令和2年11月第4週
11月16日(月曜)
米国の製薬企業Modernaが開発中の新型コロナウイルス用ワクチンに関し、本日に同社が「94.5%の予防効果を認めた」とする臨床試験の暫定結果を発表。昨日午後に治験の安全性を監視する独立委員会から連絡を受けた時、同社の最高医療責任者(Chief Medical Officer; CMO)を務めるTal Zaks博士は「私の人生と経歴の中で最高の瞬間」だと感じた由。
治験では開発中のワクチン、偽薬となる生理食塩水を各々(それぞれ)1万5000人に投与。数ヶ月の裡に偽薬投与群では90人が新型コロナウイルスに感染し、うち11人が重症化した。一方、ワクチン投与群で感染したのは5人のみで、重症化した例は無かった。ワクチン投与後に一部の参加者が身体疼痛や頭痛等の症状を訴えたものの、重大な副作用は報告されなかったと云う。同社は更に安全性に関する情報を収集した上で、近日中に食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)へ認可を申請する予定との事。
此の発表に接し、米国立アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious Diseases; NIAID )のAnthony Fauci所長は「素晴らしい結果だ」と歓迎。医療従事者や高齢者、基礎疾患を持つ者等の高リスク群へ「12月後半には接種が開始される可能性が有る」、一般市民への接種は「来年4月末頃から数ヶ月掛けて実施される」との見通しを示した。
米国のPfizer社も先週、開発中のワクチンに90%以上の予防効果が認められたと発表した事は既報の通りだが、両社のワクチンはmRNAを用いた新技術で開発された事が共通している。また何方のワクチンも、数週の間隔を置いて2回接種せねば効果が発揮出来ぬ。安全性や有効性も類似しているものの、ファイザーのワクチンは氷点下75度での保管を要する為に特殊な冷凍庫が不可欠で在るのに対し、モデルナ製は水痘ワクチン等と同じ零下20度での保管が可能と云う点が異なる。冷蔵庫で保存出来る期間に関してもモデルナ製は30日間と、ファイザー製の5日間を大きく上回る。効果や副作用が概ね同等だとすれば、扱い易さも含めた総合評価ではモデルナに軍配が上がる様にも思える。
11月17日(火曜)
外食需要の喚起を目的としたGoToイート政策に関し、菅義偉総理大臣が「感染拡大が見られる地域では、一定の人数以上での飲食はポイント対象外とする」事等の検討を都道府県知事に要請する考えを示した。新型コロナウイルス感染症対策分科会の提言も踏まえて、所管する農林水産省は「食事券やポイントの対象は4人以下での利用に限る」方針を定め、本日から都道府県に要請。特に感染拡大が見られる地域では「三連休が始まる今月21日から始める事が望ましい」として各都道府県と具体的な協議に入るも、「5人以上の家族」への対応等の詳細に関して「丸投げされた形」の都道府県側では知事達の判断が分かれた模様。
東京都の小池知事は「国の施策として、そういう考えだと思うが」「基本的に考え方は感染を如何に防ぐかと云う点で共通している」と述べ、政府の意向に一定の理解を示した。大阪府の吉村知事は「21日からGoToイートに就いても、4人以下に適用する」「適用範囲を絞る」「GoToイートを利用しない場合でも、5人以上の宴会は出来るだけ自粛をお願いしたい」と発言。愛知県の大村知事も「原則4人以下の単位での利用」に「愛知県としても異論は無い」と述べ、兵庫県の井戸知事は「元々4人以下の根拠が全然分からない」と懐疑を抱きつつも「対策を強化しなくてはいけない」状況でも在り「基本的には、そういう方向で検討すべきなのではないか」と大筋で合意。
他方では人数制限を求めない自治体も有り、神奈川県から黒岩知事が「人数制限というのは正直、抑々ピンと来ない」「一人一人がマスクをして、自分の飛沫が飛ばない様に会食の場でもする」「此れが一番有効だと思う」と主張し、香川県にて浜田知事が「静かに会食を楽しむと云う考え方を徹底して頂く」「5人なり4人なりの数字を具体的に設ける事は現時点では考えていない」との姿勢を示した。11月26日からの食事券販売に向けて準備を進めていた所へ方針転換の話が舞い込み、吉村知事が「県内で如何云う風にと云う事を、其れに間に合う様に検討しなければいけない」が「昨日の今日なので、まだ決定はしていない」と嘆いたのは山形県。
11月18日(水曜)
