令和2年12月第2週
12月7日(月曜)
GoToトラベル利用者の新型コロナウイルス感染リスクに関し、東京大学の宮脇敦士氏や大阪国際がんセンターの田淵貴大氏等の研究チームが調査。本年8月末から9月末に、15~79歳を対象とした大規模なインターネット調査を行い、収集された情報を解析。性別・年齢・社会経済状態・健康状態等の影響を統計的に取り除いた上で、「GoToトラベルの利用経験を有する者は、無い者に比して過去1ヶ月以内に新型コロナウイルス感染を示唆する五症状を持つ割合が高いか否か」を確かめた結果が、今月4日付で”medRxiv”にて査読前原稿として公開された。
過去1ヶ月以内の発熱はGoToトラベル利用者が4.8% に対し、非利用者が3.7%。咽頭痛は20.0%対11.3%。咳は19.2% 対11.2%で、頭痛は29.4%対25.5%で、嗅覚や味覚異常は2.6%対1.7%の結果となり、利用者の方に多くの症状が認められた。結果としては「GoToトラベル事業が、新型コロナ感染拡大に一定の影響がある可能性」が示唆されるとの事。文末には、研究の限界として「GoToトラベルの利用が直接的に新型コロナ症状の増加につながったという因果関係は断定できない」、「GoToトラベルの利用と新型コロナ症状の発生率との間の時系列的関係が不明」、「新型コロナ症状を持つ人が、必ずしも新型コロナに感染しているわけではない」、「新型コロナ症状を持つ人が、その原因としてGoToトラベルの利用を思い出しやすい可能性」即ち「思い出しバイアス」等が挙げられる旨が明記されている。
しかし、本日から各所で出された報道では思い思いの切り取り方が為され、一部で不毛な議論も始まった様で残念。原著は英文とは言え、研究チームの一員であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校所属の津川友介氏が日本語でも発信していて、誰でも閲覧出来る状況なのだが。此の為体で科学立国等とは片腹痛し。
12月8日(火曜)
本日にトランプ政権が各州知事や薬局連鎖、輸送関連会社等を招き、新型コロナウイルス用ワクチン配布を巡る会合“Warp Speed Vaccine Summit”を開催。次期大統領となる予定のJoseph Robinette Biden Jr.氏や政権移行チーム関係者は招かれず、新型コロナワクチン開発を先導する製薬企業のPfizerとModernaは出席を辞退した旨、statnews.comが関係筋の情報として報じた。米国の食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)はモデルナ社とファイザー社・BioNTechのワクチンに関する審査を進めているが、業界関係者は「此の集会は両ワクチン候補の緊急使用承認を急ぐよう、White HouseがFDAに圧力を掛ける機会になる」と受け止めている由。
また、会合の場でトランプ大統領は「国内での接種を優先した上で、外国に供給する」大統領令に署名。「次の政権は、上手く行けばトランプ政権になるだろう」と述べたが、「国内でのワクチン供給を確実にする為に大統領令が必要となる根拠は不明」との声有り。昨日の時点でNew York Times紙が関係者談として伝えた所に拠ると、本年晩夏にファイザー社が「新型コロナウイルスワクチンの米政府への販売量引き上げ」を提案するも、トランプ政権の当局者が断った模様。其の後にファイザー社が世界各国と契約を交わした結果、「来年6月迄は米国政府への供給量を増やせない」可能性が指摘されるも、ファイザーから報道に関する反応無し。此の報道が出る事を知り、ワクチン導入に関する消極的態度を誤魔化す為の会合や大統領令だった、と見るのは当方の僻目か。
新政権発足の暁には「100日以内で、少なくとも1億回分のワクチンを国民が接種出来る様にする」、就任初日に「公共の交通機関等でのマスク着用を義務づける大統領令に署名する」等と語っていたバイデン氏は、新型コロナウイルス対策を担う人事を発表。トランプ政権でも対策を主導してきたファウチ氏を「首席医療顧問」として起用する由。適材適所と言えよう。
12月9日(水曜)
