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令和コロナ騒動実録  作者: 澤村桐蜂
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令和2年9月最終週~10月第1週

9月28日(月曜)

 新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)下に()ける海外への渡航中止勧告に関し、10月以降は段階的に解除する方向で、日本政府が調整を始めた由。法的拘束力は伴わないものの、外務省は渡航に関して4段階の「感染症危険情報」を発表している。

 此迄(これまで)は159の国と地域を「渡航中止勧告のレベル3」相当として来たが、感染状況が落ち着いている国や地域については、不要不急の渡航自粛を呼び掛ける程度の「レベル2」へと引き下げる方向で検討。具体的には豪州(オーストラリア)新西蘭(ニュージーランド)越南(ベトナム)を含む10以上の国・地域が候補になる模様。渡航の可否は受入(うけいれ)国が決める事だが、我が方からの出国を緩める事に()り、相手国の入国制限の撤廃に繋げ、海外との往来を徐々に再開する事で経済活動の本格化を目指して行く狙いかと識者は語る。

 斯様(かよう)な状況下で本日、日本のプロボクシングを統括するJapan Boxing Commission及び、全国のジム会長で組織されるJapan Professional Boxing Associationが、Web会議サービスのZOOMを使ったオンラインでの新型コロナウイルス対策連絡協議会を開催。スポーツ庁やアマチュアの日本ボクシング連盟と協議を続けた結果、外国人選手の入国に関しては「少しずつ前進」しており、「門戸は広がっている」と発表。現状でも世界戦は認める事とし、11月3日のWBA世界ライトフライ(きゅう)選手権試合(タイトルマッチ)で王者の京口(きょうぐち)紘人(ひろと)に挑戦する(タイ)国のタノンサック・シムシーも、必要書類の提出を済ませてビザ発給待ちの状態。興行再開から初の男子世界戦開催は、予定通り開催される見込みとの事。

 ()の一方で7月の再開以降、客や協会員の興行ガイドライン違反が散見。「指定された席以外の着席や禁止されている立ち見」、出場選手は計量とPCR検査後は指定された宿舎への分離宿泊が義務づけられ、外出は禁止されているが「テイクアウトの列に並んだ選手が居て厳重注意を与えた」等の例が報告された事に関して、ガイドラインが遵守されずに集団(クラスター)感染が起きた場合は無観客開催等の選択肢を検討すると共に「違反者に対しては会員資格停止や罰金などを課す」等の方針が確認された由。


9月29日(火曜)

 新型コロナウイルスの世界的流行が長引く情勢に対し、世界保健機関のTedros Adhanom事務局長は、昨日の記者会見で「Bill & Melinda Gates財団が、Abbott社及びSD BIOSENSER社と、今後6ヶ月で1億2000万回分の検査を可能にする契約を結んだ」事を発表。此の決定に()って「COVID-19の検査を低・中所得国で大幅に拡大する」事が可能となる由。検査の費用は1回5ドル、日本円にして約530円と安価で携帯も容易、用法も簡便な上に15~30分で結果が得られる等の利点を生かし、致死率や感染率が高い南米諸国を含む133ヶ国での検査が予定されている。

 社名から判断すると、使用される検査キットは恐らくアボット社のBinaxNOW TM COVID-19 Ag Card、SDバイオセンサー社のSTANDARD Q COVID-19 Ag testか。どちらも抗原検査の一種で、安価簡便かつ規模拡大も容易と()うのも抗原検査の特徴だが、弱点はPCRに比べて感度が落ちる事。費用や専門家の不足している地域に於いては感染している可能性の高い群を隔離する等の意義も有ろうが、(ふるい)の目が粗すぎれば混乱の度合いが増すばかり。有意義な計画と成るか否かは、使用する検査の精度と使い方次第だろう。


9月30日(水曜)

 国内外で開発が進む新型コロナウイルス用のワクチンに関し、予防接種を全額国費で(まかな)い、国民に自己負担を求めない事を日本政府が決定した由。

 来年前半の確保を目指して、関連費用は今年度補正予算の予備費6700億円超を()てる事とし、来週にも厚生労働省の審議会で無料化方針を示す模様。政府は米国ファイザー社や英国アストラゼネカ社との間でワクチン供給に()いて基本合意済で、ワクチン開発が順調に進んだ場合は年末以降に接種が開始できる事も念頭に、必要な体制整備を進めている。「無料化で速やかな接種を促す」「インフルエンザとの同時流行等に備える」等を狙っている様だが、「コロナワクチンを接種しても長期の免疫は獲得出来ないのではないか」との指摘有り。政府は来年度予算案で更なるワクチン確保に向けた費用も計上する方向だが、その際の自己負担等の在り方については別途検討するとの事。

