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令和コロナ騒動実録  作者: 澤村桐蜂
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令和3年3月最終週~同年4月第1週

3月29日(月曜)

 大阪府(おおさかふ)では緊急事態宣言が解除された先月28日以降に感染者数が増加に転じ、26日は300人、一昨日は386人で昨日は323人と東京都の313人も上回り、三日連続で300人を超過。斯様(かよう)な情勢を踏まえて、本日に府知事の吉村(よしむら)洋文(ひろふみ)氏は「感染拡大の速度を見ても恐らく今週、また増えてくるのではないか」、「感染経路の不明者が非常に多い」状況も(かんが)みて「第4波に入った」との見解を述べた。更に氏は、緊急事態宣言が出されずとも集中的な対策を可能にする「蔓延(まんえん)防止(ぼうし)(とう)重点(じゅうてん)措置(そち)」の適用を国に要請する方向で検討しており、措置が適用された場合は「飲食店等への入店に際してマスク着用を義務化」「違反者は入店禁止」等を考慮する事も表明した由。

 蔓延防止等重点措置は、先月に施行された新型コロナウイルス対策の改正(かいせい)特別(とくべつ)措置(そち)(ほう)で新設。「重点措置」を講じる要件に関しては新規陽性者数等の状況を踏まえつつ「都道府県で感染の拡大」の恐れ、「医療の提供に支障が生じる」恐れ等を認める場合と規定されている。適用の目安は「ステージ3」と想定されているが、感染が局地的かつ急速に広がる場合は「ステージ2」での適用も有り得る。重点措置が適用された都道府県の知事は「市区町村等、特定の地域を限定する」事が可能。重点措置の(もと)で、都道府県が店舗や施設に執行出来る措置として「従業員への検査受診の勧奨」「入場者の整理」「発熱等の症状を有する者の入場禁止」、「入場者へ感染防止の為の措置の周知」と「()れを行わない者の入場禁止」等が定められている。

 全国の感染者数も今月2日には1週間平均が1千人を切ったが、28日時点で1713人に上昇。34都府県で前週より増加を認め、全国の感染者数は「政府分科会がステージ3相当の地域に強い対策を求めた昨年11月20日」に匹敵するが当時は飲食店等に時短営業を求めていなかったのに対し、現在は「21時迄の時短要請を続けている中での感染拡大」との相違有り。昨日に内閣官房が(まと)めた資料によると、感染状況や医療逼迫(ひっぱく)の度合を示す6指標のうち、大阪府は「新規感染者数」「其の前週比」等の5項目で「ステージ3(感染急増)」以上、「療養者数」に関しては緊急事態宣言が検討される段階の「ステージ4(感染爆発)」に相当。東京都も四つの指標がステージ3に該当。従前は感染者が少なかった東北や四国でも急速な増加が見られる。宮城県(みやぎけん)沖縄県(おきなわけん)の感染者数はステージ4に達し、山形県(やまがたけん)もステージ3で、飲食店で集団(クラスター)感染の発生有り。

 順調に下がって来ていた(はず)の病床使用率も、悪化の兆候。同じく内閣官房資料によると、千葉県(ちばけん)愛知県(あいちけん)、大阪府等で病床使用率が上昇。変異株(へんいかぶ)検出が相次ぐ兵庫県(ひょうごけん)では、ステージ4相当の54%に到達。いずれにしても予断(よだん)を許さぬ状況の中で「厚労省官僚、銀座で深夜まで23人宴会」と驚愕すべき報道も飛び込んで来たが、()の件に()いては明日。


3月30日(火曜)

