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令和コロナ騒動実録  作者: 澤村桐蜂
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令和2年10月第4週

10月19日(月曜)

 新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)が発生した後、米国の布哇(ハワイ)では、3月下旬から5月初めに全島で不要不急の外出を禁止。()の間に日本政府は、邦人に対して「全世界への渡航自粛」に相当する海外安全情報レベル2を発出。第二波到来後は改めてOahu島に()いて8月から先月まで不要不急の外出が禁じられる一方、先月末の時点で「ハワイ州 新型コロナウイルス情報サイト」を開設。同州観光局が公式サイト"allhawaii"内に設置したもので、州内の感染状況や統計資料、旅行前に必要な手続き、旅行中の感染防止対策等が掲載されており、州の安全・衛生対策を(まと)めた動画"Unchanged ALOHA"も公開された。

 そして10月15日から、ハワイ州が「旅行前検査プログラム」に沿った入国管理を開始。「ハワイ到着より72時間以前の検査で陰性」の旅行者は「14日間の自主隔離」無しでの入島が可能となった。「隔離の義務化は水際対策として重要な措置」と主張して来た州当局も、パンデミックで壊滅的な打撃を受けた観光産業を復活させる為に入島を比較的容易にする体制の導入を余儀無くされた模様。プログラムの検査対象として「日本の厚生労働省が認可する新型コロナウイルスの核酸増幅検査(NAT)」が米国以外の検査としては初めて承認され、日本人のハワイ訪問が幾らか容易となるも、米国本土でも感染者数の増加が続く中で、安全に旅行者を迎え入れる事が出来るのかどうかが(あや)ぶまれた。

 旅行前検査プログラム反対派は「到着前72時間前試験だけでは、検査を受けず自主隔離とする選択肢が残り、住民の安全を守れぬ」と主張するが、周知の通りハワイの経済は観光産業で成り立つ。州内で営まれる飲食店の数、(およ)そ4000軒。うち100軒以上は閉店したままで、そのうち更に半数は状況が変わらなければ「数ヶ月で廃業も不可避」と答えたとの情報有り。連邦政府からは飲食店への援助が無く、ハワイ州では失業者に対して地元の飲食店で使える500ドル、邦貨換算で約5万2000円のデビットカード支給案を議論中との事。

 10月14日のハワイ州に於ける新規感染者数は、人口140万人に対して100人超。新たな死者も10人発生し、オアフ島の陽性率は4%近くになった。各郡の首長達は旅行前検査プログラムを導入した州政府の対応を批判して「到着時に2回目の検査を義務付けるべきだ」と主張しており、Maui島とKauai島では「各島に到着した旅行者に対して、2回目の自主検査を求める」事を決定。Hawai‘i島も「入島後の抗原検査」を計画しており、15分程で判明する結果が陰性ならば隔離免除だが、陽性だった場合は即座にPCR検査。凡そ36時間後に結果が分かるまで隔離される模様。オアフ島当局も別の入島時検査を行いたい意向なれども、現在時点で導入する余裕が無い由。

 州政府と各郡とで異なる対応が旅行者の混乱を招く事も懸念されているらしく、(かつ)てhoneymoonを楽しんだ楽園を再訪出来るのは何時(いつ)の事になるやら知れぬ。


10月20日(火曜)

 3月に中国は南方科技大学の研究者達が"Relationship between the ABO Blood Group and the COVID-19 Susceptibility"という論文を発表。未査読(みさどく)ながらも、武漢と上海の新型コロナウイルス感染症患者2173名と同じ地域の健常群に於けるABO式血液型分布を比較した結果、「血液型Aの群は他の血液型に比して感染の危険性が高く、O型の群は低かった」と報告した。米国のMassachusetts General Hospitalでも、3月6日から4月16日までにマサチューセッツ州で陽性が確認された新型コロナウイルス感染症患者1289名を分析し、「O型の者は他の血液型に比べて陽性になりにくかった」と報告している。