 昨日に開催されたアメリカ大統領選の第1回討論会。「最高裁判事の任命」に関する質問にJoseph Robinette Biden, Jr.氏が答えている最中、横からDonald John Trump氏が絶え間なく「判事を増やすのか」「判事を増やすのか」「彼は質問に答えたくないんだ」「何故、答えないんですか」等と口を挟んだ。何度も遮られたバイデン氏は苛立ちながら「お願いだから黙ってくれますか」「何て大統領として、とても相応(ふさわ)しくない行為なんだ」と呆れたように述べた由。司会のウォレス氏は「他の人が話をしている間は(しゃべ)らないように」と何度もトランプ大統領に頼んだが、トランプ大統領が「3分間に10回バイデン氏を遮った」、「ウォレス氏が自分の質問を最後まで終わらせてくれとお願いする」等の状況も発生。

 現在77歳、当選した場合はアメリカ史上で最高齢の大統領になるバイデン氏に対し、トランプ氏は「頭が悪く、最盛期は過ぎた」と批判し、「バイデン氏がパフォーマンスを向上させるドラッグを使用している」「バイデン氏はドラッグ検査を受けるべき」と中傷。討論会でも「海外に流出した雇用をアメリカに戻した」「歴史上、類を見ない程に経済を発展させ、軍を再建し、どの政権より多くを成し遂げた」、「郵便投票は不正が生じる」等の根拠のない主張を繰り返した大統領に対し、バイデン氏は「嘘吐(うそつ)き」で「事実を無視している」と批判。討論会の最後に「私達は()れを変えられるでしょうか」「それとも後4年、此の嘘が続くのでしょうか」と有権者に呼びかけた由。


10月1日(木曜)

 政府の観光振興策「Go Toトラベル」キャンペーンは7月末に東京を除外する形で始まったが、本日から東京発着の旅行も加わり、対象地域は全国に拡大。旅行先で使える「地域共通クーポン」も利用開始。旅行代金の15%相当が千円単位のクーポン券で発行され、旅行先及び隣接する都道府県のクーポン参加事業者で使う事が可能で、旅行代金本体への割引35%と併せれば補助率50%の勘定となる由。

 新型コロナの感染拡大で打撃を受けた飲食店を支援する「Go Toイート」キャンペーンのポイント事業も、本日から全国で開始。「Go Toイート」のポイント事業は「ぐるなび」や「食べログ」等の予約サイトを通じて昼食は500円分、夕食は1000円分、次回以降から使用できるポイントが何回でも付与される。ポイントの付与は来年1月末で終わる予定だが、利用は3月末まで可能との事。此等(これら)の施策により観光や飲食の需要が喚起できるものと期待される一方、人の往来の増加が感染拡大を生むかとの懸念有り。

 (あたか)もコロナ()が過ぎ去ったかの様な我が国の風潮とは対照的に、欧州では再び感染者数が急増。感染抑制に向けて制限措置を再導入する動きも広がっている由。今月21日、仏蘭西(フランス)は第三の都市Lyonで、屋外のイベント入場者数を従前の5000人から1000人に制限すると共に、20時以降は屋外での酒類販売と飲酒を禁止。レストランやバーの店内に於いても着席した飲食は容認されるが、バーでの立ち飲みやダンスは禁止される。高齢者施設への訪問も週2回に制限。 同国では先月19日に一日当たりの新規感染者数が1万3498人と最多を記録しており、MarseilleやBordeaux、Niceでも同様の措置が取られた由。西班牙(スペイン)の首都Madridでは、感染が急拡大している一部地域でLockdownの措置が実施された上に、地元当局者が軍の支援や仮設病院の再設置を要請。

 英国では、先月30日にBoris Johnson首相が「急速に拡大している感染第二波への対策として政府が設けた規制に従う」事を国民に求め、「対応しなければ更に厳しい都市封鎖(ロックダウン)を実施する可能性が有る」と警告。同国では先の封鎖により過去百年で最悪の経済的打撃が生じたとして、封鎖に対する反対が強まっている反面、新型コロナウイルス感染症に因る死者数は欧州最多の4万2143人超。世界でも5番目に多く、全土で感染拡大が加速中との事。


10月2日(金曜)

 昨日の時点で、米国のDonald Trump大統領が「最側近のHope Hicks氏が新型コロナウイルス検査で陽性と診断された」事をFox Newsの取材で認めた。

 そして本日未明、twitterに"Tonight, @FLOTUS and I tested positive for COVID-19. "(今夜、大統領夫人と私は、新型コロナウイルス感染症の検査で陽性と診断された)、"We will begin our quarantine and recovery process immediately."(直ちに隔離と回復のプロセスに入る)、" We will get through this TOGETHER!"(共に乗り越えていく!)と投稿。今夜に大統領選の激戦区、フロリダ州Sanfordの空港で予定されていた氏の集会も中止となった由。

 此の件に関する速報を目にしたのは、外来業務が早く終わり、医局の自卓へ戻った時だった。着替えて病院の職員通用口を出ると、車で近くの海岸へ向かった。砂浜に座って「此の世界は何処へ向かって行くのだろうか」と考えているうちに日が暮れた。


