22 図書室での邂逅
羽衣を使わせない、と言われて、私はホリィに抗議した。羽衣が使えないということは、人形師が使う魔素術である天術まで封じられる可能性がある。魔法に対抗するのに天術が使えた方が良いに決まっているのに。
しかし、ホリィは受け付けなかった。神々が羽衣を私に使わせることにしたことの意味を考えろ、と言った。神々は私が魔法も使うべきだと思っているのだと。
「でも、羽衣は魔素術の補助をしてくれるものでしょ。そのために持たせてくれてるんじゃないの」
「それも羽衣の機能の一つ。でも、それだけじゃないのよ。世界の危機を防ぐためには、あんたも魔法を使える必要があるわ」
「今は、そんな危機が来ているわけじゃないでしょ」
世界が縮んでいるとか、きいてない。が、
「備えあれば憂いなし、よ」
この問題について、ホリィは全く譲らなかった。私は魔法を使うことを考えるしかなかった。
私はとりあえず、魔法について調べるために、その翌日の放課後は図書室へ行った。学院の図書室は魔素術科も魔法科も共通で、そこに行けば魔法についての本がある筈だ。
宴のために調べ物をするのだと知って、マリちゃんはにこにこした。
「そっか、シホちゃん、本気になったんだね」
言いながら、マリちゃんは私についてきた。金曜日の放課後なのに、ありがたかった。マリちゃんは学院に入ってからは、家の商売を手伝うためと言ってすぐに帰ることが多かったのだが。
私が魔法について調べるつもりだと言うと、敵を知らないと戦えないもんね、と言って、関連の本を探してくれた。私は自分が選んだ本を読みつつ、マリちゃんが持ってきた本も読むことになった。
とはいえ、わからん。魔法って何なんだ。魔素術を使うのとは根本的に違うというのは理屈ではわかってるけど。
こうなると、アンリウォルズ先輩がクロウに、魔法か魔素術かどちらかに絞って使うように言っていたのは正しいように思えた。
ただ、両方を自在に使い分けることができる人間も知っているんよなあ……。彼に会えたら、いろいろ教えてもらえるだろうか。
そんなことをぼんやりと考えていると、
「魔法について調べているのか」
話しかけてきたのは、ガリエス先輩だった。彼は小脇に本を抱えていた。
私が答えようとしたとき、マリちゃんが本を何冊も抱えてやってきた。マリちゃんは、ガリエス先輩に気付くと私たちから少し離れたところで立ち止まった。
まあ、浅葱色の制服に銀バッジをつけた男子に話しかけられてるのを見たら、マリちゃんだったら近寄らないだろう。
私は椅子から立ち上がった。苦笑しながらマリちゃんに手招きをする。
「知ってる先輩だよ。魔法部の人。ジェニファの知り合いなんだ」
「あ、ああ……」
マリちゃんはガリエス先輩を凝視しながら、ゆっくりと近付いてきた。それを見ると、ガリエス先輩は離れていった。
先輩が十分離れたのを確認してから、私はマリちゃんに言った。
「なんか、じろじろ見過ぎだよ?」
「あ、うん。そうなんだけど……。今の先輩、なんて名前?」
「ガリエス先輩だよ」
「やっぱり」
マリちゃんは溜め息をついた。
「え、何?知ってるの?そんなに有名人なの?」
「まあ、有名というか……。あのね、六年前に私たちを襲ってきた魔法使いがいたでしょ」
「ああ、うん」
そして、奴は今は神の煉獄に囚われている。先日のオリエンテーリングのときに奴が姿を現したことについては、私はマリちゃんに言ってはいなかった。怖がらせてはいけないと思ったからだ。
でも、もしかしたらマリちゃんの耳に何か入っているのだろうか。
「それで、あのときの人がどうかした?」
「あの人、ガリエス侯爵家の人だったの。で、今の先輩はあの人の弟なのよ」
今日から平日は一日一話投稿にします。




