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令和コロナ騒動実録  作者: 澤村桐蜂
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令和2年9月第4週

9月21日(月曜)

 COVID-19 Vaccine Global Access Facility、略称"COVAX"。新型コロナウイルス感染症のワクチンを公平に確保・分配する為に、World Health Organization等が主導して参加国がワクチンの開発・製造や配布に要する費用を出資し合う国籍を超えた連携で在り、「高・中所得国が自ら資金を拠出し、自国用にワクチンを購入する」枠組(わくぐみ)と「提供者となる国や団体等からの拠出金に()って途上国へのワクチン供給を行う枠組」を結合させた制度。「2021年末(ねんまつ)(まで)に20億回分の接種量を確保し、各国で人口の約20%を(まかな)う」事を目標としていた。

 今月17日の時点でWHOのTedros Adhanom Ghebreyesus事務局長は「170ヶ国以上が参加をした」と語り、翌18日に参加表明の期限が終了。同日の記者会見で中国外務省の報道官、汪文斌/Wāng Wénbīn氏が「中国はCOVAXを支持する」と述べつつも参加に関しては明言を避け、自国のワクチン開発が「世界で最前列にある」と成果を誇示。途上国への「ワクチン外交」を展開する習近平政権としては、自国主導でワクチン提供を進めたいとの思惑(おもわく)も指摘されていた。米国のトランプ政権も、ワクチンの調達に関して「WHOのような多国間組織に制約されたくない」との意向を表明。露西亜(ロシア)の政府関係者も今月に「我々は独自のワクチン生産を開始」しており、COVAX参加は「必要が無い」と強調した旨が報道されていた。

 雲行(くもゆき)の怪しくなって来た所で本日、COVAXに正式参加したのは「日本や欧州連合諸国を含む合計156の国と地域」に留まり、米中露は不参加に終わった旨をWHOが発表。WHOは「新たに38ヶ国が近日中に参加する事が期待される」との見通しを示し、今後も参加を受け入れる方針だが、三大国が現時点で参加を見送った事で「先進国のワクチン争奪戦を防ぎ、途上国に行き渡らせる」というCOVAXの意義は揺らぎ、状況は混迷の度合を強めるばかり。と云う辺りで丁度(ちょうど)御時間(おじかん)惑珍(わくちん)三国志、(しばら)下文(かぶん)分解(ときあかし)()け。


9月22日(火曜)

 東西(とざい)東西(とうざい)。九州では新型コロナウイルス対策費を盛り込んだ自治体の予算を巡り、七県のうち福岡を除く六県で、今年2~8月に議会の議決を()ずに知事が決める「専決処分」が行われた由。九州全土233市町村のうち、(およ)そ8割に当たる184市町村でも首長が同様の処置を()った。専決処分に関しては売上激減の事業者を支援する等、行政が緊急時に即応出来る利点が有る反面、「市民の声を政策に反映させる議会の機能が失われる」との懸念も指摘されており、今後の感染再拡大時も含めて二元代表制の在り方が問われるとの声有り。

 南下(なんか)して沖縄では、新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた中小企業や個人事業主を対象とした持続化給付金を巡り、「今年4~8月に県内で億単位の大規模な不正受給が有った」として、県警が百人態勢の捜査を開始した由。組織犯罪対策課等が今月3日に那覇市の税理士事務所を含む複数箇所に家宅捜索に入り、捜査の手は沖縄市・うるま市にも及んだ。不正受給の背後に反社会的勢力の存在が疑われており、税理士の男性らが扱った申請件数は推算で1500~2000件程度。県内では他にも同時多発的に不正が横行していたとの情報も有り、同給付金に関係する全国最大規模の詐欺(さぎ)事件に発展するかも知れぬと地元紙が報じた模様。

 (はる)か西方に目を転じると、欧州では再び感染拡大の懸念が強まり、英国政府のPatrick Vallance首席科学顧問が「約7日毎に新規感染者の数が倍増している」旨を指摘。「何ら対策を講じなければ、来月中旬には新規の感染者が一日当たり5万人に(のぼ)る可能性がある」と警告した由。此の状況を踏まえて、同国政府は24日からEnglandのパブやバー、レストランを22時迄に閉店させる事を決定。営業は座卓(テーブル)席のみに限定。Boris Johnson首相が議会で一連の施策に()いて発表した後で本日20時、日本時間では明日の午前4時にテレビを通じて国民に説明する予定だが、「来店時間を(まば)らにする為には一定の営業時間が必要」、「非認可の営業やハウスパーティーを増やすばかりだ」等の批判も有る様に聞き及んだ。


