令和2年10月第2週
10月5日(月曜)
KENZO創業者の服飾意匠家として世界的に著名な高田賢三氏が、昨日にパリ郊外の病院で死去。享年81歳。先月10日に入院して新型コロナウイルスに感染したと診断され、治療を受けるも新型コロナウイルスの合併症で落命された由。1999年にKENZOを去った後もパリを拠点に精力的に活動を続け、2016年にはNapoléon Bonaparteが制定したフランスの最高栄誉、légion d'honneur勲章のChevalier/勲爵士を受章。
今年1月には室内装飾を扱う新たな商標を立ち上げたばかりだった高田氏の訃音に接し、ParisのAnne Hidalgo市長は「多大なる才能を持った意匠家として、彼は服飾の世界に色彩と光を齎した」「巴里は今、息子達の一人の死を悼んでいる」と語った。米国では治療途中の外出を経て、トランプ氏が退院。詳細は後日。
10月6日(火曜)
北は北海道や青森、南は佐賀・熊本、沖縄まで全国から集った参加者の数は190名、若しくは200名とも聞く。本年7月から9月に陸上自衛隊の朝霞駐屯地で行われた若手隊員の教育過程で、新型コロナウイルスの集団感染が発生。研修終了後の先月30日、朝霞駐屯地に所属する隊員1名の感染判明に始まり、各地に戻った濃厚接触者達も検査を受けた事で状況が判明。一昨日の防衛相発表で「感染者は20代の女性隊員27名」とされていたが、当初から更なる感染拡大が懸念されていた。昨日のうちに感染者が1名増えて28人となっていたが、更に本日、陸上自衛隊が「新たに20歳代の女性隊員3人が新型コロナウイルスに感染した」と発表。感染者数は合計31名になった由。
座学や実地訓練、同じ隊舎での宿泊に加えて、修了式直前の9月26日にバスを貸し切り、感染者を含む合計44名が埼玉県内でのバーベキューに出掛けていた事も判明。最初の感染判明者は先月28日の時点で高熱を発し、隔離されたものの「朝霞駐屯地の医官は新型コロナを疑わなかった」為に「他の参加者は予定通り所属部隊に帰投した」等の対応に関し、安倍前総理の実弟で防衛大臣を務める岸信夫氏が、閣議後の記者会見で「感染症対策の徹底が不十分だった可能性が極めて高い」「不適切で改善の余地がある」等と苦言を呈する事態となった。何処かで「化学戦も想定して研鑽を積んだ自衛隊の医官はコロナ対策も万全」「市中の医師共は自衛隊で研修させて貰うべきだ」との見解を耳にした気もするが、実情は異なる様だ。
10月7日(水曜)
一連の経緯を振り返ると、今月1日に東部ニュージャージー州で選挙関連の式典に出席したTrump大統領が、同日夜にtwitterで「大統領顧問のHope Hicks氏が陽性だった」と発言。続いて、自分と夫人が検査で陽性と判定された旨の投稿有り。
2日午後に、専用ヘリコプターでWalter Reed国立軍事医療センターへ移動。独歩で報道陣に手を振る余裕が有り、17時台にtwitter動画で入院を報告する際も「ネクタイを締め、立って発言」する等と不死身振りが喧伝される一方で、公開された主治医書簡に拠るとレムデシビルやRegeneron社のポリクローナル抗体カクテルの投与を受け、亜鉛・ビタミンD・ファモチジン・メラトニン及びアスピリンも服用。3日の主治医会見で大統領の容態には改善が見られ、1日の時点で認めた「軽度の咳や鼻閉、倦怠感」も軽減しつつ在る旨が語られた。トランプ氏自身も体調は回復傾向にあるが「今後数日が正念場」等とtwitterで発言したが、此の2日間で血中酸素飽和度が94%未満に陥る事が2回有り、酸素吸入も行われた事が後に判明。
そして、翌4日。トランプ氏は入院先から車で外出。支持者達の前へ現れて車内から手を振った後に医療センターに戻り、twitterへ「新型コロナに就いて多くを学んだ」「此れは本物の学校だ」「良く分かった」「皆さんに伝えたい」と述べる動画を投稿。回復を誇示する狙いが有ったようだが、トランプ政権が定めた公衆衛生ガイドラインでは「治療中のCOVID-19患者はウイルスを放出しており、隔離措置を取らなければならない」と定められている。