10月3日(土曜)

 世界の従来型報道機関が英語で報じた3800万本の記事を、米国Cornell大学の研究チームが評価。一昨日に発表された結果に拠ると、新型コロナウイルス感染症に関する誤情報の拡散を世界で最も牽引(けんいん)したのは、昨日に感染が判明したばかりのDonald Trump大統領だった由。

 調査に際しては、今年1月1日~5月26日に米国・英国・印度(インド)愛蘭(アイルランド)・豪州・新西蘭、亜弗利加(アフリカ)亜細亜(アジア)諸国で報じられた記事を収集した情報蓄積(データベース)が使用された。新型コロナウイルスの世界的流行に関する誤った情報を掲載するか、増幅させた報道記事は52万2472本に上る事が確認され、研究者達は「米国立アレルギー感染症研究所/NIAID)のAnthony Fauci所長を攻撃する陰謀論」や「新型ウイルスは中国が撒いた生物兵器だとする見解」等、11の主題(トピック)に記事を分類。圧倒的に多かった主題は「奇跡的な治療法」で、29万5351本と他の10主題に関する記事の総数を上回った。4月下旬の記者会見で、トランプ氏が新型ウイルス感染症の治療法として消毒液の注射を提案した事が増加に繋がったと考えられた事から、研究者達は「米国の大統領が新型コロナウイルス感染症に関する誤情報の"infodemic"を最も牽引した人物である可能性が高い」との結論に達した由。

 コロナ禍が始まった頃から氏の発言を追うと、1月22日に「我々は完全に(新型コロナウイルスを)制御出来ている」、「中国から1人入国しただけ」で「何も問題ない」。2月26日に「コレステロールはインフルエンザだ」「インフルエンザの様なものだ」、翌27日に「そのうち消える」「或る日、奇跡の様に消えるだろう」。3月は少し風向きが変わり、11日は「ウイルスに勝ち目は無い」「米国以上に準備していて、回復力が有る国は無い」、14日は自身が執って来た新型コロナウイルス対応を「私なら10点満点を付ける」と自画自賛。同月17日に「ずっと此れは本物だと分かっていた」「世界的大流行(パンデミック)と呼ばれる、ずっと前から世界的大流行(パンデミック)だと感じていた」と預言者の如し。

 4月3日は「大統領執務室/Oval Officeで、あの美しいResolute Desk、偉大なレゾリュート・デスクに座っていながら、着けるのは嫌なんだ」、「単に着けたくない」「そのうち気が変わるかもしれない」と言い、マスク着用を拒否。5月19日は「感染者が多いのは悪い事だとは思わない」、「我々の検査がずっと良くなった事を意味するからだ」、「名誉の印だ」と極めて前向きな発言。7月28日には未だにCOVID-19への効果が確認されていない抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンに就いて「信じている」、「私は14日間、服用した」「御覧の通り、此処に居る」「早い段階のほうが効くと思う」と語った大統領発言今、病床で何を想うのか。


10月4日(日曜)

 昨日午前、日本時間では本日未明にトランプ氏が入院しているワシントン郊外のWalter Reed国立軍事医療センターの前で、主治医のSean Conley医師が会見。トランプ氏に関して「現在は酸素補給を受けていない」と述べるも、記者団が「過去に酸素補給を受けていたのか」との問いを重ねても明らかな返答無し。発症時期に就いても言及を避けたが、New York Times紙に「トランプ氏は2日に呼吸困難を呈して血中酸素濃度が下がり、医師達が酸素補給をして入院を決めた」と語る「関係者」が有った模様。

 トランプ氏は午後の大半を執務に充てた後に昨夜、日本時間では今朝にtwitterへ動画を投稿。「此処(ここ)に来た時は、あまり体調が良くなかった」が「今はだいぶ良くなっている」。「米国を再び偉大にするという仕事」を完了させる(ため)にホワイトハウスへ「戻らなければならない」が、「間もなく戻れるだろう」。大統領選に向けて「選挙活動を仕上げるのを楽しみにしている」。「我々は此のウイルスに打ち勝つ」。「私が現在、施されている治療法や間も無く利用可能になる他の治療法」は「神から与えられた奇跡が起きている様」で「今後、数日間が本当の試練になるだろう」が「とても良い結果になると思う」等と語ったが、此の間もレムデシビル投与は継続されていた模様。

 院外では昨日昼頃、Mark Meadows大統領首席補佐官が米国内の報道機関に対し、大統領の健康状態を示す複数の数値は「過去24時間、とても憂慮すべきものだった」、「今後48時間が極めて重要」で「まだ完全回復に向けた明確な軌道には乗っていない」等と発言。情報は錯綜(さくそう)しているが、世界を振り回す剛腕の所有者と言えども(よわい)74歳。検査値の陰転が確かめられる迄は、無理をせぬ事が肝要だろう。

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