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誘拐された勇者イリオス  作者: 常に移動する点P


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18/19

第18話・カゲヤマの安堵

 イリオスの剣による結界効果が、私と王を護ってくれたようだ。目の前で繰り広げられた戦いが一瞬で終わった。


 女神の艶やかで生命力にあふれていた金髪は、一瞬にして灰色に。細い指や首筋は、紫色に。纏っていた白いローブはそのまま。


 無血での戦いは、ギリアムが制した。


 王は立ち上がり、忍びの方たちに命じて女神を捕獲させた。


 ギリアムが勇者の剣を鞘に納めた。

「呪いは?」

 私の問いに

「消えているようです」

 汗が噴き出ているギリアムは、シュレーとナロウのもとに駆け寄る。


 ナロウは疲弊していたようだ。

「ナロウ、喉奥でも回復魔法を詠唱していたんだな」

「まぁね。だって、ギリアム、回復魔法できないもん」

「だよね、私もわかってた」

 シュレーがナロウを抱きかかえた。見えないわだかまりの氷が、急速に解けていった。


 なるほど、ナロウが口頭・喉奥で回復魔法を同時詠唱したのか。


 女神は規則に厳格だ。少女のような風貌ながらも、何千年も生きてきたのはこの執着心から育まれてきたのか。


 自らが課した規則は、契約に関する者すべて。女神との契約不履行者には呪い。だが呪いは公平だ。その力を行使しようものなら、自分にも何らかの縛りが産まれる。そのひとつが、「契約者の誤認を赦さない」というものだろう。実際のところはわからないが。膨大な数の女神との契約者、その正しい把握が縛りとしてふさわしいと呪いが決めたのだろう。


 呪いには意思があるのかもしれない。


 明らかに女神は、ギリアムたちを格下と油断していた。二の手、三の手、奥の手を隠していたギリアムたちが勝ったのは必然かもしれない。


「勝てると思っていたのか?」

 ねぎらったつもりだった。衛兵たちが玉座の間に押し寄せてきた。近寄るなと忍びの方たちの命に、忠実に従っていたようだ。


「どうかな。ただ」

「ただ?」

「イリオスは、俺たち3人に何かを期待していたはずだ。トリプルヘッド、あ、亜種のキメラだが、その戦いでも得られなかったものがあってな」

「なんだそれは」

「信頼よね」

 シュレーがナロウに回復魔法を施す。ナロウの血色が戻り始めた。

「そう、俺たちは同じパーティーだったが、手の内は隠したままだったからな」


 王は忍びの方に、女神を地下牢に幽閉するように命じた。牢の前には、イリオスの剣を置き、結界により女神を拘束させた。


「いま、どんな気分だ?」

「やっと、家族になったって感じかな」

 ようやく汗が止まったギリアムに、

「ギリアムが弟だからね」とナロウが甲高い声で場を和ませた。


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