 昨年12月に5都府県で20歳以上の男女合わせて1万5000人に実施した抗体(こうたい)検査(けんさ)に関し、本日に厚生労働省が確定値を公表。抗体保有者の割合は東京都が1.35%で、2月に公表された速報値を0.44ポイント上回った。他は愛知県0.71%、大阪府0.69%、福岡県0.42%、宮城県0.14%で、厚労省からは「地域差が有るものの、依然として多くの人が抗体を保有していない事が確認された」「欧米に比べても低い水準で、引き続き基本的な感染対策の継続が推奨される」との見解を発表。同時期にPCR検査等で感染が確認された者の割合は、東京都が0.32%で愛知県0.15%、大阪府0.26%、福岡県0.12%、宮城県0.06%。抗体検査の結果と数値に多少の乖離(かいり)を認めるも「単純な比較は出来ず」、「検査でも感染者の一定の把握は出来ていると認識している」との事。

 斯様に職責を(まっと)うしている厚労省官僚も有れば、()うで無い公僕も居た様で。某誌が()()()いた所に()れば、時は二度目の緊急事態宣言が解除されてから三日後の今月24日。場所は人影も(まば)らな夜の銀座(ぎんざ)。と或る居酒屋に厚生労働省の官僚23人が集い、夜が更けるまで盛大な宴会が催された由。

 19時10分に「厚労省老健局の職員6人」が席に通されるや否や「マスクを外して談笑」。19時50分を回り、10人が集まった所で幹事が乾杯の発声。感染防止等は何処(どこ)吹く風と「誰一人マスクをせずに」大きな声で盛り上がり、「濃厚接触間違いなし」の所に1人、また1人と合流して、20時10分の段階で17人に増加。此の日は「人事異動に伴う送別会」だったらしく、幹事の呼び掛けで改めて乾杯。異動する者が前に出て挨拶する毎に歓声と拍手が起きたが、時短要請で21時閉店が求められているにも関わらず「此れから()だ来るから」と料理の提供が一時停止され、宴は延長。店側は困惑。23人目となる最後の厚労省官僚が訪れたのは21時30分頃だったが、盛況の会を中断させる訳にも行かず、店側は困惑。(うたげ)が果てたのは22時半頃だったが、官僚達は「支払いを済ませた後もぐだぐだと店に残り」、全員が退店したのは「日付が変わる寸前」だった由。

 厚労省は大臣官房人事課から各部局に対して「業務後の大人数での会食や飲み会を避ける」様に、また政府が昨年3月28日に発表した「感染リスクが高まる5つの場面」に該当する行動は慎むべきと指示している由。5場面とは「飲食を伴う懇親会等」「大人数や長時間に及ぶ飲食」「マスク無しでの会話」「狭い空間での共同生活」「居場所の切り替わり」を指すが、今回は第一から第三に該当。今般の事態に対し、厚労省は「今回の会食は指示の趣旨に反するものであり、再発防止のため改めて指示をし、全職員の認識を徹底する」との声明を出したが、其れだけで収拾(しゅうしゅう)する筈も無し。

 田村(たむら) 憲久(のりひさ)厚生労働大臣が「23人という非常に多い人数で、常識では考えられない」「国民に日頃、生活の制約を御願いして居ながら信用を裏切る形になり、御詫びを申し上げる」と謝罪。綱紀粛正を宣言し、「会合を主催した老健局の老人保健課長」を大臣官房付に異動させ、事実上更迭。管理責任を問われる田村氏自身も「大臣給与2か月分を自主返納」の方向で調整が進められている旨の報道有り。政府与党内からも自民党の加藤(かとう)勝信(かつのぶ)官房長官が「正直に言って一体、何をやっているんだと云う思いを強く持った」、世耕(せこう)弘成(ひろしげ)参議院幹事長から「はっきり言って怒りに震えた」、公明党の山口(やまぐち) 那津男(なつお)代表が「我が耳を疑う(ぐらい)吃驚(びっくり)した」等の反応有り。立憲民主党の安住(あずみ)(じゅん)国会対策委員長は「大人数や長時間の会食を止めて下さい、と自粛を求め」て来た厚労省の役人が自ら「()れを破っていたら誰も政府を信用しなくなる」と批判。同党及び共産党、国民民主党の野党3党の国会対策委員長らが会談し、田村厚労大臣の監督責任も(ただ)していく方針を確認した。

