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23 意外な人と意外な人の繋がりがわかる

 マリちゃんがなぜそんなことを知っているのかというと、学院に入学する前に、マリちゃんのおじいちゃんからきいたからだということだった。魔法科の二年に銀の髪に青い瞳をした美形がいるが、それはあのときに襲ってきた魔法使いの弟だと。

「多分おじいちゃまは後で知ることになるよりも事前に知っておいた方がいいだろうと思って教えてくれたのだと思うけど」

「何で私に教えてくれなかったの?」

「教えようとは思ったんだけど、シホちゃんが知ったら、魔法科の二年生全員を警戒して不審な態度になるかなって」

「まあねえ。でも、今まであの六年前の魔法使いの素性がどうとか聞こえてこなかったんだけど」

「侯爵家の醜聞なんて、普通、平民の耳にはあまり入ってこないことなのではないかしら」

「ふうん。まあ、いいけど。それよりさ、ガリエス家は侯爵家なの?ジェニファは伯爵家だって言ってたけど」

「六年前の件で降爵されたのよ」

「平民を殺そうとしたからって家格が下がるの?」

 意外だった。

 この世界の貴族は平民に対して傍若無人だ。人を人とも思わないような行動をとる者も多い。この学院では貴族も平民もなく平等に、という方針があるので、私は貴族の子弟である魔法科の生徒とも普通に話せているが、学院以外の場所では多分目を合わせることもできないだろう。

 それなのに平民を殺そうとしたからといって、爵位を落とされるなんてあるだろうか?

「テウルの家の者が、魔法使いにあるまじき行動をしたからですわ」

 不意に後ろから声がかかった。私とマリちゃんは声のする方を同時に見た。

 私は驚きで固まった。宴の参加者の一人、ヴィオレット・テウル・レイドール公爵令嬢がいた。

 彼女は私たちを少し睨みつけるようにしながら言った。

「そんな醜聞をお喋りするには少し声が大きいのではなくて?しかもここは図書室ですのよ。どんな人がきいているのだか知れたものではないですわ」

 マリちゃんは素早く頭を下げた。

「申し訳ございません、大変失礼なことをしました」

 公爵令嬢は鷹揚に頷いた。そして、私を見る。私にも謝罪をしろと言うのだろう。私は無言で頭を下げた。釈然とはしないが、とりあえず頭を下げておけ、という感じだ。話の続きは後でマリちゃんからきけばいい。

 公爵令嬢の表情は変わらない。不機嫌が解けたわけではないらしい。

 んー、マリちゃんみたいに反省を言葉にしないといけないのかなあ。それとも、頭を下げる角度が足りないとか?まあ、どっちもありそう。

 どうしようかなと逡巡していると、公爵令嬢の後ろの本棚の影から人影が二つ、出てきた。

 ジェニファとファラーグ先輩だった。ファラーグ先輩はいつもの薄ら笑いを浮かべていて、ジェニファは驚いたような表情をしていた。

 二人に気付いて、公爵令嬢の表情が驚きに変わる。

 ファラーグ先輩は笑みを浮かべたまま公爵令嬢に会釈をした。

 ジェニファは私とマリちゃんを交互に見ている。

「あの、今の話って……」

「申し訳ありません、お喋りが過ぎました」

 マリちゃんはジェニファにも頭を下げ、そこから頭を上げようとしない。

 ファラーグ先輩は苦笑を浮かべた。

「いいよ、頭を上げなよ。ラウトゥーゾさんは君たちのお喋りを咎めてるんじゃないよ。でしょ?」

 ファラーグ先輩に訊かれて、ジェニファは頷いた。

「えっと……、六年前に魔法使いに襲われたとか、殺されかけたっていうのがきこえて。それで、どういうことかなって」

 そんなところから聞かれていたのかと私は驚いた。

 公爵令嬢がファラーグ先輩を軽く睨む。

「魔法が展開されている気配は感じていましたけど、そんな魔法を使っていたんですのね。品のない」

「いやー、今日は魔法部の活動で調べもののために来てたんだけど、退屈で。ちょっとした小技を使えるといいかなと思って、部活の後輩に伝授してたんだよね」

 ジェニファは魔法部に入ったらしい。

「あの、ごめんなさい、シホちゃん、マリちゃん。二人の話を盗み聞きしようとしたわけじゃないの。聴力を強くする魔法を歩きながら使う練習をしていて」

 そしてたまたま私たちがその魔法の範囲内にいたというわけか。

 ファラーグ先輩は私たちの後ろの通路を見ながら言った。

「ああ、ついでだから、フロリゼルが戻ってきたら、その辺の話、きかせてもらえない?俺も、ガリエス家の次男が魔法で平民を襲って神の煉獄に納められた、というのはきいているんだけどさ。当事者の話をききたいんだよね。その方が、あいつにもいいと思うんだ」

 

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