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令和コロナ騒動実録  作者: 澤村桐蜂
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令和2年11月第3週

11月9日(月曜)

 独逸(ドイツ)のBioNTechは「mRNAを用いた免疫療法の最前線で仕事をしている若い企業」だと聞くが、一昨年から米国の大手製薬会社Pfizerが()のビオンテック社と共同でインフルエンザ治療の創薬研究を推進。mRNAとは即ち伝令(メッセンジャー)RNAで、DNA配列の示す遺伝暗号がmRNAに転写され、()の情報が翻訳されて種々のタンパク質が合成される。此れこそが分子生物学の根幹を成す中心教義(セントラルドグマ)なり。

 今年に入り、新型コロナウイルス用のワクチン開発でも両社が共闘。世界中の期待を背負った研究は比較的順調に進み、各国で最終段階となる臨床試験が行われた所で、本日にファイザー社が発表。「臨床試験の対象となった4万3538人のうち、新型コロナウイルス感染が確認されたのは94例」で「ワクチン接種群と非接種群を比較した結果、予防の効果は90%を超える」、「接種後に深刻な健康被害は認めなかった」等の「暫定的な結果」が「外部の独立した委員会」の分析から得られた由。

 ファイザー社は「試験は未だ進行中」で「予防効果の数値は今後、変わる可能性が有る」としつつも、上述の成果を踏まえて「安全性の情報が揃う11月第3週以降、アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)に対し、緊急使用の許可を申請する」と発表。ワクチン供給の見通しについて、同社は「年内に5000万回分、来年には最大13億回分を生産可能」としており、日本政府も「来年6月末(がつまつ)(まで)に6000万人分の供給を受ける」事で基本合意済。

 コロナ()の続く世界へ福音を(もたら)すかと期待される一方、最新技術を用いた同社のワクチンは、氷点下(ひょうてんか)70度よりも低い温度で保管せねばならぬ由。Mayo Clinicを含む米国の名立(なだ)たる病院や各国の大学病院ですら現状で()くの(ごと)き超低温保管の設備を備えては()らず、識者からは「()のワクチンの供給面における最大の課題の一つが低温の維持」にして「諸有(あらゆる)面で厄介だ」との声有り。


11月10日(火曜)

 昨日に北海道で、新型コロナウイルスの新規感染者が初めて200人に達し、東京都を上回った由。内訳は札幌市内に住む144人と居住地非公表の14人、その他の各地で合計42人。道内に()ける一日当たりの感染者数は5日連続で100人以上となり、道内での急速な感染拡大が続いている模様。非公表の17人を除けば、年代別では20代が55人と最多。次いで30代が40人、50代が19人、10歳未満も9人と感染は幅広い世代に広がっている模様。検査数は1964件。非公表や調査中の13人を除くと中等症が2人、その他は軽症か無症状だが、200人のうち70人は感染経路が不明。

 軽症で重症化するリスクが低い感染者の宿泊療養先として、北海道は札幌市南区の旅舎(ホテル)に670人分を確保したが、感染防止に向けた準備や対策の必要から一日の受け入れは50人程度が限度。一昨日の時点で宿泊療養者は453人となったが、更に147人が旅舎に入れず、自宅待機を余儀無くされている由。感染の拡大を受けて、北海道は独自に定めた警戒stageを3に引き上げ、札幌市ススキノの「接待を伴う飲食店」に営業時間の短縮を要請。道民や事業者に感染対策の徹底を求めたとの事。国の分科会が定めたstageⅡが、道の基準ではstage2と3に細分化されているようだが、道内では連日100人を超える感染確認が続き、病床の逼迫(ひっぱく)度合(どあい)等を示す指標は軒並(のきなみ)悪化。

 一昨日の時点で、7指標のうち5項目が既に北海道の警戒stage 4、国のstageⅢに相当するとの報道有り。斯様(かよう)な北海道での感染拡大は(いち)辺土(へんど)の事象に留まらず、冬季を迎えようとしている本土の状況を先取りしたものと考えるべきか。


11月11日(水曜)

 フジテレビ編成制作局第一制作室で映画やテレビ(ドラマ)製作者(プロデューサー)を務める稲葉(いなば)直人(なおと)氏は、10月開始の『ルパンの娘』続篇の撮影に際し、産業医見解も参考にしつつ、20(ページ)程度の『新型コロナウイルス感染防止ガイドライン』を自作。