 3月以降の第一波で打撃を受けた伊太利(イタリア)西班牙(スペイン)の新型コロナウイルス感染症患者1980名を対象とする研究論文でも「O型の群は新型コロナウイルス感染症に(かか)るリスクが低く、A型はより高い」ことが示された。そして10月14日、従来の研究成果とも整合性を有する二つの研究論文が、アメリカ血液学会の発行するBlood Advances誌に相次いで発表された。一つ目の論文は、丁抹(デンマーク)のOdense大学病院が2月27日から7月30日迄(にちまで)に新型コロナウイルス感染症のPCR検査を受けた丁抹人47万3654名を分析したもので「O型の群は他の血液型に比して、新型コロナウイルス感染症の罹患リスクが低い可能性がある」と結論づけている。()の報告に()ると、丁抹人口の41.69%が0型で在るにも関わらず、陽性患者7422名のうちO型が占める割合は38.4%に留まった由。

 加奈陀(カナダ)のBritish Columbia大学が出した論文からは「O型またはB型の新型コロナウイルス感染症患者は重症化しづらい」傾向が示唆された。3月1日から4月28日までにVancouverに在る大学関連病院の集中治療室で治療を受けた新型コロナウイルス感染症の重症患者95名のうち、人工呼吸器を装着した割合はO型またはB型で61%だったのに対し、A型またはAB型では84%に(のぼ)った。A型またはAB型の重症患者では、腎機能障害や肝機能障害がより多く認められ、集中治療室での治療期間もO型またはB型の重症患者より長かった。

 血液型で感染症の罹患や重症化に差異が生じる状況は過去にも確認されており、例えばO型の人は重症急性呼吸器症候群(Severe acute respiratory syndrome; SARS)に感染しにくく、マラリアで重症化しづらいとされる。特に前者の病原体は現在の大流行と同じくコロナウイルスに属し、今回報告の信憑性も比較的高いと思われるが、「血液型がO型ならばコロナ感染も重症化も心配無用」と云う様な話では無いので悪しからず。


10月21日(水曜)

 感染症予防に用いるワクチンは通常、開発から試験生産へ至る迄に数年を要する。動物実験から始まり、少人数による臨床試験第一相に移る。第二相試験には数百人が参加し、最後の第三相では数千人が加わる。其の後の審査で認可されれば(ようや)く製造が始まると云うのが通例だが、新型コロナウイルス用のワクチン開発では斯様(かよう)な工程が短縮され、既に第三相に進んだワクチン候補も有る模様。

 臨床試験に()いては自然感染を待って効果を判定するのを通例とするが、現在計画中の"human challenge"治験では此の「待ち時間」を短縮する方法に特色が有る。治験の志願者はワクチン接種の1か月後に「慎重に計算された」「丁度、症状が出る位の」量のウイルスに暴露される。即ち意図的に感染を起こし、(しか)る後に接種したワクチンが感染を食い止められるか否かを見極める事になる。通常の第三相試験には6ヶ月から2年掛かるが、「此の期間を短縮し、少しでも早く世界にワクチンを(もたら)さなければならぬと考える」多数の人々が今、志願兵(ボランティア)として治験に参加しようとしている由。

 種々な感染症に対するワクチン効果判定の手段として、human challengeは長い歴史を持つ。コレラや腸チフス、マラリアでも行われて来たと言うが過去の疾患と異なり、COVID-19には未だ効果の確立された治療が存在しない。human challengeに参加したボランティアが重症にならぬとは保証出来ないと危惧する識者も居るようだが、既に英国政府が約46億円の巨費を投じ、来年にも倫敦(ロンドン)で始める方向で計画中。対象となるのは18歳から30歳迄の90名だが、全世界から3万8000人の善男善女が応募した中に90名の日本人も含まれていた模様。

 最も早ければ来年1月に治験が始まり、5月には結果が出る可能性有りと聞いた。ワクチンに過度の期待はしていない自分で在っても、彼等の尊い献身が無駄にならぬ事を願わずには居られない。


10月22日(木曜)

 本日に米国の食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)が、新型コロナウイルス感染症で入院を必要とする患者の治療薬としてレムデシビルを承認。米国で初の治療薬承認となる由。

 国立衛生研究所(National Institutes of Health; NIH)が主導した大規模臨床試験で入院期間短縮の効果が示唆され、5月にFDAが緊急使用を許可した後はトランプ大統領の治療にも使用された反面、今月に入って世界保健機関(World Health Organization; WHO)が世界各国での調査結果から「レムデシビル投与は患者の入院期間や死亡率に大きく影響しなかった」とする結果を公表した等の経緯に関しては、拙作(せっさく)の中でも既報(きほう)の通り。

