令和3年9月第2週
9月6日(月曜)
本日午前の東京株式市場にて日経平均株価が大幅続伸。9時15分時点で前週末終値比436円73銭高の2万9564円84銭となった。先週3日に菅義偉首相が退陣の意向を表明した事から「政治の安定化や新政権の経済対策への期待感」が広がり、買い注文が優勢となったと見られる由。東証株価指数/TOPIXも2038.46まで上昇。「バブル経済期の1990年8月21日以来、約31年振りの高値が付いた」との事。
世界的大流行の発生から一年以上を経ても、米国では「未だにマスク着用を躊躇する人々」が少なからず存在するが、其の多くが男性で在るのは何故か。New York Eye and Ear Infirmary of Mount Sinai(NYEE)の麻酔科医、Scott Gottlieb氏の見解に依れば、其れは「病気になる事を弱さと捉える考え方」が男性の間に存在する為だと考えられる由。
斯様な思考法を持つ男性は「健康に関してより危険な行動に出る可能性」が有り、例えば短時間のうちに大量の酒を飲み干す事、即ちbinge drinkingは女性より男性に多い。2011年にJournal of Health and Social Behaviorに発表された研究では、「男らしさ」の理想は「無敵で在るとの感覚を持つ」事に加えて「助けを求めるのに抵抗感を持つ」事と関連付けられている場合が多いとの結果が示された由。此の種の伝統的な性的規範は、「予防医療を軽視する」「危険な行動を取る」と云う二つの形で男性の健康に影響を及ぼすと言われるが、此の研究結果が発表されてから十年を経ても、同様の影響を受けている男達は少なからず居る模様。統計からも「ワクチン接種」「マスク着用」「手洗い」を避ける、又は拒否する者は「男性に多い」との結果が示されて居る上に、其の様な男性は「握手する」「他者の体に触れる」「不要不急の外出をする」「大勢が集まる場所に行く」等の「感染の危険性が高まる行動を取りやすい」傾向が有る。
米疾病対策センター(CDC)の資料でもCOVID-19による死者は女性より男性の方が多く、CDCは「恐怖を隠蔽しようと社交的に振る舞う男性も多い」が「Covid-19への恐怖を押し隠す事が如何なる反応を招くか」を考えねばならず、特に「攻撃性と憤怒で対応する男性」には注意が必要だが、其れは「危険性を軽視する傾向」を持つ彼等が「危険性を削減する政策に抵抗する」からだとの見解を示している。彼等の怒りは「感染症の流行の中で家族や自分自身を守る力を失った」「如何する事も出来ない」と感じている事の反動かも知れぬとの声有り。米国の男性に関する考察だが、我が国に於いても或る程度は通じる話かと思われる。
東京等に発令中の緊急事態宣言に関し、「今月12日迄とされていた期限を延長する」方向で政府が調整を開始したとの報道あり。観光客が激減した神奈川県箱根町の強羅駅前では「土産物店が絶望感を漂わせる」も、「全客室に露天風呂が付属」「食事も個室で提供」で客同士の接触が少ない高級温泉旅館の客足は落ちず、今月後半の三連休も既に満室と明暗が分かれている由。
昨日に国立競技場で執り行われたパラリンピック閉会式の後に「出演者や職員が大会マスコットのソメイティと共に記念撮影を行い、運動場内に千人超が密集」との報道に対し、本日に東京五輪・パラリンピック組織委員会が「式典の規模を考慮すると、全員での撮影に就いては慎重になるべきでした」。マスクを外していた者が居たとの指摘に対しても「配慮が足りませんでした」と謝罪。高邁な理想を掲げても所詮は御祭り騒ぎで、「感染対策も忘れて盛り上がりたい」との本性が露呈したのか。或いは「競技も式典も終わった後で多少の感染が出ようとも知った事では無い」と高を括っているのか。感動と感染広げる五輪かな、パラリンピックも似たり寄ったり。
9月7日(火曜)
