第18話・カゲヤマの安堵
イリオスの剣による結界効果が、私と王を護ってくれたようだ。目の前で繰り広げられた戦いが一瞬で終わった。
女神の艶やかで生命力にあふれていた金髪は、一瞬にして灰色に。細い指や首筋は、紫色に。纏っていた白いローブはそのまま。
無血での戦いは、ギリアムが制した。
王は立ち上がり、忍びの方たちに命じて女神を捕獲させた。
ギリアムが勇者の剣を鞘に納めた。
「呪いは?」
私の問いに
「消えているようです」
汗が噴き出ているギリアムは、シュレーとナロウのもとに駆け寄る。
ナロウは疲弊していたようだ。
「ナロウ、喉奥でも回復魔法を詠唱していたんだな」
「まぁね。だって、ギリアム、回復魔法できないもん」
「だよね、私もわかってた」
シュレーがナロウを抱きかかえた。見えないわだかまりの氷が、急速に解けていった。
なるほど、ナロウが口頭・喉奥で回復魔法を同時詠唱したのか。
女神は規則に厳格だ。少女のような風貌ながらも、何千年も生きてきたのはこの執着心から育まれてきたのか。
自らが課した規則は、契約に関する者すべて。女神との契約不履行者には呪い。だが呪いは公平だ。その力を行使しようものなら、自分にも何らかの縛りが産まれる。そのひとつが、「契約者の誤認を赦さない」というものだろう。実際のところはわからないが。膨大な数の女神との契約者、その正しい把握が縛りとしてふさわしいと呪いが決めたのだろう。
呪いには意思があるのかもしれない。
明らかに女神は、ギリアムたちを格下と油断していた。二の手、三の手、奥の手を隠していたギリアムたちが勝ったのは必然かもしれない。
「勝てると思っていたのか?」
ねぎらったつもりだった。衛兵たちが玉座の間に押し寄せてきた。近寄るなと忍びの方たちの命に、忠実に従っていたようだ。
「どうかな。ただ」
「ただ?」
「イリオスは、俺たち3人に何かを期待していたはずだ。トリプルヘッド、あ、亜種のキメラだが、その戦いでも得られなかったものがあってな」
「なんだそれは」
「信頼よね」
シュレーがナロウに回復魔法を施す。ナロウの血色が戻り始めた。
「そう、俺たちは同じパーティーだったが、手の内は隠したままだったからな」
王は忍びの方に、女神を地下牢に幽閉するように命じた。牢の前には、イリオスの剣を置き、結界により女神を拘束させた。
「いま、どんな気分だ?」
「やっと、家族になったって感じかな」
ようやく汗が止まったギリアムに、
「ギリアムが弟だからね」とナロウが甲高い声で場を和ませた。