 レムデシビルを開発した米国のGilead Sciencesは、WHOの調査に就いて「患者がどの薬を投与されているか本人や医師に知らされていた」ため「偏見(バイアス)が生じている可能性が有る」と結果を疑問視する声明を出しており、ギリアド社の株価は時間外取引で4.3%上昇。真にレムデシビルがCOVID-19に有効ならばギリアドやトランプの株が上がるのも当然の事だろうが、有効か否かは現時点では不明。


10月23日(金曜)

 米国東部時間の2020年10月21日、同国の科学雑誌"mSphere"online版で"Effectiveness of face masks in preventing airborne transmission of SARS-CoV-2"と云う論文を公開。東京大学医科学研究所感染・免疫部門ウイルス感染分野教授の河岡(かわおか)義裕(よしひろ)氏を含む研究者達が「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の空気伝播におけるマスクの防御効果」と「マスクの適切な使用法の重要性」を明らかにした由。

 未だ終息の兆しを見せぬCOVID-19の世界的大流行。感染経路として飛沫や煙霧体(エアロゾル)が想定され、感染拡大を防ぐためにマスクの着用が推奨されているのは周知の通りだが、「浮遊するウイルスに対してマスクがどの程度の防御効果を有するか」に関しては、未だ不明な点が多かった。

 当該の研究ではbiosafety level 3の施設内に「感染性のSARS-CoV-2を噴霧できる」小室(チャンバー)を開発。小室の(うち)で向かって左方に位置する人体模型(マネキン)1体の口からSARS-CoV-2が吐き出され、室内に拡散。右方に陣取るマネキンが吸い込んだウイルス粒子を回収装置が捕集する仕組みで、試験粒子としてラテックスビーズや塩化ナトリウム等の代替品を用いた従来の研究とは一線を画する。攻め手のマネキンにはネブライザーが接続されており、「SARS-CoV-2を飛沫やエアロゾルとして」「ヒトの咳と同等の速度で」口元から発射可能。受け手のマネキンでは繋がれた人工呼吸器を用いてヒトと同等の換気率の呼吸が再現されており、ゼラチン膜で作られた装置を呼吸経路に設置する事で吸気に含まれるウイルス粒子を捕集する。

 マネキン2体の距離とウイルス吸込量の実験で「放出側と離れるに従って吸込量が減少する」が「1メートル離れてもウイルスは吸い込まれる」。吸引側のマネキンに各種マスクを装着させた実験で「布マスク着用でウイルス吸込量はマスク非着用の60-80%まで減少」、N95マスクは「適正使用でマスク非着用の10-20%まで減少」するも「N95マスクは隙間を塞いだ密着条件で使用しないと防御効果が低下」し、「隙間を完全に塞いだとしても一定量のウイルスがマスクを透過する」等が判明。ウイルス放出側のマネキンにマスクを装着させた実験で「マスク装着に依り、ウイルス吸込量が大きく減少」した事から、マスクにはウイルスの吸い込みを抑える働きよりも「対面する人への暴露量を減らす効果が高い」事が示唆された。更に放出マネキンに布マスクまたは外科用マスクを装着させ、吸入マネキンに各種のマスクを装着させると「相乗的にウイルスの吸込量が減少する」等の結果が得られた。

 今回の実験では「定量性を確保する」目的で、解析には高濃度のウイルス噴霧が用いられるも、実際のCOVID-19感染者呼気に含まれるウイルス量は不明。噴霧するウイルス量を段階的に減らした実験も行れたが、布マスク・外科用マスク・N95マスク着用時に於いて、マスクを透過した感染性ウイルスは「いずれも検出限界未満」だった由。

 一方で吐き出すウイルス量を減らし、N95マスクを密着して装着した場合にもマスクを透過したウイルスRNAが検出される等、「ウイルスの遺伝子はどのマスク着用時においても検出」された。「実際の感染者から吐き出された感染性ウイルスがマスクを通過して、感染を引き起こすのかどうか」に関しては更なる解析を要するも、「マスクのみでは浮遊するSARS-CoV-2の吸い込みを完全に防ぐ事が出来ない」と考えられ、マスク着用の意義と限界を同時に示した本研究。コロナ制御の一里塚となるか。


10月24日(土曜)

