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誘拐された勇者イリオス  作者: 常に移動する点P


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第6話・ギリアムの考察2

 シュレーは鈍い。とにかく、鈍い。見た目からして俺の方が鈍感だと思われがちだが、俺とナロウはエルフの血が入っている。ナロウは純血だが。


 ギリアムと言う名をつけてくれたのは、父だ。エルフの血が混ざっているとわからないように、あえて北海の蛮勇、ドワーフに多い名をつけてくれた。10歳で成人してからは、髭を生やし、とにかく体の至る所に筋肉をつけた。背中の脇下あたりの筋肉も鍛え上げ、それは鎧のようにもなった。


 おかげさまで、俺のことをハーフエルフと知っているのは、このパーティーメンバーだけだ。ナロウに打ち明けると、同族とは思えないと一笑された。


 父は勇者だった。勇者の剣が納屋に格納されているのは知っていた。呪い化されていることを知ったのは、五歳ごろだった。

 俺たちエルフは人間と比べて知能が高い。脳の活動領域を最大化、いつもフルスピードで回転しているかららしい。医学的には、脳内血管の太さと数が人間の何倍もということだ。


 五歳でも勇者の剣をとりまく、環境や状況は把握できた。父はある種族を根絶やしにしている。それもいくつも。


 勇者の剣は、呪い化が進行し、その耐性が無い子どもや老人なんかは、見ただけで死んでしまうほどらしい。父がエルフの村にやってきた理由はこの勇者の剣を結界で封印してもらうためだった。


 エルフたちは、勇者の申し出ということで快く引き受けたものの、結界の維持管理のために、エルフの娘と婚姻するようにと強制した。それが母だ。

 つまり、俺は勇者の剣を管理するために、生まれてきたようなものだ。父と母亡き今、本来の管理者であり所有者は、俺なのだ。


 勇者イリオスは、この勇者の剣を探していたと聞いた。本人からだ。呪い化された勇者の剣を手にしても、イリオスは顔色一つ変えることなく、受け入れていた。



なぜ?


 今だなお、わからない。なぜイリオスは呪われないのか? 俺はその理由を知りたくて、イリオスについて行ったようなものだ。


 魔毒のスレイディーが古代エルフ語で、最期振り絞って放った言葉

「イリオスガ…ワレワレヲ…コノ地ヘ、誘イ込ンダ」

 その真意はわからず。魔物を信じるわけではないが、故郷ガルフ村には魔毒スレイディーのような、魔力の強い魔物は近づけない。


 勇者の剣の結界の二次影響により、呪いを封じ込める副産物として魔物も近寄れないのだ。もしかしたら、イリオスはその結界のほころびを作り、スレイディーが入り込むように導いた?


 勇者の剣の結界を解唱させ、手に入れるために? だがなぜ、呪いの剣を。


 スレイディーの侵入とともに、現れたイリオス一行はあまりにもタイミングが良すぎる。どうしても、勇者の剣を手に入れないといけない理由。それは今日わかったのかもしれない。


 目の前にある、イリオスの剣。勇者の剣とは似ても似つかないが、あれはたしかに勇者の剣だ。父の剣だ。見覚えがある。


 手にすればわかる。


 ナロウがシュレーに口の動きだけで会話している。イリオスの剣に呪いが、やはり。


 俺は上下小刻みに身体を揺らし、斧を居合で抜く、とみせかける。アシュフォード王の警戒を高めさせる。警戒すれば、アシュフォード王は心理的に武器を手にしたくなるはずだ。イリオスの剣はうってつけだ。


 シュレーは何でそんな挑発をみたいな顔をしている。黒目が小さくなっている。頬が強張っている。やれやれ。


 掛かった。


 アシュフォード王がイリオスの剣をしっかりと握った。この部屋に入って2回目だ。即死ともならず、呪い化の傾向も見られない。これで、俺の確信は揺らがぬものとなった。


 整理する。


・目の前の「イリオスの剣」はニセモノだ。イリオスの剣ではない。

・イリオスの剣は呪い化されていないはずだ。

・この剣から感じる呪いは、父の剣・勇者の剣に間違いない。


 だが、見た目が全く異なる。


 そして、俺の仮説は


 あの剣は、勇者の剣だとする。見た目が異なることは一旦置いておくが。


 呪われている剣を手にできるのは、

・所有者(呪いの耐性ができている)

・大賢者(賢者の魔法を使って呪いを防げる)


 アシュフォード王は所有者でもないし、大賢者でもない。だとすると、最後の可能性はアレか。賢君とまでは評されていないものの、勇者たちを支援してきた数少ない王だ。まさか。


 目の前にいる男が、本当のアシュフォード王ではないとしたら? 俺は再び身体を小刻みに揺らす。見えない程の速さで。


 幸いにも俺はドワーフと思われている。斧の使い手、力持ち、猪突猛進型。いや、俺が魔法を使えないと思い込み過ぎだ。シュレーも、ナロウも、俺がハーフエルフだとわかっているのに。


 上下に身体を小刻みに揺らしているのは、居合斧のためだけじゃない。エンチャントを狙っている。武器に属性をつけるための魔法。炎のエンチャントは、刀身の刃先から、魔法が宿る。その一瞬だ。


 その一瞬を見極めればいい。俺は、そのタイミングをずっと狙っている。イリオスの剣の刃先はどこにあるのか?中央あたりから、炎が宿れば、イリオスの剣の中に、勇者の剣が埋め込まれていると思っていい。


 特大剣は、入れ子式で直剣が納められると聞いたことがある。剣の中をくりぬいて、もう一つの剣を入れ込む。だいぶと古いタイプの加工で、希少だと聞いた。東の魔女が持っていたものだ、ともかくイリオスの剣には秘密があるはずだ。


 目の前の剣は、イリオスの剣なのだろうが、中に「勇者の剣」が埋め込まれているに決まってる。俺はこれからそれを確かめる。


 しかし、ナロウが喉奥で詠唱しているのは一体なんの魔法なのだ。耳の奥に滑り込んでくるような、馴れ馴れしいねっとりとした音。


 ああ、あれは、古代エルフ語だ。シュレーは気づいているか?

 鈍いから無理か。クソ。ナロウ、何を考えてやがる!


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