけど、精霊をどうこうするような術ではない。この世界に遍く存在する魔素を操って行使するものだ。一説によれば、魔素が即ち精霊のことだというが、それが正しいのかはよくわからない。神々から答えを得られたことがないから。多分、誰も神々にそんなことをに訊いたことがないのではないかな。神々と話をする機会はそうそうないし、実際に話すことができても、神々は用件だけ話して消えるらしいから。
人間が魔法を使えるようになったのは、今から大体五百年くらい前のことである。世界の危機に際して、一部の人間が神々によって魔法を使えるようにされた。世界の危機を脱するのに魔素術では対処できなかったから。
神々から直接魔法を与えられた人間たちは、それまでと同様、魔素術も使えた。だけど、将来また来るかもしれない世界の危機に備えるためには魔法の腕を保つことが大事と考え、その子孫は魔素術を使わなくなった。
……てことは、貴族は訓練すれば魔素術も使えるはずなんだよねえ。でも、平民は魔法を使えないという。何という不公平。
私は溜め息をつきながら、魔法の歴史の本を閉じた。
今は、夜。火曜日の夜である。食事も風呂もすませ、後は寝るだけという時間帯。私は最近、その時間には魔法に関する本を読むようにしている。
ホリィが羽衣を私に使わせる条件として私が魔法を使えるようになること、を掲げている以上、私は魔法をマスターしないといけない。
魔法を身につけると決めたとき、私は魔法については理論を頭に入れることから始めることにした。幼い頃に感覚的に身につけた魔素術のようにはいかないと考えたからだ。
「まだ本を読んでるのー?」
ホリィが空中に現れた。私はホリィを上目遣いで睨んだ。
「何よ、文句ある?」
「いや、だってさー」
「さっさと実践に移れっていうんでしょ?でも、無理。魔素術師からすると、魔法って何がなんだかわからないのよ。第一、魔力って何よ?魔素ならいくらでも感じられるのに、魔力なんて全然わからない」
「だからさー、羽衣使えばいいじゃない」
「私が羽衣使って魔法を使いたくない理由、話したでしょ?」
ホリィが私に見せた、羽衣のサポートを受けて魔法を使うときの格好。あの、前世で見たアニメの中の魔法少女たちが着ていたようなひらひらの衣装。
「きいたけどさー。いいじゃん、ああいう服、一度くらい着てみたら」
「い、や、で、す!」
「わかったわよー、とりあえずは。それよりも、何だか楽しそうなことがありそうじゃない?」
ホリィは私が本の下に置いていた紙を引っ張り出した。
それは、今日、ジェニファからもらった手紙で、今度の連休にラウトゥーゾ遺跡に招待する、と書かれていた。