 欧州全体に於ける新型コロナウイルスの一日当たりの新規感染者数が、昨日に初めて20万人を突破。累積感染者数も亜米利加(アメリカ)大陸に次いで多くなり、WHOのTedros事務局長が「北半球は重大な岐路に立たされ、幾つかの国は危険な方向に向かっている」と警告。英国のWalesで、昨日から2週間は「可能な限り自宅に留まるように」と義務付ける措置を開始。仏蘭西(フランス)では、本日から夜間外出禁止の対象を総人口の三分の二に当たる約4600万人に拡大。捷克(チェコ)愛蘭(アイルランド)でも外出制限が開始済で、伊太利や希臘(ギリシャ)は首都圏で夜間の外出禁止措置が出された。

 まだ我が国では然程の増加は見られないものの、北海道の新規感染者数は今月に入って30人を超える日が相次ぎ、昨日に過去最多の51人を記録。道内一の繁華街、札幌市のススキノでも、ホストクラブを含む2箇所の感染者集団(クラスター)を含む11人の感染が発生。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会からは「他都市と比べ、営業時間の短縮要請等の対策が無い」事も問題視された。すすきの観光協会の大島昌充会長が「接待を伴わない居酒屋等、多くの店は厳しく対策を講じている」「一部の店が対策を徹底していない事で、全体が悪い印象を持たれるのは本当に残念だ」、「ススキノでは感染拡大以降、約300店が休業・閉店しており、感染抑止に取り組む店が生き残れる政策の実施を」等と憤る一方、生存を賭けて感染対策に取り組む店と利益優先で対策がおざなりな店の二極化も進行。

 札幌某所のニュークラブ、本州で云う所のキャバクラを取り仕切る男性店長は「売り上げの回復が最優先」「マスクをしない客を注意できない」と告白。客足は10月には7割まで回復して居り、張り紙等でマスク着用を求めるも従わない客は多く、「客の危機感も薄まっていると感じる」が「今の対応を続けるしかない」と取材に対して語った由。

 早期から感染者が多く、2月末の時点で独自の緊急事態宣言を発令するに至った北海道ですら此の為体(ていたらく)では、他の都府県も推して知るべし。「世界の反面教師」等と呼ばれようとも国民の自主性を尊重し、長期に持続可能な対策でコロナ()に挑み続ける瑞典(スウェーデン)(うらや)みたくもなるが、我が国の見習う手本としては(やや)高等過ぎるか。


10月25日(日曜)

 昨日に米国のDevin O'Malley副大統領報道官から「Marc Short副大統領首席補佐官が新型コロナウイルスの検査で陽性を示した」との発表有り。

 彼の上司で副大統領のMike Pence氏も「ショート氏の濃厚接触者に該当する」事に就いては論を()たない筈だが、「同日の検査では夫妻共に陰性だった」との理由を掲げ、共和党の副大統領候補として予定通りの選挙活動を続ける由。New York Times紙の電子版は「ペンス氏側近のうち、ショート氏を除く少なくとも4人が新型コロナに感染した」と報じ、ペンス氏が選挙活動を継続する事に関しても「ホワイトハウスが新型コロナの危険性を真剣に受け止めているのか、新たな疑問が生じる」と批判的に伝えたとの事。

 同じく米国の中枢に勤めてもトランプ大統領の無責任な主張に同じる事無く、自らの責務を果たして来たWhite Houseの新型コロナウイルス対策チームの中心人物、国立アレルギー感染症研究所のFauci所長が、オンライン上で公表された監察官団体との会合で発言。「誰かが聴く事を嫌がり、自らの職務を失う事も有り得る発言だったとしても、其れが真実なら発するべきだ」と語った由。氏の今回の主張は、トランプ米大統領が自らの選対陣営との電話連絡でファウチ所長を「愚か者」と罵倒した事への反論とも受け取らるが、トランプ氏は「米国民は新型コロナに飽き飽きしている」「ファウチや他の全ての馬鹿者にうんざりしている」とも口走ったとされる。

 ファウチ所長は同じ会合で「誰かが言説(メッセージ)の送り手を標的にし、『言い分は聞きたくないし、もう彼等とは喋りたくない』と言い張るのならば、其れは其れで構わない」が「少なくとも貴方あなたは自らの誠実さを保つ事が出来る」とも発言。Donald John Trumpと云う名前に触れる事は無かったが、会場からの質問に「もし貴方が指導者で在るならば、明らかに実行すべき事の一つは、まず言動の一致だ」と答えた由。聖書の一節に曰く「光は闇の中に輝いている」。

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