昨年2月に感染の広がったDiamond Princess号船内に乗り込んで以来、COVID治療の最前線で奮闘。先日の五輪開会式では医療者の代表として長嶋茂雄氏等から聖火を引き継いだ事でも知られる、多摩ファミリークリニック院長にして日本プライマリ・ケア連合学会副理事長の大橋博樹氏が某誌の取材にて曰く、法的に「2類感染症」として扱われるCOVID-19に於いて「入院の可否は医師ではなく保健所が判断」するが、氏の活動する神奈川県川崎市でも「8月の御盆頃」から「本来なら入院が必要だけど、病床が無くて自宅に留まっていると云う患者さん」が「1日数名ずつ出る」様になり、「災害のような状態」を呈している由。
氏は「二百数十人の在宅の患者さん」を往診して来たが、更に保健所から「病床が無いから入院する迄、御願いします」と依頼を受ける症例が増加。基礎疾患で問題となるのは「一番が糖尿病」。時折「基礎疾患の無い若年者が重症化した」との報道が世間を騒がせる件に関して、氏は「基礎疾患が無い」のでは無くて「見つかっていない」、「高齢の方と違って三十、四十歳代では健診を受けていない方も居て、御本人も糖尿病だと知らない」との可能性を指摘し、「食事が摂れなくて意識が朦朧としている人」の診療を通して「隠れ糖尿病が悪化した状態」が判明した実例を挙げている。
他に「第5波は、感染者数が多い割には死亡者が少ない」が「失われなくても良い命が失われている」。抗体カクテル療法は「軽症の時に使うと悪化が防げる」との報告が有るので「積極的に使いたい」が、外来投与の許可は「入院施設が有る医療機関限定」。氏の診療所の様に「発熱外来で多くの新型コロナ患者さんを診ている」診療機関に関しては「ベッドが無くても外来で使える様に」、「軽症で見つけ、糖尿病など基礎疾患の有る方には、其の場で投与出来るように」との制度変更を要する。今後を考えると「野戦病院のような施設」や「すぐに入院しなければいけない人を見つける目的に特化した施設」が必要。「一般に年齢が高い」開業医に発熱外来の診療を求める事には限界が有り、特に「60歳以上で基礎疾患がある医師には、ワクチン接種で頑張っていただく」他無し。
そして従前は「親から移る症例が殆どだった」小中学生も、第五波に於いては「夏休みの後半ぐらい」から「中学生では部活だったり、感染源が分からなかったり」と同世代間での感染伝播の疑われる状況が発生。「学校が始まって如何なるのか」が最も懸念される点だが、「ワクチンを2回打った後に、コロナ感染で亡くなったり、重症化したりする人はごく少ない」事から「本気でワクチンをやる事が大事」で「ワクチン接種率は7割でなく、8割、9割を目指して頑張る必要が有る」と大橋氏は考えている由。
本日の閣議後会見で副総理兼財務大臣の麻生太郎氏が、総裁選不出馬を決めた菅義偉総理大臣の功績を評価。脱ハンコ推進は「革命的な話に近い位、でかかった」、炭素中立やデジタル化推進も「経済に非常に大きな影響を与えた」と称賛。東京五輪に関して「マスコミが著しく阻害した」中で「きちんと纏められ、経済や消費に効果が有った」と語った事にも多少の疑問は残るが、昨日の東京都に於ける新規感染者数が千人を下回っただけで「コロナは曲がり形にも収束して国際社会の中の評価は極めて高い」「然う云った意味では、全うしたと云う思いが有った事は確かだ」と発言したのは明らかな誤謬。長らくマスクも付けずにマウスガードを愛用していた麻生氏は現在も感染状況に対する関心は乏しく、「総理の椅子を降りようとする菅氏を、政界の実力者たる自分が褒めて遣わす」状況の方が重要なのだろうか。其の驕りから閣僚に有るまじき不見識を曝け出し、菅総理の顔にも泥を塗る結果となった。
9月8日(水曜)