 氏の指針(ガイドライン)では「マスクの常時着用」「消毒・除菌、手洗い・うがいの徹底」「検温など体調管理の徹底」「三密(密集/密接/密閉)を避ける」等の原則を再徹底すると共に、「朝起きた時」「現場に来て準備する時」「撮影が始まった時」「休憩時」「終わって片付ける時」等の状況(じょうきょう)(ごと)に注意事項が並べられ、現場で共用する冷蔵庫や電子レンジ等の設備には「素手(すで)禁止!」と張り紙。扉は開け放ち、換気装置(サーキュレーター)は各室2個ずつ設置する等の厳戒態勢で撮影を続ける一方、実体験を踏まえた副産物として「画面ばっかり見て肩がガチガチで目もチカチカする」との台詞(せりふ)が生まれた由。

 他の各放送局も撮影再開に際し、現場の指針を作成。換気、消毒や手指洗浄、距離の確保や密の回避と云った基本対策に加えて「演者選考(オーディション)や撮影中の指示は遠隔通信を推奨」。慣習化していた顔合わせや読み合わせは廃止され、関係者からの差し入れも禁止。「臨時雇用演者(エキストラ)は極力使わないか最少人数で撮影」「食事の場面は控える」。接吻(キス)の場面も減らし、不可欠な場合のみマスク越しのリハーサル後に「本番1回、さらに1日1度のみ可能」としているそうだが、此の制限の有効性に関しては不明。

 邦画界では、日本映画製作者連盟が「業種ごとの感染拡大予防ガイドライン」を作成。「身体的な接触が必要なシーンの撮影」に於ける濃厚接触に関し、「出演者は前後に手洗いと口唇・口腔内等の消毒を行う」との記載が有る由。隣国では韓国映画振興委員会が逸早(いちはや)く映画館や制作会社経済支援や消毒費用等の補助を行った反面、現場での撮影は継続されたとの情報有り。Festival International du Film de Cannesの開催か中止かで大きく揺れた仏蘭西(フランス)映画界では、労働組合等が、40頁に及ぶ指針を製作。撮影現場に至る個人の移動手段が指定され、「コロナウイルスに特化した相談員(カウンセラー)」や「小物を消毒する補助を含む追加人員」の雇用までも記載され、製作費予算が(かさ)む反面、制作陣の安全と雇用の促進を両立出来ると評価された模様。

 英国のThe Sun等の今月8日紙面に()ると、映画の都Hollywoodで作成された「映画編集者貿易協会による22頁の指針」には「性交場面に関しては台本を書き直せる場合は修正」、場面を削除する()しくは「CG映像を駆使して出演者同士の接触を避ける」との条項が有る由。同じく米国のCNNが本日、「全米の新型コロナウイルス新規感染者が一日当たりで過去最多となる14万人超に達した」と報道。映画人の苦境も当面、終劇は迎えられぬ様だ。


11月12日(木曜)

 新型コロナウイルスの全国的な感染拡大に対し、昨日の会見で日本医師会の中川(なかがわ)俊男(としお)会長が「第3波と考えていいのではないか」と語り、医療(いりょう)逼迫ひっぱくへの懸念を訴えた。 医師会は基本的に開業医の利益を守る業界団体に過ぎず、中川氏の御専門は脳外科の様だが、此の見解は常識的、()つ妥当と言えるだろう。

 更に本日、全国で確認された新規感染者は1662人となり、8月7日の1607人を超えて最多。東京で393人、大阪231人、神奈川で147人が確認される等、大都市圏での拡大が目立つが、北海道も236人に達して他の県でも過去最多が更新されており、地方の感染も依然として深刻。来るべき時が来た。

 

11月13日(金曜)

 先週7日の時点で勝利確定と見込まれた情勢を踏まえて、昨日午前に(すが)義偉(よしひで)総理大臣がBiden氏と初の電話会談。日米同盟の重要性が確認され、バイデン氏は沖縄県や尖閣諸島への日米安全保障条約5条の適用を明言。「自由で開かれた印度(インド)太平洋」の実現や新型コロナウイルス対策、気候変動問題でも連携する方針で一致し、早期の訪米及び会談に就いて検討。首相は氏を「次期大統領」と呼び、女性初の副大統領に就任する見通しのHarris上院議員への祝意も伝える一方で、会談は僅か10分程度で終わった由。