9月23日(水曜)

 昨日に国際五輪委員会(International Olympic Committee; IOC)のThomas Bach会長が、各国関係者に()てた書簡を公表。COVID-19流行下に()ける昨今の情勢は「ワクチンが無くても大きなスポーツイベントを安全に運営出来る」事を示唆(しさ)して「(これ)からの大会準備に自信を与えてくれる」と述べて、東京五輪・パラリンピックの開催に改めて自信を示した由。バッハ氏は「特に競技大会の安全確保に向け、より迅速(じんそく)に結果の判明する新たな検査方法に注目している」、「年内にもワクチンが開発される可能性」に言及して「検査とワクチンの発展がスポーツイベントの安全な運営に大いに資する」とし、「全般的に慎重な楽観論に立つ十分な根拠が有る」と主張。

 バッハ氏の発言と呼応するかの(ごと)く、本日に日本政府が発表。来夏の東京五輪・パラ五輪に向けて「新型コロナウイルスの陰性証明や日本国内での行動計画書の提出」等を条件に「海外から約1万人の選手を受け入れる」方向で検討を進めて、「入国後2週間の隔離措置も免除」して選手が試合や練習に参加できるよう調整する由。素案(そあん)()れば、海外の選手は「出国前の72時間以内に検査」を受け、陰性証明を取得した上で来日。「入国直後に空港で再検査」を受けた後、事前に提出した行動計画書に沿って行動する予定。入国後の選手村への移動、選手村と競技・練習会場との往復は「組織委が専用車を用意」、host town(和製英語?)等を経由する場合は「各自治体が車を準備」して「公共交通機関の利用は原則回避。ホストタウンや事前キャンプ地の自治体に対しては、感染防止策を踏まえた手引書(マニュアル)が作成される模様。

 五輪開始や選手受入の方向で話が進む一方で、出国前検査に関しては各国で精度や信頼性が異なる事が予想される。ドーピング同様、性悪説(せいあくせつ)に立って予測するならば「有力選手が無症状の感染を示した場合、ひとまず結果を(いつわ)って出発させる」と云う様な状況も考慮せねばなるまい。「国内では如何(いか)なる検査を、どの程度の頻度で実施すべきか」、「検査で陽性者が出た場合は何とするか」、「行動計画書に沿った活動を約束する誓約書の提出」も求める方針との事だが「違反に対して罰則を設けるのか」等と課題は山積(さんせき)


9月24日(木曜)

 今週月曜の項で「米露中の三大国のCOVAX不参加」について記したが、米国が自国第一主義でワクチン確保に躍起となる間に中露は活発な「ワクチン外交」を進め、就中(なかんずく)、発展途上国に対する影響力拡大を図っている模様。中国の医療従事者等に対するワクチン緊急投与が始まったのと時を同じくして、7月下旬の時点でメキシコを初めとする中南米・カリブ海諸国とのオンライン外相会議に参加した中国の王毅/Wáng Yì国務委員兼外相が「中国製ワクチン入手のため10億ドル、日本円にして約1千億円の融資を行う」計画を発表。8月下旬に李克強/Lǐ Kèqiáng首相もタイ・ミャンマー等、メコン川流域に位置する5ヶ国とのオンライン首脳会議で「中国でワクチン開発が終わって使用が始まれば、メコン川流域国に優先的に提供する」と強調。中国はアフリカ諸国等に対してもワクチンを優先的に提供する方針を示しており、「中国とワクチンの優先提供や製造協力等の交渉を進めている国は約百ヶ国に上る」との報道も有る。