21都道府県に発令中の緊急事態宣言について、政府は「首都圏を含む大都市圏を中心とする19都道府県」に於いて「9月12日の期限を30日まで延長する」方針を固め、明日に開かれる対策本部会合を以て正式決定となる模様。12県に適用されていた蔓延防止等重点措置は福島、石川、香川、熊本、宮崎、鹿児島の6県で延長され、宣言から移行する宮城、岡山と合わせて新たな期限は30日迄との事。
本日は、政府の新型コロナ対策分科会も開催。協議の結果、宣言解除の要件としては「新規感染者数が2週間ほど継続して下降傾向」に在る事を大前提とした上で「重症や中等症の患者の数が継続して減少傾向」、「特に大都市圏では、自宅療養や入院調整中等とされている人数が10万人当たり60人程度に向かって確実に減少」、「病床使用率や重症病床の使用率が50%未満」等の条々が挙げられた。分科会会長の尾身茂氏から「勿論、新規感染者数の増減を考慮するのが当然」だが「其れ以上に医療逼迫の状況を重視する事に合意しました」の発言有り。
以上を布告する一方で、政府は「今後は宣言発令中の地域に於いても順次、行動制限を緩和する」との方針も採用。本日発表で2回目のワクチン接種を終えた日本国民は49%に達したそうだが、制限緩和の実施は更に接種が進んだ11月頃を想定。
接種を前提とした政府の「行動制限緩和の新たな方針案」では「感染対策の認証を受けた飲食店」に於いて「酒の提供や営業時間の制限」が緩和され、「ワクチン2回接種完了の証明書」や「PCR等の検査による陰性証明」を条件に「4人迄」等とされて来た人数制限も軽減。大規模催事に関しても「QRコードを用いた濃厚接触者の追跡」等の感染対策を講じ、「接種証明等を活用」した上で、「宣言対象地域では5000人迄」と定められた入場者数の上限が引き上げられ、宣言や措置が出ていない地域では制限が撤廃される予定。旅行を含めた「県を跨ぐ移動」も、接種完了済の者は原則的に許可され、「学校の部活動等」も可能になる模様。
明日の対策本部で正式決定、来月から実証実験が始まる予定との事だが、秋冬は本来、コロナウイルス感染症の好発する時季。早期に接種を済ませた者の抗体価が下落するも3回目接種の具体的計画は無く、新たな変異株も発生する等の状況も続く中で、積極的に社会や経済を回す方向へと舵を切る事の成否や如何に。未だ五里霧中の情勢が続く。
昨日に「コロナは曲り形にも収束」と発言した麻生氏が「どんな科学的知見から収束と言っているのか」「病床逼迫状態は変わらないのに、大臣として不謹慎な発言ではないか」等の批判を浴びるも、氏の言行を振り返ると、昨年は5月の参院財政金融委でCOVID-19に関して「どの道、私はちょっと偏見が有るので恐縮だが」と前置きしつつも「此れは風邪だから」「流行り病だから」、「7月になったら大体、止まっている」「此の種の話は6月に何となく収まるのかなと思わないでも無い」等と放言。其の後に感染拡大が繰り返される中、マウスガードを愛用して飛沫を産生し続けた挙句、米国の疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention; CDC)が「ワクチン接種後も感染予防の為に着用すべき」と呼び掛けても「マスクなんて何時まで遣るのか」と無知を露呈。一昨日の項に記した「男性的行動規範に捕らわれ、感染対策を軽視する米国男性」と同種の性質を感じぬでも無いが、今月末で菅総理も任期満了。総裁選や衆院選の行方も不明だが、斯様な愚物が政権中枢に居座る事を許さぬ国家を切望する。
9月9日(木曜)
本日の新型コロナウイルス感染症対策本部で、政府が行動制限緩和に向けた「基本的方向性」を決定。菅総理が記者会見で、「宣言地域で在ってもワクチンの接種証明や検査の陰性証明を活用し、制限を緩和して行く」と語るも「新たな変異株の出現」等に依って医療が逼迫すれば「再び強い行動制限を取る可能性」も有るが、制限緩和の判断は次期政権に委ねられる事になるが、菅氏曰く「今の私達が考えて来た仕組みをしっかり伝えて協力していきたい」との事。