 (ある)いは「高級官僚の(おご)り」、或いは「多少の専門的知識を有するが故の判断の甘さ」。幾らでも批判は成り立つが、役所の面子(めんつ)を潰した事で出世の目が皆無となり、省内に残ろうが出ようが(いばら)の道を歩むしか無い参加者達を更に叩く作業は余人(よじん)(ゆだ)ねたい。今回の事件で真に問題とすべきは、防疫(ぼうえき)(かなめ)とも云うべき厚労省にすら所謂(いわゆる)自粛(じしゅく)(づか)れ」が瀰漫(びまん)していた事実だ。感染対策を怠る気の緩みは無論、一般社会にも広がっているが、今回の事件で「役人すら守って居ないのだから」等と更に状況が悪化する事も容易に予測される。一方では斯様な世情の中でも東京五輪と云う巨大な祭典が刻一刻(こくいっこく)と迫っており、一天いってん四海しかいから選手団や招待客が入国して来る段取りが今日此の時にも着々と進められているのも現実。戦慄(せんりつ)を通り越して最早(もはや)失笑(しっしょう)すべきかも知れない。


3月31日(水曜)

 本日の記者会見で日本医師会の中川(なかがわ)俊男(としお)会長が、今後は近畿3府県と同様に「首都圏の感染者も同様に一気に増加して行く」と予想。「今、確実に第四波(だいよんぱ)に向かっている」「第四波が本格化すれば、緊急事態宣言の再度の発令も視野に入れなければならない」と語り、危機感を(あら)わにした。衆議院厚生労働委員会では、政府分科会の尾身(おみ)(しげる)会長も「大阪府に関しては、感染レベルがステージ4に近づきつつ()り、医療への負担も少しずつ進行している」「春休みの影響も有り、10代を含めた比較的若い年齢層に於いて、懇親会(コンパ)等で感染が急速に拡大した事は(ほぼ)間違いない」と指摘。其の上で「大阪では既に時短が行われているが、更に強化するのか」「どうしたら更なる行動変容の協力をして貰えるか」等を十分考慮した上で「蔓延防止等重点措置の発令を検討する時期に来ている」との見解を語り、「変異株の感染力が既存株よりも高まっている」「感染拡大の兆候があったら早く重点措置も含めて強い対策を打ち、更に感染者が多くならない様、努力する事が必要だ」とも述べた由。

 渦中(かちゅう)の大阪府では、本日に599人の感染を確認。一日当たりの人数としては過去5番目に多く、感染者が再び急増している事が窺われた。府が今夕に開いた対策本部会議では「新規の感染者のうち10代から30代の割合が5割を超え、特に学生の割合が増加」「大阪市内の居住者では、直近1週間の感染者数が、前週の(およ)そ3倍に」等と感染状況の報告有り。更なる感染拡大を防ぐ為、府は蔓延防止等重点措置の適用を国に要請する方針を決定。今夜、全国の都道府県で初の要請が実行された由。

 対策本部会議の散会後に、吉村府知事が会見。蔓延防止等重点措置が適用された場合は改めて対策本部会議を開き、重点措置が適用された(あかつき)には感染急拡大中の大阪市を対象地域に指定した上で、市内の飲食店等に現在は21時(まで)としている営業時間の短縮要請を「1時間早めて20時迄」に早める様、改めて要請。「会食時のマスク着用」や「飲食店内でのアクリル板の設置」等の義務化に就いて「事業者に対しても、府民に対しても御願いする事になる」が「事業者には命令が出来る」、「従わなかったら罰則で在る過料の対象となる」し「マスクをしない人を入場禁止にしたり、退室をさせたりする義務が生じると思っている」と述べた。中央では、西村(にしむら)康稔(やすとし)経済再生担当大臣も会見。「吉村知事と電話で意見を交わし」て「病床の状況も含めて、強い危機感を共有した」、蔓延防止等重点措置の適用に就いて要請が有れば「真摯(しんし)に受け止め、あまり時間を置く事無く、政府として検討を急ぎたい」と述べた由。