 比律賓(フィリピン)のRodrigo Roa Duterte大統領は今月中旬、「中国製とロシア製のワクチンを優先的に購入する」意向を表明。ドゥテルテ氏は中国のワクチンについて「予約金や前金を求める他国とは違う」と述べ、欧米製薬企業への不満を見せた。中国外務省の発表を信ずるならば、同国では既に11種類のワクチンが臨床試験に入っており、うち4種類が最終となる第3段階の治験を海外で行っている事になる。対してロシア政府は、先月に新型コロナのワクチンを世界で初めて承認。旧ソ連が打ち上げた世界初の人工衛星に因んで"Sputnik V "と名付けた件については、9月9日の項で既報の通り。開発を支援する露政府系基金は「30ヶ国以上がスプートニクVに関心を示し、来年末までに10億人以上が接種を受ける」との見通しを示し、旧ソ連諸国に加えて亜細亜(アジア)や中南米、中東と広範な地域で売り込みを図っている。

 ただ、スプートニクVが治験の第3段階を経ずに承認された様に、中露のワクチンには安全性や手続きを巡る懸念が絶えないのも事実。そもそも変異を繰り返すウイルスに対し、ワクチンの効果が何処まで期待出来るのか。日本も含めて、為政者も民衆もワクチンの可能性を過信している様に思えてならない。


9月25日(金曜)

 新型コロナウイルスの影響で原則オンライン授業の体制が長く続いた日本各地の大学で、後期から対面授業を増やす動きが拡大。

 鹿児島大学は来月から学年毎に2回、キャンパスで授業を受ける「スクーリング期間」を設定。まずは学部1年生、凡そ2千人が10月1~14日に感染対策を経て員の指導を受け、学生同士の交流も深める予定。伝え聞いた一年生は「これでやっと大学生になれる」と喜んだ由。学部に依っては、前期の大半がオンラインだった所も有り、武隈(たけくま)(あきら)副学長からは「学問は人との交流の中で生まれる」「対面の機会が有るか無いかで、オンラインの意味も変わって来る」、通学に不安の残る学生の為に「希望者はオンラインでも受講できる仕組(しくみ)を残して置く」「学生に不利益の無い様に準備したい」との言有り。

 熊本大は「学生と家族の感染防止を最優先」との方針を堅持(けんじ)し、後期も実験や実習以外はオンラインとする予定だが、九州に於いても一日当たりの感染者数は減少傾向で、春・夏学期は(ほとん)どがオンライン授業だった九州大学も10月からの秋・冬学期は対面授業を増やす事が決定。関西では京都大学も「経済活動も動いている」「あまり活動を縛るのは良くない」との判断に基づき、後期は対面講義の許可に転じた。

 ()くの如き情勢に在っては、オンラインと対面を組み合わせた授業が導入される事も理の当然と言うべきか。桜美林大学は秋学期の授業計画シラバスで授業の形態をオンライン・対面・混合型の中から学生が選択可能としたが、「同日の3限に対面、4限にオンラインの授業が有る」状況に於いて「学生は4限を何処で受講するのか」等の課題も残った。今月14日に秋冬学期が始まった一橋大学は「対面授業の前後のコマでライブ配信の授業を受ける場合」に限り、大教室をオンライン受講用として開放する措置にて対応。オンライン授業での指導に関して「対面よりも学習の質が低下する」と云う学生の不満に対しては、早稲田大学が「反転授業」を展開する模様。

 反転授業/flip teaching or flipped classroomとは2000年代にアメリカで始まった試みで、"backwards classroom"や"reverse instruction"、或いは"flipping the classroom"に"reverse teaching"等の別称有り。()ずは自宅で旧来の「授業」に当たる内容を映像教材を用いて予習の形で受講した後、学校の教室では授業の時間を用いて通常「宿題」として扱われて来た演習や意見交換等を行う学習法との事。教育効果が高いとされるが、全てをオンラインで済ませる事も考えられるし、質疑応答の部分を対面で遣り取りするとしても接触を減らせると云う訳だ。

 何十年か前に暢気(のんき)な田舎で盆暗(ぼんくら)学生として古本屋巡りや道場通い、同級生やサークル仲間との自堕落(じだらく)な飲み会に若き日々を浪費した己を顧みると、現代の学生達が不憫(ふびん)に思える。如何(いか)なる状況に置かれようが結局の所、器用に楽しめる者も有れば不器用に悩む者も居て、天然自然と何とかなったり如何(いかん)ともし(がた)かったりするのが青春と云うもので在り、(はた)から彼是(かれこれ)言う筋合いでも無いのだろうが。