愛知県常滑市で開催された「密フェス」ことNAMIMONOGATARI2021。参加者のうち、昨日迄に27名と本日に3名、総計30名の感染が確認された。愛知県内の感染者は25人、東京都や大阪府を含む県外では5人。本日午後に会見した県知事の大村秀章氏は「ああ云う無謀な催事を遣られると関係者の努力が一瞬にして水泡に帰す」、「大規模な催し物を開催する時には、事業者には感染防止対策の徹底を改めて特記した」と語った。
昨年12月に複数の国で初めて確認され、今年3月に世界保健機関(World Health Organization; WHO)が「注目すべき変異株(Variants of Interest; VOI)」に指定。七番目の希臘文字を関するイータ株が「昨年12月以降、国内の検疫で18件見つかっていた」旨を、厚生労働省が9月3日までの集計として公表。国立感染症研究所による分類に於いては、懸念される変異株(Variants of Concern; VOC)VやVOIに指定されておらず、8月末まで日本国内では公表対象になっていなかった由。
昨日の国際五輪委員会(IOC)理事会後にThomas Bach会長が回線接続で記者会見。今夏に実施された東京五輪を通して「世界的大流行の中で安全な大会を開催出来ると云う自信と証明」を得たと語り、来年2月に迫る北京冬季五輪開催に意欲を見せる一方、北京五輪の観客数に関しては「東京大会と同様の原則に従い、当局の決断を受け入れる」と述べた由。東京五輪が安全だったか否かに関しては大いに異論が有るが、既に終わった話。他国での開催に口を出す事も出来まい。
物理学や感染症等と多彩な専門分野の科学者約30人が「空気感染が主たる経路であると考えられるようになっている現在」ならば「様々な方法」を用いた「感染拡大の阻止は可能である」等の緊急声明を出し、空気感染を重視した感染対策を求めた件に就いては、先月27日の項に記した。賛同者の一人で在る仙台医療センターのウイルスセンター長、西村秀一氏は「政府の分科会等の専門家が、国民に対してきちんと『新型コロナウイルスは空気感染する』と説明していない」為に「職場や学校等でも空気感染対策が不十分」、「政府の対策には部分的に空気感染対策になっているもの」も無いでは無いが「改善の余地が未だ沢山有ります」と指摘。しかし、厚生労働省のサイト「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」は、現在に至るも「一般的には飛沫感染、接触感染で感染します」との説明に留まり、 煙霧質への言及無し。
しかし、昨年7月の時点で、既に西村センター長を含めた世界の感染症や環境工学等の専門家200人以上が「COVID-19は空気感染の可能性が高い」と注意喚起する見解を米感染症学会の学術誌に発表して居り、同月に世界保健機関(WHO)も「人の密集した換気の悪い空間で、空気感染が起きた可能性は否定出来ない」と空気感染の関与を肯定。更に本年4月からは感染経路に関する説明文が「ウイルスの含まれたエアロゾルや飛沫を吸い込んだり、それらが目や鼻、口に直接入ったりして感染する」と、エアロゾルの記載を飛沫より優先する形に変更され、世界的には空気感染の重要性が認められつつ在る模様。
WHOの方針転換には「コールセンターや食肉加工場での集団感染」等の「空気感染で無ければ説明出来ない感染事例」が多数報告された事、最新技術を用いた「微小粒子の空気中の動きや大きさ」に関する研究の知見が蓄積されて来た等の背景有り。科学誌Scienceの電子版でも、8月27日に発表された総説“Airborne transmission of respiratory viruses”が、200本以上の論文を基に、COVID-19を含む呼吸器感染症の空気感染に関する最新の知見を紹介。