 五輪前の感染拡大は避けたいが、もう緊急事態宣言は発出したくない。極端な事を言えば「港区(みなとく)八丈島(はちじょうじま)も同じ東京都内」等と都道府県単位の対策は範囲が広すぎ、地域格差が反映されない(うら)みも有った。諸々(もろもろ)の言い分にも相応の正当性は有ろうが、そんな事よりも「遂に第四波が到来したのだ」と実感する。

 世界保健機関(World Health Organization; WHO)の報告書が伝える所では、英国で最初に確認されたものと同種の変異株が報告された国や地域は前週より五つ増えて130。南阿弗利加(アフリカ)型も五つ増えて80、伯剌西爾(ブラジル)型は四つ増えて45となり、此等(これら)に次ぐ「注目すべき変異株」に比律賓(フィリピン)や日本で今年2月に確認された型、仏蘭西(フランス)で1月に確認された型が追加され、合計で6種類となった。世界全体で感染者数の増加傾向は続き、特に伯剌西爾と米国、印度(インド)、仏蘭西、そして波蘭土(ポーランド)で増えている由。世界は何処(どこ)へ向かって行くのか、日本は如何(どう)なるのか。


4月1日(木曜)

 今夕に政府が総理大臣官邸で新型コロナウイルス対策本部を開き、「来週の今月5日から来月5日迄」の1ヶ月間に渡り、「大阪府、兵庫県、宮城県に蔓延防止等重点措置を適用する」事を其の場で決定。(すが)義偉(よしひで)総理大臣は「感染対策に奇策は無い」「変異株と言えども、基本的な感染対策を続ける事が大事だ」と語った由。法律に基づいて「重点措置」が適用されるのは今回が初めてで、対策が講じられる地域に就いて大阪府は大阪(おおさか)市。兵庫県は神戸(こうべ)西宮(にしのみや)尼崎(あまがさき)芦屋(あしや)の四市。宮城県は仙台(せんだい)市とする方向で調整。

 対象地域では、飲食店へ営業を20時迄に短縮する様に要請。アクリル板設置等の対策が実行されているかを巡視で確認し、カラオケ設備の利用自粛を求める。変異ウイルスへの監視体制を強化し、高齢者施設に「少なくとも2週間に1回程度の検査」を働き掛ける。催事(イベント)は収容人数の上限を5000人とし、テレワークを推進する等が実行される模様。営業時間の短縮要請に応じた飲食店へ「事業規模に応じた支援策を講じる」方針に就いては従前から伝えられて来た所が、具体的には「20時までの営業時間の短縮要請に応じた飲食店」に対しては、中小企業ならば売上(うりあげ)(だか)に応じ、1店舗に1日当たり4万円から最大10万円迄の協力金を提供。大企業に対しては、売上減少額の4割を1店舗に1日当たり最大20万円迄、支援するとの事。重点措置地域の飲食店と取引していて昨年、若しくは一昨年の同月比で「売上が半分以上減少」した中小企業に対しては、個人へ1ヶ月当たり10万円を、法人へ20万円を支援する事も公表された。

 本日付で「基本的対処方針等諮問委員会」から改称。「基本的(きほんてき)対処(たいしょ)方針(ほうしん)分科会(ぶんかかい)」の尾身会長も重点措置の適用を受けて、今夜に記者会見。集団感染の発生源が多様化して「学生のコンパや開業(オープニング)式典(セレモニー)等の人が集まる機会、工場、学校、外国人共同体(コミュニティ)、カラオケ喫茶などで感染が広がって来ている」が「行動変容への協力が得られ(にく)くなっ」た上に「感染力の強い変異ウイルス」に依って拡大が加速する可能性が有ると分析。今後の見通しに()いて「高齢者にワクチンが届く6月頃迄が正念場(しょうねんば)」で「其れ迄に大きな反跳(リバウンド)を防ぐ事が此れからの最優先課題」と述べた。同じく今夜に大阪府では、吉村知事が「不要不急の外出の自粛要請を大阪市に適用する」事等を踏まえ、今月14日に大阪市で予定されている聖火中継(リレー)に関して「中止すべきだと云うのが僕の考え方だ」と述べた。自らが会長を務める府の実行委員会で中止の方針を近く決定し、大会の組織委員会に提案する予定で、氏は「最後は大会の組織委員会の判断」だが「大阪市で聖火リレーを行う事は無いと思う」と述べる一方、大阪市以外の府内で予定されている聖火リレーに就いては感染対策を徹底したうえで実施したい意向。大阪市の松井(まつい)一郎(いちろう)市長にも異論は無い様子で、平和の使者ならぬ感染拡大の尖兵(せんぺい)として槍玉(やりだま)に挙げられるよりは、大阪市限定ならばと組織委も中止を受諾するのでは無かろうか。