9月26日(土曜)

 昨夕に阪神タイガースが「岩貞(いわさだ)祐太(ゆうた)投手・糸原(いとはら) 健斗(けんと)内野手・馬場(ばば)皐輔(こうすけ)投手・陽川(ようかわ)尚将(なおまさ)内野手が新型コロナ陽性」と発表。今季に新設された「感染拡大防止特例2020」に基づき、彼等4選手が一軍の出場選手登録を抹消された由。所属は二軍だが、20日まで一軍に帯同していた浜地(はまち)真澄(ますみ)投手の陽性も午前に報告されており、同日だけで合計5選手の感染が判明したが、更にスタッフ2名も追加。保健所から濃厚接触者と判定された選手等も加わり、合計10人の選手が一軍登録を抹消される事態となった。主力選手の一斉離脱を受けて、twitter上では「マジか…えらいこっちゃ」「どないすんねん!」等と虎党の悲鳴が響き渡った旨の報道有り。

 感染拡大防止特例2020、通称「特例2020」とは、選手が新型コロナウイルスに感染した場合や感染が強く疑われる場合、濃厚接触者と判定された場合、特例による登録抹消選手として公示し、代替選手を指名できる制度。後に感染が否定された場合は「通常の10日間を待たずに再登録可能」で「再登録によって抹消される選手は代替選手とは限らない」、「代替選手が抹消された場合、10日間を経ずに再登録が可能」、「通常の選手異動で抹消されていた選手が10日間を経ていなくても代替選手として登録できる」、「選手数や同一選手の特例適用回数制限を設けない」等の規定が有る模様。

 球団側は「個室、4人以内、2時間」、感染者が東京より少ない「名古屋と広島で」等の制限と指定日を設けた上で会食を認めていたが、7人の感染経路は不明ながらも会食が原因と推測されている。糸原氏、陽川氏、岩貞氏が感染したと考えられる会食には8人が参加しており、店を貸し切って他の客と接触しない状況では在ったものの、チーム最年長の福留(ふくどめ)孝介(こうすけ)氏と主将の糸原氏が共に規矩(きく)を破った形となる。球団の指示を守った浜地・馬場の両氏も感染してしまった事から、会食を認めた球団側の責任を問う声も出ている模様。前門の虎口(ここう)を脱せぬうちに、後門の狼に遭遇。COVID-19を軽んじるは危うき事、虎の尾を踏むが(ごと)しと言うべきか。


9月27日(日曜)

 本日未明に女優の竹内(たけうち)結子(ゆうこ)氏が死去。享年(きょうねん)40歳。週末の午前に何となく眺めていたテレビ画面に速報が流れた時は、自分よりも妻が驚いていた。(のち)の警察発表に拠ると前夜に家族と共に晩餐を(したた)めた後、午前1時50分頃に自宅寝室で縊頚(いけい)を図ったらしく、夫が発見した時点で既に意識は無く、搬送先の病院で死亡が確認された由。

 7月18日に30歳で亡くなった三浦(みうら)春馬(はるま)氏、今月14日に36歳で亡くなった芦名(あしな)(せい)氏。比較的若く仕事も順調と見られていた俳優が自死(じし)を選び、直前まで周囲が前兆や変調に気づかぬとの事例が相次(あいつ)ぎ、世間も動揺。竹内氏に関しては昨年2月に再婚し、今年1月に自身にとっては次男となる男児を出産したばかりの状況が有り、今月に発売された女性誌の記事では「仕事や家族、子育てに対して前向きな思い」を語る一方で「二度の出産で仕事を離れる事には不安が有りました」とも述べていた由。

 其の昔、彼女が主演した連続テレビ小説「あすか」は当時、泊まり込みの実習に訪れた山間部の病院でも大人気で、自分も年配の患者達も揃って観て居た。「店の存亡を賭けた和菓子作り対決」という大一番の刺客(しかく)として藤岡弘演じる行方不知(ゆくえしれず)の父親が現れ、「親子対決の挙句(あげく)に主人公が負けて店を失う」怒涛の展開に意表を突かれた記憶は今も鮮明。一部では産後鬱やコロナ鬱の可能性も指摘されている様だが、先ずは冥福(めいふく)を祈りたい。

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