過去1世紀に渡り、ウイルスの呼吸器感染は「主に飛沫を介して広がる」と考えられて来た。即ち、基本的には「感染者の咳や嚔から生じた飛沫が宿主の鼻や口、或いは眼の粘膜に沈着する」経路、若しくは「宿主自身が触れる事で飛沫の成分が粘膜表面に移される」経路の何れかに因り、感染が成立する。との仮定に、殆どの公衆衛生機関は頼っていた。また従来、エアロゾルは直径5粆未満、飛沫は5から100粆程度と分類されて居たが、近年になって空気力学上は100粆を境に性質が変わる事が判明し、「100粆で線引きするべきだ」と考える専門家が増えて来た。COVID-19の世界的大流行を経て「結核、水痘、麻疹と云った例外を除き、ウイルスの呼吸器感染は稀な事象」との伝統的見解に於ける限界が示され、今ではインフルエンザ・ウイルスや重症急性呼吸器症候群コロナウイルス /SARS-CoV、中東呼吸器症候群コロナウイルス/MERS-CoV、そしてCOVID-19の病原体たるSARS-CoV-2 を含む多くの呼吸器ウイルスの空気中感染を支持する強固な証拠が存在する由。
或る研究は「1分間の発話が少なくとも千のエアロゾルを産生する」可能性を示唆した。咳は短時間で多くのエアロゾルを産生する一方で、無症候性の感染者では呼吸や発声よりも遥かに散発的。総じて言えば、「感染者に依る呼吸や発話及び其の他の継続的な発声」は、頻度の少ない咳よりも「ウイルスを含むエアロゾルを多く放出する」可能性が高い。重力の法則に従い、高度1.5米で放出された100粆より大きい飛沫は、5秒未満、2米以内で落下する。しかし、エアロゾルは大きさが5粆ならば33分間、1粆ならば12時間以上に渡って空気中を漂い、周囲の気流速度にも依るが「2メートルより遠くまで移動する」可能性が有り、空調機構の状況次第で「別の部屋に流れて行く」事も有り得る。
其の一方で「空気感染の性質を有する」事は「擦れ違っただけで移る」事や「感染が瞬く間に広がる」事と同義では無く、「感染者の周りはエアロゾルの濃度が高い」為に感染者に近づけば感染し易くなり、離れる程にリスクが低くなるのは飛沫感染と同様。「密を避ける」「不織布マスクを着用する」等も重要だが、ウレタンマスクの単独使用は無意味。マウスシールドの無効は以前から指摘されていた事だが、空気感染に対してはフェイスシールドの防御効果も乏しく、単独使用では「エアロゾルがシールドの下部に溜まり、むしろ感染リスクを高める」恐れ有り。飲食店等で使われる透明な隔壁も「内部のエアロゾルの濃度を高める」危険性が否定出来ないとの事。
換気に関しては複数箇所の窓や扉を開け放つ事や扇風機等の利用、機械も用いた換気が推奨されているが、感染対策の方針転換を日本社会が受け入れられるか如何かは疑問。特に慣例重視の厚生労働省は「空気感染の概念が従来より拡大された結果、法定感染症の範囲を広げる方向に議論が進む」事を望まないだろうと危惧する。
9月10日(金曜)
一昨日に米国の生物工学企業、Novavaxが「COVID-19と季節性インフルエンザの混合ワクチンの初期段階の試験を開始した」と発表。単独のワクチンとして第3相臨床試験で良好な結果を出している同社のNVX-CoV2373とNanoFlu、其れに補助剤のMatrix-M(TM)を組み合わせ、単一製剤としたもので「豪州で640人を対象に初期の治験を始め、来年前半に結果が出る予定」との事。