 嘗て玄奘(げんじょう)三蔵(さんぞう)西方(さいほう)取経(しゅきょう)を目指した天竺(てんじく)。即ち印度では、2月下旬以降に感染が再拡大。本日の新規感染者は7万2330人と昨年10月中旬以降では最多。同国政府はワクチン接種の条件を「45歳以上」のみに緩和し、接種対象を拡大。膨大な印度の感染者数が多少なりとも減少に向かう事は他の諸国にとっても望ましい筈だが、ワクチン生産大国でも在る印度で接種が増え、需要が高まる事は、国外へ回るワクチンが減る事も意味する。先に印度が輸出の一時停止を宣言した時点で、ワクチンの公平分配を目指すCOVAX Facilityの活動にも支障が出たが、今回の接種対象拡大に依って更に途上国での接種が遅延する事は不可避(ふかひ)と見られる。地球は回り、世界的大流行(パンデミック)は続く。


4月2日(金曜)

 本日の衆議院厚生労働委員会にて。分科会の尾身会長は全国の感染状況について「重大な反跳の山に向かっている」事に「間違い無く」、「所謂(いわゆる)第四波に入りつつ在る」との表現を用いても「差し支えない」と発言。やや控えめな表現ながらも、第四波到来の事実を肯定した由。変異株の拡散に関して「関西で広がる英国株が首都圏に来ることはほぼ間違い無い」、「早晩、東京でも英国株が主流になる可能性が有る」、また「別の変異株が出て来る」事も「折込(おりこみ)(ずみ)だ」と語ると共に、蔓延防止等重点措置に関して「一定程度の効果は有る」ものと評価しているが「仮に無いと云う事が分かれば、緊急事態宣言にすぐ切り替える事も有る」と発言。田村厚生労働大臣の言に依れば、「新たな病床を確保して貰った医療機関」に「更なる支援金」を与える事も検討されている模様。

 政府が公募し、支援する新型コロナウイルス研究の一環として、筑波(つくば)大学(だいがく)大学院の教授で社会シミュレーション学の専門家、倉橋(くらはし)節也(せつや)氏が代表的な感染症数理モデルであるSEIRモデル(Susceptible-Exposed-Infectious-Recovered model)と人工知能(artificial intelligence; AI)を用いて、東京都を対象とした一連の模擬実験シミュレーションを行い、興味深い結果が報告された。()ず人口を「60歳以上」と「59歳以下」の二群に分けて群間の感染率を推定した所、「59歳以下から60歳以上」への感染は約0.504だが、「60歳以上から59歳以下へは約0.100で、(およ)そ5倍の差を認めた。此の結果も踏まえて「60歳以上」をワクチン接種の対象とし、「1日に都民人口の0.5%、約7万人ずつ接種を進める」場合を試算すると、「患者数が1500人を超えた時点で今年1月の緊急事態宣言時と同等の行動制限が課される」と仮定しても、5月に英国型の感染拡大が顕著になり、東京五輪の開会式が予定されている7月23日前後は、都内で1日当たり約2500人の感染者が発生。夏以降も感染者は増え続け、10月20日の感染者数は5600人、重症者数は11月3日に640人と云う最高峰(ピーク)を迎える。