本日に独逸では、新型コロナウイルス感染に因る一日の死者数が過去最多の590人を記録。此の状況を踏まえて、同国のAngela Merkel首相が連邦議会で演説。此程の死者が出る等は「在ってならない」事で更に厳格な感染対策が必要とされている等と訴えた由。
メルケル首相は、屋外の降誕祭市場で飲食を楽しむ習慣にも理解を示し、「ホットワインやワッフルの屋台がどれほど恋しい事でしょう」「外食出来ずに持ち帰りだけが許されるなんて納得出来ない事も分かっています」、「御免なさい」「本当に心の底から申し訳無いと思っています」と詫びつつも「毎日590人の死者という代償を払い続けることは、私には受け入れられないのです」と主張。「クリスマス前に多くの人と接触した所為で『あれが祖父母と過ごす最後のクリスマスだった』なんて事にはさせたくない」「其れだけは避けたいのです」と語った。沈着冷静で知られる首相が感情を露わにして訴えたのに対し、演説の途中にも議場で拍手が沸き起こり、話し終えた後は暫く鳴り止まなかった由。更に演説の様子を映した動画が公開されると、世界中の報道で「魂の演説」、「此れ迄で最も感動的な演説」と絶賛された。
日本でも本日に全国で2738人の感染が発表され、過去最多を更新。新型コロナウイルスの感染拡大防止も目的に73兆6000億円の新たな経済対策が発表され、国内総生産の3.6%程度に及ぶ経済効果を見込む大型経済刺激策で内外の注目を集めた。しかし、メルケル演説と同様の絶賛とは行かず、米国某紙では「菅は政治的生存の為に$708 Billionを賭けた」と断じられた由。
12月10日(木曜)
第一波の被害が極限に達しようとしていた本年4月14日、大阪府と大阪市が新型コロナウイルス感染症用ワクチンや治療薬の研究開発に向け、大阪大学、公立大学法人大阪、府立病院機構、大阪市民病院機構等の6者で連携協定を締結した旨を発表。吉村洋文知事はワクチンに関して「早ければ7月から治験を開始し、9月には実用化を図りたい」と説明し、「年内にも10万から20万単位でワクチンを投与出来る」との見通しを記者会見で語ったと云う当時の報道を見つけた。
大阪のベンチャー企業アンジェスを含めた国内産のワクチンが使用可能となったと云う話は現在に至るも聞けぬが、治験開始から実用化まで僅か2ヶ月で事足りると断言する無知に改めて唖然とする。御膝下の機関が出した、まだ検証すべき多くの点が残る知見を唯一の根拠として「嘘の様な本当の話をする」と記者会見を開き、「ポビドンヨードのうがい薬をする事で、此のコロナに或る意味、打ち勝てるんではないか」と妄言を吐いたのは8月4日の事だったが、時期的には「ワクチン開発が宣言通りに進まぬ現実から世間の目を遠ざける為に、大阪発で別の話題を用意した」かの様にも見える。
そして第三波が立ち上がろうとしていた11月1日、大阪都構想の是非を問う住民投票が行われた。感染が収束しない中で決行する事自体への批判も有り、結果は5年前と同じく否決。責任を取って大阪市長の松井一郎氏が辞任した後は、大阪維新の会代表も吉村氏が兼任。
氏は今月7日、府が運用を始める新型コロナ重症患者専用の医療施設を視察。冬の感染拡大に備えて設置された施設は全病床に人工呼吸器を備え付けているが、肝心の看護師が不足。全国知事会や関西広域連合に派遣を要請するも実現せず、自衛隊の看護師派遣に関して「岸信夫防衛相に派遣をお願いした」「実務レベルの協議もした」、「派遣頂ける自衛隊の皆さんに心から感謝したい」と述べた序でに、自身のtwitterに自衛隊幹部達と共に写った写真を投稿。「保守を自称する国会議員は、命がけで憲法9条の改正をやってくれ」「維新は命がけで都構想をやって大将の首をとられた」等と呟いたが、「都構想の何が命賭けだ」「自衛隊も己の演技に利用するのか」等と疑問の声が噴出。
独自基準の大阪モデルは5月の策定後も何度か改変されており、赤信号の基準が「警戒(黄色)信号が点灯した日から起算して25日以内」に「患者受入重症病床使用率」が「70%以上」に達した時のみと緩和された件に関しては「緊急事態宣言を出させない様に作られた忖度モデル」で「大阪都構想、特別区設置の住民投票を予定通り実施する」事が目的だとの声有り。其の真偽は不明だが結局、今回の赤信号も「70%以上」の基準が守られず前倒しの点灯となる等、臨機応変と言うよりは場当たり的な運用と言わざるを得ない。大阪を拠点とした更なる感染拡大を防ぐ為には自衛隊からの看護師派遣も必要なのかも知れないが、首長の人気取りに利用するのは止めて頂きたい。