COVID用ワクチンのNVX-CoV2373は「やや修正を加えた合成のスパイク蛋白質を体内に注入する」故に、組換蛋白質ワクチンともウイルス様粒子ワクチンとも分類される形式。使用法は「21日間隔で2回投与」で「摂氏2度から8度の範囲で安定して冷蔵保存」が可能、治験上は「コミナティ筋注」や「COVID−19ワクチンモデルナ筋注」に劣らぬ効果が示されて居り、副作用は幾らか少ないのでは無いかとの期待が持たれている。ノババックス社が武田薬品工業と提携した事で我が国とも無関係とは言えぬワクチンだが、製造過程でBaculovirusが用いられる事、野生のバキュロウイルスが「感染したマイマイガの幼虫を操って木に登らせ、其処で宿主の体をドロドロの液状に変えてしまう」事が陰謀論と結び付き易いらしく、一部では「ゾンビワクチンを人類に植え付けようとしている」等と恐れる者達も居る模様。
更に昨日の投資家向けの研究開発事業説明会で、Modernaも「COVID用の追加接種と季節性インフルエンザワクチンの接種が1回で済むワクチン」の開発に着手している旨を公表。同社の発表に拠ると、現在も各国で接種に使われているのと同じCOVID用ワクチンと、季節性インフルエンザ向けは新たに開発しているものを使用するが、いずれもmRNAワクチン。マウスを使った実験で両方のウイルスに対する抗体量の上昇が確認されており、両者を混合する事で利便性が高まると共に医療費を削減出来るとの利点有り。
モデルナ社は将来的に「RSウイルスを含む他の呼吸器疾患を引き起こすウイルスに対する成分も加えた混合ワクチンを開発し、毎年接種する」事を目指している模様。最高経営責任者のStephane Bancel氏は「有効性が高い汎用的な呼吸器疾患のワクチンを市場に投入できれば、極めて大きな可能性が我々の前に開かれる」が「此の重要な市場に参入するのはモデルナが最初になると確信している」と述べた由。国産ワクチンが一社も実用化されぬうちに、世界の市場は先の商戦へと駒を進める様だ。
今週火曜に新型コロナウイルス感染が「曲がりなりにも収束した」と発言した事に関し、本日閣議後の記者会見で麻生太郎氏が「完全に収束したのでは無く、然う云う傾向を申し上げた」に過ぎぬと抗弁。直近の新規感染者数が「確実に減少して来ている」、「然う思って、収束しつつ在るのでは無いかと」述べた。感染対策は「引き続き気を緩めないで遣って行かないといけない」等と語るも、「不適切な発言で人心を惑わし、申し訳無かった」等と謝罪する姿は終ぞ見られなかった模様。
9月11日(土曜)
先月9日から仏蘭西政府が「食店や長距離の公共交通機関などを利用する際、原則としてワクチン接種や陰性証明等の証明」、即ち“Passe Sanitaire”(衛生パス)の提示を義務付けた事に対し、「義務化は事実上接種の強要」「個人の自由を奪う」と7月半ばから抗議の街頭活動が激化。義務化実施から初の土曜日となった14日に行われた街頭活動は全国217箇所に及び、凡そ21万人が参加。巴里では「接種を拒否する自由を」、或いは「独裁的なEmmanuel Macron大統領は退陣を」等と書かれた手持看板を掲げて行進する一方、世論調査では「国民の半数余りが義務化に理解を示している」との結果が示された。
仏蘭西人の多くが夏季休暇を楽しむ筈の8月中も反対活動は収まらず、今月9日から「飲食店、緊急時を除く病院の利用時も接種や陰性結果を記録した衛生パスの提示」が、今月15日から医療や介護施設で働く全職員に接種が義務付けられるとの状況有り。当時の同国に於ける一日当たりの感染者数は約2万人で、同国政府は「5月31日~7月11日に国内で感染して死亡した926人のうち、78%に当たる720人が未接種だった」と分析。
巴里在住で自由契約の著述者、「光のオブジェ作家」としても日仏で活動する永末アコ氏が、本日付で電網媒体のJBpressに寄稿した所に依れば、「戦後最大とも言える抗議の市民デモ」が「パリ、マルセイユ、リール、モンペリエなどの各都市に加え、中小の街、田舎の広場」と「フランス全土の200カ所以上」で「毎週土曜に」実行され、「去る9月4日には8回目を迎えた」由。多くのデモ参加者が叫ぶ“Liberte!”は「自由を!」の意で、「同じ船に乗って大波に揺られようと、船長の独断的な命令に簡単には従わないのがフランス人」との事。