 また60歳以上の接種が8月12日の時点で終了していると仮定しても、飲食店の時短要請やイベント制限等の対策を取らない場合は春の第四波に続き、秋の第五波(だいごは)到来も回避不能。其の場合は英国型変異株に依る都内の感染者数が10月20日に一日当たり22万9300人、1月の緊急事態宣言時の全感染者の百倍近くに達し、重症者は2万9300人に上る恐れ有り。逆に言えば、各種行動を制限する介入を新規感染者数が500人を超えた時点で実行すれば、感染者数の最大値は一日1700人、重症者数200人に下がる。更に「ワクチン接種を受ける都民人口の0.5%」のうち、「60歳以上は9割迄」で「残り1割を59歳以下」とした場合、先述した群間差が影響して感染者数は920人、重症者数は120人に減る由。59歳以下の一部都民を優先接種の対象に加える場合は「高齢者の同居家族」等が想定されている模様。

 氏の報告に頻出する「サーキットブレーカー」は緊急事態宣言、或いは蔓延防止等重点措置を念頭に置いて居る様で、感染拡大を招く回路(サーキット)遮断(ブレイク)する施策(しさく)を指す。しかし、狭義の其れは金融界のcircuit breaker制度、即ち株式や金融先物の市場価格が急激に変動して(あらかじ)め設定された上限若しくは下限の価格に達すると自動的に売買を一定時間停止する措置を参考にした概念で、「一定条件を満たせば自動的に発動する」所に主眼が有り、政治家の恣意的(しいてき)判断に委ねられる現行の制度とは一線(いっせん)(かく)するものと聞く。全ての英知を結集し、感染の封じ込めを実現したい。と切望するが五輪開催は(おろ)か、聖火中継に野次馬(やじうま)が密集する事すら止められぬ国では至難(しなん)(わざ)か。


4月3日(土曜)

 大阪府では本日、過去最多となる666人の新規感染を確認。1日の感染者数が600人以上となるのは三日連続、東京の感染者数を五日連続で上回り、府内の感染者数累計は5万4096人に到達。2人の死亡が確認され、府内の感染死は1191人となった由。

 経済界ではJapan Travel Bureau(JTB)や日本航空、三菱地所、Snow peak business solutionsの4社が「ワーケーション」事業で提携。新型コロナウイルスの影響が続く観光業界に於いて、新たな需要を掘り起こす取り組みを強化する模様。ワーケーションはwork+vacationの造語で休暇中、特に旅行先でTeleworkを行う事を指す。「保養地(リゾート)等で休暇を楽しみながら仕事をする新たな働き方」として関心が高まっている旨の報道も有ったが、Telework自体が根付いていない我が国に於いて、其の様に夕方な働き方が許される日本人がどれ程、存在するのかは大いに疑問。一部を電話再診に切り替えるのがやっとの当方にも縁の無い話だ。米国では一昨日にmajor leagueが開幕するも、Washington Nationalsの選手1名が陽性反応を示した影響で、New York Metsとの開幕戦は中止。更に複数の選手が陽性反応を示した事から3日と4日も中止となり、ナショナルズの本拠地Washington, D.C.で行われる予定だったメッツとの開幕3連戦が消失するも、いずれ別日程で組み込まれる予定との事。

 蔓延防止等重点措置の制度が整備される時点で、内閣官房や厚生労働省の担当者達が内輪で使う略称を検討した結果、「まん重」等は却下されて「まん防」が採用。日常的に担当省庁の担当者と議論や打ち合わせを行うと云う接点が有った為か、基本的対処方針分科会の尾身会長が記者会見で連呼した事から、報道も追随。ネットや新聞に「まん防」の見出しが多用される事態となったが、緊急事態宣言の解除後に感染が再拡大し、大阪を含む6市への初適用決定に伴って「魚の翻車魚(マンボウ)を連想させる様な略称では何処(どこ)滑稽(こっけい)さが(いな)めず、国民に事態の深刻さが伝わり難い」等の批判有り。昨日に尾身氏当人が「蔓防という言葉の使い方が適切ではない」「重点措置の方が良い」と見解を翻し、大臣連や都知事からも大同小異の発言が聞かれた由。政治に於ける言葉の重要性は言うまでも無く、不毛な議論との批判に多少の異論は有るものの、五輪中止の判断を含めて先に考慮すべき課題が山積しているとは思う。