12月11日(金曜)
何年も前から、我が国では酒精度数が9%、或いは12%と高い缶酎ハイ。所謂「ストロング系」が群を抜いて売れている。度数が低い缶麦酒の500mL缶が280円ほど出さねば買えぬのに対し、350mL缶が100円台、500mL缶でも200円前後で入手可能なストロング系は「より早く安価に酔う」目的で購入される。また多くが柑橘系の味付けで飲み易く、ビールの苦味を忌避する若年者や女性にも好まれるが、此等は全てアルコール依存症の危険性を高める因子となる。嘗て依存症患者が常用する酒は大型ペットボトル入り焼酎やワンカップ或いは紙パック入りの日本酒が定番だったが、近年はアルコール度数9%以上のストロング系酎ハイ500mL缶が大勢を占める様な状況がCOVID-19蔓延以前から存在していた。
昨年の大晦日に、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の薬物依存研究部長にして薬物依存症センター長の松本俊彦氏が、自身のtwitterへ投稿。ストロング系の代表的商品である「ストロングZERO」に関して「危険ドラッグ」として「規制した方がよいのではないか」と「半ば本気でそう思う」。氏の臨床経験では「500mlを3本飲むと自分を失って暴れる人」が少なからず存在するが「大抵の違法薬物でさえも、使用者はここまで乱れません」。結局の所、ストロング系は「お酒」と云うよりも「単に人工甘味料を加えたエチルアルコール=薬物」に過ぎぬが、「ジュースのような飲みやすさ」に因って、通常は飲酒せず「自分は飲めない」と思い込んでいる者も「ビールの倍近い濃度のアルコール」をビール以上の速度で飲み干してしまい、「ただでさえ人類最古にして最悪の薬物といわれているアルコール」の害を「最大限に引き出す危険な摂取法」となる。本来「お酒はお酒らしい味をしているべき」であり、また公衆衛生的には「酒税は含有されるアルコール度数の上昇に伴って傾斜すべき」なのだが、「税収ありき」の「国の二転三転する方針」に「メーカーが追い詰められ」て「確実におかしな事態を引き起こしています」と訴えた事は、twitter内でscreenshotが拡散され、まとめ記事に引用されるなど一部で話題となったものの、広告主に配慮してかテレビや新聞は関心を示さず、今年4月にオリオンビールがストロング系商品「WATTA STRONG」の販売終了を決めたものの、四大麦酒製造会社は追随せず。
コロナ禍が始まり、清酒や麦酒の売上が落ち込んだ本年4月から8月も、缶酎ハイを含む累計課税数量は対前年で16%の増加。今年4月にストロングゼロを含むサントリーの缶酎ハイ「-196℃」銘柄がGuinness World Recordsで「世界最大のスピリットベースRTD飲料(最新年間販売数量)」と認定された事も有り、低迷する消費の牽引役と期待された。しかし、安易に酩酊して苦痛を忘れられる事から「飲む福祉」「危険ドラッグ」とも揶揄されるストロング系が売れる世情は、経済的にも心理的にも苦しい国民心理を反映しており、手放しに喜べる話では無い。
百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏によると、国が発表する家計調査で今年7~9月の「2人以上の勤労者世帯」を見ると、GoTo事業で需要を創出した後の時期にも関わらず、支出全体は前年と比べて8.3%減っている。「巣ごもり需要」が報じられたものの、食料全体の増加分は前年比プラス1%と僅か。同時期に生鮮食料品の価格全般が値上がりした事も考慮すると、むしろ巣ごもりの状況でも節約が徹底していた可能性大。当該の時期に対前年比で消費が2割以上増えた品目は四つしか無いが、交通費節約と感染対策に直結する自転車の需要が増え、健康関連の商品が売れたのは理の当然。残る2つの品目が酒と煙草で酒の支出は前年から24%増、煙草は31%増。今年10月の煙草値上げ前の情報だが、6月も30%増となっている点を考慮すると駆け込み需要の要素は然程影響していない様だ。