White HouseのJudd Deere報道官は「適切な予防措置を取り、トランプ氏と側近達は保護されていた」「外出を実行しても安全だと医療チームの許可を得た」と氏の行動を弁護した。しかしtwitter上では、George Washington大学の災害医学の専門家、James Phillips氏から「全く必要の無い大統領の外出の所為で、車に同乗した全員が漏れ無く14日間隔離されなければならなくなった」、「彼らは病気になるかも知れない」「死ぬかも知れない」「political theater/政治劇の為に」、「トランプ氏はtheaterの為に彼らの声明を危険に晒した」「狂気の沙汰だ」。Pennsylvania大学の医療倫理・保健政策学部のZeke Emanuel学部長も「トランプ氏の無責任な振る舞いには終わりが無いかの様だ」、「窓を閉め切った車にCOVID-19患者と同乗させた事で、警護者達は必要も無い感染の危険に晒された」、「何の為か?」「人目を惹く為の宣伝だ」、「其れは恥ずべき事だ」「護衛官達の生命は日々、危険に晒されている」等の批判が相次いだ。
更に5日夕方、トランプ氏が退院。報道陣から投げ掛けられた「大統領、貴方はsuper spreader/超感染拡大者ですか?」との質問を「皆さん、本当に有難う」と躱しつつ、専用ヘリコプターに搭乗。前後に「気分はとても良い!」、「COVID-19を恐れるな」「自分達の生活を支配させてはいけない」、「直ぐに選挙戦に戻る!!!」「fake newsは虚偽の世論調査しか伝えない」等とtweetを連投。官邸へ到着するとマスクを外し、両手のThumbs upを撮影。早速、動画を投稿して「我々は仕事に戻る」「前に出て行く」「私は危険だと知っていたが指導者として然うする必要が有った」「今は大分良くなった」「分からないが恐らく免疫も出来ているだろう」等と述べた由。
10月8日(木曜)
世界的大流行の早期からトランプ大統領が頼ったのが「トースター程の大きさで検査結果が十数分で分かる」簡易検査装置、Abbott社の"ID NOW"だった。3月下旬には此れが承認された事を称賛。周囲の全員が此の装置で検査済であることを理由に、政権として推奨したマスク着用や社会的距離を屡々(しばしば)無視して来たが、同氏の戦略は新型コロナウイルスには通用しなかった。自身とメラニア夫人の陽性反応が報告されるに至って、識者からは「限界の有る簡易検査に頼った事が、彼等に『ウイルスを抑制している』との誤った安全認識を与えた」「検査は人とウイルスの障壁になってくれる訳では無い」、「トランプ氏の行動は危険だらけ」で「今回の様な事になるのは実際の所、時間の問題だった」等と批判された。
大統領夫妻の感染判明に先立ち、9月26日には官邸でAmy Coney Barrett最高裁判事の指名式典が開かれた。150人程の出席者は大統領を含めて大半がマスクを装着せず、座席の感覚は狭く、抱き合って挨拶する者も居た由。此の中から共和党の上院議員、元大統領顧問、バレット氏 母校の学長、前ニュージャージー州知事等の感染が相次いで判明。官邸でも大統領顧問のヒックス氏、Kayleigh McEnany報道官と部下2人、選挙対策本部長等と14人の感染が確認される中、10月5日にトランプ大統領が退院。 7日に主治医のSean Conley氏が発表した所に拠ると、直近の24時間でトランプ氏にCOVID-19の症状は認めず、4日間に渡って平熱を維持していた由。ホワイトハウス屋外で撮影されたTwitter動画の中でトランプ氏は「体調は、とても良い」「完璧だ」、「感染したのは神の恵みだと思う」「不幸に見せかけた神の恵みだったんだ」と発言。