本日は国内で新型コロナウイルス新規感染者が2201人も発生。二千人を超えたのは初めての事で、過去最多とされていた14日の1736人を一気に500人近く上回る形となった。東京都が発表した感染者数も493人で、一日当たりとして発表された中では8月1日の472人を超えて最も多い。40~50代、65歳以上の各世代でも過去最多で、20~30代の若年が7割程度を占めた第二波とは違い、重症化の危険性が高い中高年への感染が拡大。神奈川・埼玉・静岡・長野の各県でも本日に感染者数が過去最多との発表が相次ぎ、大阪は過去2番目に多い273人を記録。日本医師会も本日午後に会見を開き、中川俊男会長が「コロナに慣れないで下さい」「コロナを甘く見ないで下さい」、21日から始まる今週末は「秋の我慢の3連休としてお過ごしください」と呼び掛けた。
米国ではPfizerがワクチン臨床試験の最終結果を発表。臨床試験の対象となった4万人以上の中で、新型コロナウイルスに感染したのは170例。うちワクチン接種群が8例で、偽薬接種群は162例だった事から「ワクチンの有効性は95%だった」とされた。10例で重症化を認めるも、うち9例は偽薬を投与した群で生じ、ワクチン接種群では1例に留まった。2回目の接種後は3.8%の被検者に倦怠感、2%に頭痛が見られたものの重大な安全上の懸念は報告されず、ファイザー社は「安全性に関する資料が出揃った」と判断して「数日中にFDAに緊急使用の許可を申請する」模様。一昨日にModerna社のワクチンが示した94.5%を僅かに上回る数値を示し、一歩早い許可申請を後押しする形となったのは「奇しくも」と言うべきか、「案の定」と評するべきか。
11月19日(木曜)
今朝に官邸で、菅総理大臣が会見。「最大限の警戒状況に在る」との認識に基づき、「地方公共団体が行う飲食店等への営業時間の短縮要請を政府が支援する」、GoToイート政策に関して「原則4人以下で飲食をするよう知事に検討をお願いした」等を発表。国民に対しては改めてマスクの着用や三密回避等の徹底が要請されたが、其の際に「専門家からは飲食を通じた感染のリスクが指摘されており、飲食の際でも会話の時にはマスクを着用するよう言われている」「是非『静かなマスク会食』をお願いしたい」「私も今日から徹底したい」との発言有り。
医療現場では「マスクの表面は汚染された部位」だと教えられ、一通り使用した後は適宜廃棄、交換するのが常識。人数を幾らか減らすにせよ、複数の人間が集って飛沫の飛び交う危険性を高め、更に脱着を繰り返す度にマスクに触れた手で飲食を続けるような状況に安全の保障は無い。専門家を自任する者達が進言する方法とも考え難く、科学的見解が諸方面への忖度に歪められた可能性大。為政者が何と言おうとも、現状では忘年会の類にも一切参加しないのが賢明だろう。
11月20日(金曜)
今月7日に米大統領選の勝者が「ほぼ決定」した後もDonald Trump氏は敗北を認めていないが、「12月8日に各州で選挙人が確定」「同月14日に投票によって次期大統領が決定する」との日程に変更無し。今回選挙の歴史的側面として「過去に例を見ない規模で回線接続による選挙戦が展開された」との指摘が有り、殊にバイデン陣営の戦略が勝敗の帰趨を決めたとも言われている。新型コロナウイルスの蔓延で集会や自宅訪問等の伝統的な選挙活動が困難となった情勢に対し、「マスクや都市封鎖は要らない」等と主張するトランプ陣営は規模を縮小しつつも自宅訪問等を行った。
対して、新型コロナウイルスを深刻な脅威としたJoe Biden側は集会や自宅訪問も殆ど実施せず、選挙活動の主体は回線接続で行われる事となった。例えば選挙活動に不可欠とされる無償協力者を、オンラインで効率的に組織。team communication toolの"Slack"にボランティア用のチャンネルを作り、協力者同士が情報を共有して活動に関する訓練を受ける等の交流を容易にした。民主党支持者が集うcommunity platformの"Mobilize"に登録している400万の有権者も動員。多い時は4日間に8000件も開催されるイベントでバイデン氏の動向が上載され、支持者達がネット上で参加。個別訪問の代わりに活用された"VoteJoe"というアプリからは、激戦州の一覧表へ宛てたメッセージが一斉送信された。更には、FacebookやYouTube、Instagram向けに15秒以下の動画を作り、「バイデンの大統領就任で医療分野の保険や治療がどう変わるか」「家族を事故や病気で失ったバイデンは他者の痛みが分かる」と主張。例年の如く無料の演奏会で有権者を取り込む事が出来ないと見るや、InstagramやTikTok、YouTube等で活躍するinfluencerを雇い、ネット上でバイデンと対談させる等の企画を実行。トランプ陣営に依るバイデン氏への中傷に対しても、陣営内部で"Malarkey Factory"(でたらめ工場)と呼ばれた対策部隊を結成。多くの専門家を雇って反バイデンの情報を確認し、「バイデンは社会主義者」等の情報が流布された場合は適宜反論の投稿を行った。