家庭内でのアルコールの支出を家計調査で見ると、緊急事態宣言が発令された4月、5月に対前年比で約3割も増加した上で、解除後の6月以降も毎月約2割増を維持。第三波で自粛生活が強いられる今冬には、酒類への支出が前年比3割増に戻るものと予想される。 飲酒と喫煙の増加に伴う健康上の問題が増大する中で、特に問題視されているのがストロング系だが、鈴木氏はJames Bloodworthの著書『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』を引用して「ビールとたばこは削れない」、「健康のバランスについて考えることができるのは、中流以上の生活をする場合」に限られており「ぎりぎりの生活で不安とともに暮らす中では、体に悪いとわかっていても、心を安定させてくれるものに手を出してしまうものなのだ」と説く。今年4月以降に家庭内で酒の消費量が急増したと云う事実は「経済と健康の両面に関わる社会不安に端を発した依存症の拡大問題」と捉えるべきで、同時に「政治にしか解決できない問題」でも在る由。
企業の収益が先細る中で酒造会社が売れ筋の商品製造を制限するのは困難で、利益追求に怠慢だと株主から訴訟を起こされる恐れすら在る。しかし、酒税の改正を断行して「アルコール度数に応じて課税するようにルールを変更」すれば「少なくとも安くて簡単に酔える商品が売れ筋になる」事態は回避できる筈。異なる領域の専門家が辿り着いた結論が今度こそ為政者に届くように、コロナ禍以前から経済最優先の風潮に掻き消されぬようにと祈る。
12月12日(土曜)
12月10日に開催された諮問委員会が賛成17、反対4、棄権1でPfizerとBioNTechが開発したワクチンの緊急使用を勧告。此の結果を踏まえて、FDAが数日中に正式な認可を出す見通しとなっていたが、本日に米国のWashington Post紙が関係者談として報じた所に拠ると、昨日にMark Meadows大統領首席補佐官が米食品医薬品局のStephen Hahn長官に対し、「同日中に米ファイザーのCOVIC-19ワクチンに緊急使用許可を付与しないのであれば辞任せよ」と迫った模様。警告を受けたFDAはEUA付与の時期を12日午前から11日に早めたとも云われるが、官邸の関係者はコメントを控えた。
同じく昨日にトランプ大統領は、Twitter投稿でFDAを"heavily bureaucratic(鈍重で御役所仕事)"、"it is still a big, old, slow turtle(大きいばかりで老耄して鈍間な亀)"と罵倒し、ハーン長官に対して直ちにワクチンを出せと要求した。報道に先立ち、Alex Azar厚生長官は「ファイザーとビオンテックのワクチン接種を14日までに米国で開始出来る」との見方を示していた。政権がFDAに圧力を掛けたのが事実ならば、科学的なワクチン承認の過程に対する政治介入で問題だが、緊急使用許可が一二日早まった所で、どれだけワクチン接種開始が早まるのかは不明。
12月13日(日曜)
Johns Hopkins大学の集計に依ると、世界に於ける新型コロナウイルスの死者数が、日本時間の本日に160万人を超えた由。
今月4日に150万人に達してから十日足らずで10万人増えており、日毎に1万人が犠牲になっている計算だが、別して米国の死者が多い。30万人に迫る勢いで、一昨日には報告される死者数が一日3300人を超え、過去最多を記録した。同日に米食品医薬品局からファイザー社のワクチンに緊急使用許可が出されるも、専門家は「電灯のスイッチを点けたり消したりするようにはいかない」と安易な期待に警鐘を鳴らしている由。
米国に次ぐのが伯剌西爾で、死者数は18万人を超えた。10日の時点で「我々は世界的大流行の終わりを迎えている」「我が国のコロナウイルスへの対応は世界でも最良のうちの一つだ」と語ったJair Bolsonaro大統領の楽観視とは裏腹に、収束とは程遠い現実が今も同国には存在する模様。其の他の死者数は印度が14万人超、墨西哥が11万人超と続き、欧州では英国と伊太利が共に約6万4000人で最多となっている。
厚生労働省の発表に依れば、我が国で新型コロナウイルスに感染して重症となっている患者は、13日午前0時に全国で583人。昨日より5人増え、過去最多を更新。