しかし、George Washington 大学の医学部教授のJonathan Reiner氏が主張する「トランプ氏こそがWhite Houseに於ける超感染拡大者」との見解に賛同する者は多い。官邸が疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention; CDC)に全感染例に関する正式な追跡調査を依頼しないのは「起点となった『患者0号』が合衆国大統領かも知れないと懸念しているからだと思う」とライナー氏は語り、周囲の状況から推して「2日の入院の少なくとも1週間前」に大統領は新型コロナウイルスに感染していた可能性が高いとも指摘している由。
10月9日(金曜)
9月21日の項に記した"COVAX Facility"。世界各国へ新型コロナウイルスのワクチンを公平に届ける為の枠組みに関し、当初は参加を見送った中国が昨日付で加盟した旨、本日に中国外務省の華春瑩/huà chūn yíng報道官が発表。
華報道官は「中国はワクチン開発で世界を先導し、十分な生産能力も有る」「ワクチンの公平分配を促進し、途上国へのワクチン確保を実際の行動で示す為に参加を決めた」等の理由を述べた上で「開発能力が有る、より多くの国に参加を促す」と語り、未だ不参加の米国を暗に牽制。中国では「4種類のワクチン」が臨床試験の最終段階に進み、年末には「約6億回分のワクチンを生産出来る」との展望が語られており、参加表明に転じる事で国際的な影響力を強めたい思惑も有る様だ。世界の覇権を窺う昨今の中国には穏やかならぬものを感じるが、同等の強国と言えども精力的に立ち回る側の威勢が増し、自国第一主義に引き篭もる側の影響力が低下するのは不可避の展開か。
抗ウイルス薬レムデシビルに関しては、昨日に米国の国立衛生研究所(National Institutes of Health; NIH)を含む研究グループが、New England Journal of Medicine誌上で国際的な臨床試験の最終報告。米国や日本等の10ヶ国で新型コロナウイルスに感染して入院した成人、凡そ1000人を対象とした調査で、最大10日間に渡ってレムデシビル投与群と非投与群の経過を比較。投与群では「患者が一定程度回復するまでに要する期間の中央値が10日間」と非投与群の15日間に比べて短く、「投与開始から15日目の回復の度合いもより良好」との結果から、「新型コロナウイルスの患者の回復にかかる期間を短縮し、重症化を防ぐ効果を期待できる」との結論が示された由。
日本では今年5月に特例で承認されたレムデシビルだが、米国では緊急の使用許可に留まり、正規承認には至っていない。しかし、今回の結果に先んじてトランプ大統領への投与が話題となり、同国でも承認に向けた動きが加速する見込み。欧州連合(European Union; EU)も、昨日に「最大50万人分のレムデシベルを購入する契約をGilead Sciences社と締結した」と発表。購入額は7000万ユーロ、日本円で87億円超に及ぶ。EUは既に約3万人分のレムデシビルを購入済だが、多くの国で感染の再拡大が見られる情勢を踏まえて、大幅な買い増しを決定した模様。非加盟国の英国や諾威も医療物資の共同調達に関する協定をEUと結んでおり、36ヶ国がレムデシベル提供を受けられる予定。EUで保健政策を担当するStella Kyriakides委員は「新型コロナウイルスに対する欧州の結束を示すものだ」と語った由。
10月10日(土曜)
トランプ大統領の精神状態については、2017年の就任当時から不安視する見方があった。曾ての側近から「unhinged/錯乱状態」或いは「off the rails/常軌逸脱」と評された事も有るトランプ氏だが、コロナウイルス感染や入院治療を経ての言行は更に大統領としての判断力に疑問を呈する様になったと物議を醸している由。