4月4日(日曜)

 2016年の里約日内路(リオデジャネイロ)五輪に16歳の若さで出場した上、女子100(メートル)蝶泳(バタフライ)で5位入賞。短水路と合わせ、個人種目で11の日本記録を持ち、日本水泳界の至宝と(たた)えられた池江璃花子氏。東京五輪での活躍も間違いなしと期待された一昨年2月、(よわい)18歳にして急性リンパ性白血病と診断され、一旦は競技から離れる事を余儀無くされた。しかし、長期入院や化学療法、造血(ぞうけつ)幹細胞(かんさいぼう)移植を含む治療を経て、昨年3月に游泳池 (プール)へ戻ると、更に去年8月、不死鳥の如くに競技へ復帰。日本選手権迄に五つの大会に出場し、今年2月の大会では50米バタフライにて一昨年世界選手権の決勝進出に相当する好記録を叩き出すも、闘病中に体重が15(キログラム)以上も落ち、筋力が戻り切っていない為に序盤で出遅れる等の課題は残り、今回の日本選手権では「2024年の巴里(パリ)五輪出場」を目標にバタフライと自由形の4種目に参加登録していた。

 そして迎えた女子100米、バタフライ決勝。やはり池江氏は出発(スタート)で出遅れ、序盤は第5泳路(レーン)相馬(そうま)あい選手に先行を許したが、50米時点の旋回(ターン)で0.03秒差に迫り、横並びでの接戦から最終25米で先行(リード)を奪い、首位で帰還。電光掲示板に映し出された「57秒77」の記録を振り返り、三年振りの優勝と東京五輪の混合(メドレー)中継(リレー)の派遣標準記録を突破した事を確認した池江選手は起跳台に掴まったまま滂沱(ぼうだ)の涙を流した。緩和治療を介して多少は白血病の患者さんとも接触が有る自分も驚いたが、国立がん研究センター中央病院の造血幹細胞移植科長、専門医の中の専門医たる福田(ふくだ)隆浩(たかひろ)氏も思いは同じだった模様。「退院後、1年余でトップアスリートの域まで回復するのは極めて異例」だが、症状が出なくなる寛解(かんかい)の状態に至る早さは本来、高い身体能力とは無関係で在り、「競技水準(レベル)此処(ここ)まで戻したのは、治療の順調さに加え、本人の努力とチームの支援が有るからだろう」「患者を含む多くの人に勇気をくれた池江選手を心から応援したい」と語った由。

 泳ぎ終えた直後の中継で心境を問われた池江選手は「まさか、100で優勝出来ると思ってなかった」し「5年前の五輪選考会よりも、ずっと自信も無かった」「自分が勝てるのは、ずっと先の事だと思ってた」反面、「勝つ為の練習もしっかりやって来ました」、「最後は『ただいま』って云う気持ちで此の競争(レース)に入場」したが、予想外の勝利に「自分がすごく辛くてしんどくても、努力は必ず報われるんだなんて云う風に思いました」等と語った。

 4月4日は()しくも基督(キリスト)教の復活祭(イースター)(あま)りにも劇的な勝利に当方としても瞠目(どうもく)かつ感服(かんぷく)したが、此の報道で五輪開催が活気付くかと思うと個人的には複雑。当方とは逆の立場から彼女の偉業を利用せんとする者も有り、国際五輪委員会(International Olympic Committee; IOC)会長にして商魂(しょうこん)(たくま)しきThomas Bach氏からは早速(さっそく)「五輪選手は絶対に(あきら)めない」「池江選手おめでとう」、「東京で貴方(あなた)に会う事が待ち切れません」との声明が届いた由。

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