 更に本日、勝敗未定地域のうち「Georgia州でバイデン前副大統領が、North Carolina州でトランプ大統領がそれぞれ勝利を確実にした」旨を、米国に於ける複数の主要な報道機関が一斉に報じた。全州で勝敗が決まり、バイデン次期大統領が過半数の270人を大きく上回る306人の選挙人を獲得。現職のトランプ氏は232人。バイデン氏は既に政権移行チームを立ち上げており、12月14日には各州で選挙人が投票結果に基づいて投票。来年1月6日に開票され、バイデン氏が正式に新大統領として選出される見通し。ジョージア州では得票率が0.3ポイントと小差だった事から、州の規定に基づいて13日から再集計が始まるも、同州の州務長官は「大規模な不正は見つかっていない」と語った由。

 バイデン勝利が確定した7日以降では初のトランプ大統領会見も本日に行われ、次期政権に()いて「時が経てば分かる」と発言。記者からの質問を受けずに会場を立ち去り敗北を認めなかった一方、従前の「自分が勝った」との主張は聞かれず、平生(へいぜい)山吹色(やまぶきいろ)に染められていた氏の頭部が年齢相応な白髪に覆われていた事も一部で話題となった。

 また「有効性が90%以上」と報じられたファイザー社のワクチンに関し、大統領は「ワクチンを受け取る準備が出来たと知事が知らせて来る(まで)、New York州に配らない」と発言。トランプ政権の感染対策に異論を唱えてきたAndrew Cuomo知事に「最後の嫌がらせ」とも言える抵抗を示した。トランプ氏は「開票や集計に不正が有った」と主張して激戦州で訴訟を起こして来たが、Pennsylvania州ではトランプ陣営の弁護団の一部が裁判から撤退すると発表。


11月14日(土曜)

 本日正午、米首都ワシントン市内のFreedom Plazaに、Donald Trump大統領を支持する数千人が集結。大統領選に於ける不正を主張する集会を開いたが、トランプ氏が車で姿を現すと盛大な歓声が巻き起こり、参加者の数は更に増した。参加者達が“TRUMP -2020- KEEP AMERICA GREAT” 或いは“STOP THE STEEL“等と大書された板や旗を掲げ、「更なる4年を」と叫ぶ集会には極右過激派組織“Proud Boys”も出没。反トランプ集会の参加者との衝突を避けるため、市内には多数の治安要員が動員された由。

 日本では、昨日に菅首相が会見。記者からの質問に対し、全国で新規感染者数が過去最多を更新した状況を踏まえて「自衛隊とも緊密に連携をしながら」「最大限の警戒感を持って」対応すると強調する反面、「専門家も現時点に於いて其の様な状況には無いと云う認識を示している」と語り、現時点で緊急事態宣言やGoToキャンペーン見直しは考えていない姿勢を示した。俗諺(ぞくげん)(いわ)く「後悔、先に立たず」「提灯(ちょうちん)()ち、後に立たず」。前首相の忠臣に終わらず、自ら国を導くだけの器量、菅氏に有りや無しや。


11月15日(日曜)

 世界保健機関(World Health Organization; WHO)の見解では「昨年12月に中国の武漢で初めて感染流行が報告される(まで)」新型コロナウイルスとCOVID-19は人類にとって未知の存在だったとされており、伊太利(イタリア)に於ける最初の新型コロナウイルス感染者は2月21日にLombardia州、Milano近くの小都市で確認された。

 此等(これら)の定説に対し、イタリアの国立癌研究所が「昨年9月から今年3月の期間に肺癌検査の調査協力に志願した健常者959名」のうち「11.6%で2月より遥か以前から新型コロナウイルスへの抗体が産生されていた」と報告。従来の想定よりも早期に、中国の国外で感染が拡大していた可能性が示唆された。報告にはSiena大学の調査結果も掲載されたが、共同執筆者のジョバンニ・アポロネ氏はReuters通信社に「昨年10月第1週の時点で、4人が抗体を保有していた」旨を告白。9月以前の既感染を示唆する所見で在り、同氏は「主要な発見だ」「無症状の人々がウイルスを殺せる抗体を保持していた」と述べた由。

 通常ならば重症化の危険性が高いと思われる比較的高齢の喫煙者が含まれていたにも関わらず「被験者の全員が無症状だった」点等への疑問が残るものの、当該ウイルスの起源に(まつ)わる報告で興味深い。

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