曰く、血中酸素濃度が一時低下し、Mark Meadows大統領首席補佐官が「極めて深刻な状況」と発表した今月4日、武装車両に乗り込んで病院周辺を走らせ、護衛官や運転手に感染者との同乗を強いた。曰く、翌5日早朝から午前中に掛けて、翌月に迫った大統領選を意識した一語投稿「vote!」を立て続けに20回以上も発信した。就任以来、大統領の個人tweetは10万回以上に達しているが、同日の短時間内に限ると斯様に頻繁な発信の前例無し。 退院直前の朝、病室の執務用卓からtwitterに"Don’t be afraid of Covid", "Don’t let it dominate your life"等と書き込み、全米で700万人を突破した感染被害を軽視した。曰く、投薬の副作用を含めた経過観察のため「最低1週間程度の入院治療が必要」の指摘や側近達の慎重意見も無視して強引に退院、官邸に舞い戻ると庭園を見渡す露台から報道の陣列に向けて自らのマスクを剥ぎ取って見せたが、完治とは程遠い状態の退院に職員達は恐慌状態に陥って緊急退避、大統領執務室の有る西館は一時、"ghost town"と化した。6日のtweetで改めて「大騒ぎする必要は無い」「コロナの致死率はインフルエンザより低い」等と書き込み、既に国内死者22万人の最悪状態を齎した実態を無視した。
7日に下院議長と財務長官との間で詰めの協議に入っていたコロナ関連追加経済対策法案に関して、審議打ち切りの命令を下し、2兆ドルに上る同法案が御破算となった。Jerome Powell連邦準備制度理事会議長が「早急な経済追加対策抜きでは米国の経済は壊滅的状況に陥る」と警告し、4日前には大統領自身が病室から「追加対策法案に就いての両党早期合意」を呼びかけたばかりの反掌でWall Streetにも混乱を引き起こした。等々の罪科は悉く尤もなれども、Donald John Trumpは元来が左様な人間で「投与された副作用の強い未承認抗体医薬の影響」を引き合いに出さずとも了解可能。と云うのが市井の一精神科医の印象だ。「其の様な人間が世界第一の軍隊を率いる現状こそが狂気の真只中」と言われれば反論の余地無し。
10月11日(日曜)
今月6日の時点で、米国立アレルギー感染症研究所のAnthony Stephen Fauci所長が「White Houseで発生した一連の新型コロナウイルス感染は回避可能だった」との見解を示した。マスク着用による感染予防を以前から訴えて公衆衛生指針の遵守を推奨する等、感染軽視のトランプ大統領とは一線を画して来たファウチ氏は、取材で「新型コロナの感染拡大が捏造だと信じている親類と感染予防を話し合う際の助言」を求められると「ホワイトハウスで今週起きた事を見て欲しい」と回答。「其れが其処に在る現実だ」「感染者は日毎に増加している」「捏造では無い」「回避可能だったのに此の様な状況が起こると云うのは、残念な状況だ」と述べた。
5日の退院後にトランプ陣営が30秒の選挙広告動画を公開。トランプ氏の回復や政府の感染対策に焦点を当てた中で、トランプ称賛の印象を与えるような形で「此れ以上の事を出来る人が居るとは想像出来ない」と述べたファウチ氏発言が引用された。此れに対してファウチ氏から本日、自身の発言に関して「使用に同意しておらず、文脈を無視して使われている」との苦情有り。氏の発言は新型コロナ対策作業部会も含め、全般的なコロナ対策について話した今年3月の取材で語られたものだが、「連邦医療当局の対応に就いて一般論として発言したもの」で「文脈を無視して使われている」由。更に氏は「公職に就いてから凡そ50年間、公に選挙の候補者を支持した事は無い」と言明。硬骨漢、此処に在り。