自ら街頭活動に参加した永末氏は「学者、知識人、化学者、起業家、教師、警官、看護婦、主婦、販売員、清掃員、受付員、学生、スポーツマン、ミュージシャン、エンジニア、イエローベスト運動の参加者、失業者」等と「あらゆる年齢、職業、社会階級の人々が同じ思いで混ざり合っていた」事や「スーツスタイルのムッシューと、ガレージから出てきたようなティーシャツの男性と、優雅なワンピースを着たマダムと、ビーチサンダルを履いたヒッピー風の女の子が、肩を並べて行進」して「時々、国歌のラ・マルセイエーズの合唱がどこからともなく始まり、感極まる人もいる」光景に痛く感動し、「国は政府のものではなく国民のものである、という思いを新たにする人々」「この国の人たちには何百年も前の市民革命が深く刻まれている」と感銘を受けた様子。「16歳からは親のサインが不要」になる事に「柔らかなヒゲの一本がやっと生えてきた少年が、独断でワクチンを打つ」等と大袈裟に驚いて見せ、「家族や友人や恋人と愉しく食事中のレストラン」に「突然、衛生パスをチェックするために、棍棒とピストルを下げ、硬くごっつい制服と靴に身を包んだ警察が数人現れ」「レストランの端から順にQRコードと身分証明書をチェックしていく」、「チェックを待つうちに温かなスープは冷め、食欲は一気に失われるだろう」等の想像は描写が情緒的過ぎるが、此れが仏蘭西的なのかも知れぬ。
何はともあれ、「現在成人した国民の約85パーセント以上が一度目の接種を終え」て「二度目の接種は、約70パーセントに達している」。そして「先週のフィガロ紙による世論調査によると、67パーセントのみ」が「現在、衛生パスに賛成」。永末氏は「間違えてはならないのは、このデモがコロナワクチン反対をうたったものではない」、飽くまで「衛生パス導入の反対」を政府に訴える事が趣旨で「政府による衛生パスを介した市民へのコントロールや自由の縛り」に「断固とした拒否を示すものだ」と主張している。しかし、「2回接種を終えた国民と衛生パス賛同者の割合が一致している」事実は、「接種を受けたくない仏蘭西人が街頭で衛生パスに反対している」と解釈するのが最も自然だろう。
ただ「来年4月に大統領選を控えるマクロン氏にとっては、感染の制御は再選戦略の一環」「10月からはPCR検査を有料に切り替え、さらに接種圧力をかける方針」と報道されて居た上に本日、フランス南部のToulouseに於いて、平和裡に行われていた街頭活動の最中、唐突に乱闘が発生。現場は一時混乱し、警官隊が出動して催涙弾が使用される騒動が発生。目撃者曰く「抗議デモの参加者は正体不明の集団に突如襲われ、驚いていた」との事で少なくとも3人が負傷し、うち1人が病院に搬送された由。緊急事態に際して国民の半数近くから賛同が得られず、激しい反対活動が各地で発生する事態を招いたのは、矢張りマクロン政権の失政と言わざるを得まい。
永末氏の文章は「船が沈没しそうになり、乗客は海に飛び込まなくてはならない状況」で米国人には「ヒーローになれますよ」、伊太利人には「女性にモテますよ」、日本人には「もう皆さん飛び込みましたよ」、そして仏蘭西人には「飛び込まないでください」と説得する事で全員を飛び込ませる事に成功した船長の話と云う「世界の人が笑う」冗句から始まり、「フランスは自由の国」「個人が尊重される国で、上から強制されることが大嫌いだ」と続くが、船が沈没する様な緊急事態に於いても船長の指示に従えない我儘勝手な乗客は往々にして目的地には辿り着けず、世界的大流行と云う名の嵐に於いても同様と言える。当方の本職と関連する範囲で言えば、巴里に憧れて渡航するも適応障害を来して帰国を余儀無くされる現象は「パリ症候群」(syndrome de Paris/ Paris syndrome)と呼ばれるが、フランス人の我の強さに辟易してしまう事が一因か。「死ぬ前に一度はLouvre美術館を観に行きたい」との念願は有るが、巴里に住みたいと思った事は無い。