2016年の米大統領選に於けるトランプの勝利は「回線接続での選挙活動無しには実現しなかった」とも言われ、此の分野では先駆者的だったバラク・オバマ元大統領とも比較にならない程に大々的なオンライン選挙活動が実行された。SNSを通した広告配信で資金を募り、2億5000万ドル以上の寄付を集める事にも成功。斯様な活動に精通していたのは元来、対立候補のトランプ氏の方で、バイデン陣営は太刀打ち出来ないと見られていた。選挙戦序盤にバイデン側は資金が集まらずに苦労していたとの情報も有るが、トランプ陣営の戦略を分析した事に加えて、新型コロナウイルスに対して慎重な姿勢を打ち出していたこともあり、早々に戦略を変更。今年3月からオンライン戦略担当者を大幅に増員し、予備選挙に勝ち抜いた後は党内で指名候補争いをしたカマラ・ハリス上院議員やバーニー・サンダース上院議員等の敵陣営に居た人材も雇い入れた。9月にはバイデン陣営のオンライン戦略部門は200人を超える大所帯と化し、10月末には20万人のボランティアがオンライン活動に協力。
8月にハリスを副大統領候補に指名した際は「24時間で2600万ドル」と云う前代未聞の金額を記録する等、同月だけで2億ドル以上の寄付を集めたバイデン陣営は、選挙直前の10月にも一日2000万ドル以上の寄付を獲得。トランプ陣営を圧倒する資金を得て、優位に選挙戦を進めた。トランプ政権が新型コロナウイルスを過小評価した事は失政として批判を集めたのみならず、対面に拘ってオンラインの選挙活動が中途半端となり、資金獲得でバイデンの後塵を拝する結果も招いた。COVID-19の世界的大流行が大統領選挙の勝敗を左右し、延いては世界歴史を変えたと言っても過言では無かろう。
11月21日(土曜)
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は、感染状況を「感染者が散発的に発生」「漸増」「急増」「爆発的に感染拡大」の4段階に大別して来た。stageが上がる毎に感染対策を強める方針が提示され、stageⅣでは「緊急事態宣言など強制性のある対応」を検討せざるを得ないとし、stage Ⅲに於いても「夜間や酒類を提供する飲食店への外出自粛」や「感染拡大地域との往来の自粛」等が求められた。人の移動や会食を促し、感染拡大につながる恐れが有る政府のGoToトラベル、GoToイート事業はstageⅡ以下の状況に於いて実施すべきである事が9月の時点で提言されたが、先月までは全ての都道府県もstageⅡ以下を保っているとの評価だった。今月に入って北海道や東京都等で感染が拡大し、分科会が示したstageⅢの六指標のうち多くを上回ったものの判断は知事に委ねられ、分科会の基準に即した対策の議論は進んでいなかった。
しかし、昨日に厚生労働省の専門家組織が会合を持ち、「北海道の一部地域では、接触機会の削減・行動制限などの強い対策が求められる状況」で東京都、大阪府、愛知県も同様の状態に「近づきつつある」と評価。更に本日、政府の分科会が「ステージⅢに入りつつある都道府県」が存在する上に「その都道府県内の一部の地域」は「既にステージⅢ相当の強い対策が必要な状況に達した」、従前の対応では「早晩、公衆衛生体制及び医療提供体制が逼迫する可能性が高い」、現状が続けば「経済・雇用への影響が甚大」等と指摘。「この機を逃さず」「短期間(3週間程度)に集中」して 「これまでの知見に基づき、感染リスクが高い状況に焦点を絞る」形で、「これまでより強い対策」を実行すべきとの提言を行い、特に重要な六項目として「営業時間の短縮」「地域の移動に係る自粛要請」「Go Toキャンペーン事業の運用見直しの検討」「これまでの取組みの徹底」「経済・雇用への配慮」「人々の行動変容の浸透」が挙げられた。
とりわけGoToトラベル事業に関しては「一般的には人々の移動が感染拡大に影響すると考えられる」、運用継続に関して国民からは「期待と懸念との双方の声が示されている」ものの「同時期に他の提言との整合性のとれた施策を行う」事で「納得と協力」が得られて「感染の早期の沈静化につながり」「結果的には経済的なダメージも少なくなる」と推量。感染拡大地域に於いては知事の意見も踏まえつつ「一部区域の除外」を含めて運用を再検討する事、GoToイート事業に関しても「プレミアム付食事券の新規発行の一時停止」や「既に発行された食事券やオンライン飲食予約サイトで付与されたポイントの利用を控える旨の利用者への呼びかけ」に就いて「都道府県知事に各地域の感染状況等を踏まえた検討を要請」する事が推奨され、「 感染拡大の早期の沈静化」と「人々の健康のため」に「政府の英断」を仰ぐ旨の記述有り。西村康稔経済再生相は分科会後の会見で「早急に対応を検討したい」と述べ、21日開催の対策本部で対応が協議される模様。
11月22日(日曜)
本日に7名が鬼籍に入った事に伴い、新型コロナウイルス感染に伴う国内の死者数累計は2001人に到達。7月20日の項に1000人突破と記したが、凡そ四か月で倍増。冥府に赴きし魂の安らかならん事を祈念しつつ「未だ命数尽きぬ身ならば、生有るうちに為すべき事を為さん」と決意を新たにする。