9月12日(日曜)
コロナ禍の産物たる「新しい生活様式」が消費行動に著しい影響を及ぼした結果、遠隔勤務の浸透が白襯衣の購入を減らし、外出自粛がhamburgerの売上を伸ばした。斯様な社会の動向は、今年に入って更に加速。以前から「ドライブスルーや宅配の利用が消費者に定着していた」事も功を奏したか、日本Mcdonald's持株会社の広報担当者が誇って曰く「外出の自粛で店内客は減っている」ものの「其れを上回る持帰や出前の利用が有る」との事。先月の既存店売上高は前年同月比で5.3%増となり、度重なる緊急事態宣言の下でも14ヶ月連続で前年実績を上回った。
総務省の家計調査に基づき、読売新聞が出した今年1月から7月の集計では、2人以上の世帯に於けるハンバーガーの消費支出は、一昨年の同時期に比して20%も増加。緊急事態宣言の影響を強く受けて飲酒代が83%減、和食が25%減、中華蕎麦が24%減と飲食業が軒並み不況を呈する中でハンバーガー店の好調が際立つ結果となった。馬の目を抜く業界で他社も商機を見逃さず、居酒屋大手の鳥貴族が“TORIKI BURGER”なる「国産食材100%で作るチキンバーガー専門店」を開業。家族用料理店 ロイヤルホストの運営会社が始めた“Lucky Rocky Chicken” は「バターミルクフライドチキン」を取り扱うが、其れをbunsに挟んだ物が目玉商品とされている。
消費者が外出自粛を含む感染予防策を実行した結果、医薬品では「感冒薬」が18%減るも、手指洗浄や料理で手が荒れる為か、「外傷・皮膚病薬」は26%増加。自動車関連では瓦斯倫代が減り、車両賃貸や自動車相乗の料金が23%減と落ち込む一方で有り余る時間で愛車を磨きたくなる為か、「自動車等関連用品」は12%増した。働き方の変化が「家庭のデジタル化とテレワークの定着」を推進した事に依り、同じ集計に於いてパソコンが一昨年同期比で50%増、照明器具が63%増と大きく伸びたが、背広服は47%減、上述の如くワイシャツは31%減。紳士服連鎖店は苦戦を強いられるも、「オンライン会議に出席する際の服装」に活路を見出し、「ストレッチ素材のスーツ風商品」を着させようと努力を始めた模様。
愛知県では「常滑市で開かれたNAMIMONOGATRIに参加した名古屋市の20代女性」の感染が新たに確認され、「密フェスのクラスターが拡大」と報じられる一方、感染者数は2日続けて1000人を下回った由。昨日と本日に朝日新聞社が全国世論調査。電算機が無作為に打ち出した電話
番号に調査員が全国へ電話を掛けた所、固定電話では有権者が居ると判明した1042世帯から575人で回答率55%、携帯は有権者に繋がった2027件のうち902人で44%。総計1477人の有効回答が得られた由。全国の有権者は「緊急事態宣言が出ている地域でも、接種済証明書を提示する等を条件に行動制限を緩める」との政府案に関して51%が「賛成」と答える一方、「反対」も41%を占めた模様。男性は「賛成」が58%で「反対」の37%を上回ったが、女性は「賛成」45%と「反対」46%と伯仲。30代以下の男性では「賛成」が7割近くを占めた模様。COVID感染時に必要な治療を受けられない不安、君に有りや無しやと訊かれれば、38%が「大いに感じる」、44%が「ある程度感じる」で、合わせて82%。「あまり感じない」13%と「まったく感じない」4%を合わせて17%よりも多かったが、30代以下の男性の「大いに感じる」は2割強と少なかった由。
若年男性が積極的、且つ些か楽観的なのは当然かも知れぬが、反対意見も少なからず存在する事が気懸かり。制限緩和の行く末は如何に。




