第14話・女神、降臨する
イリオスは私に内緒で、イリオスの剣のレプリカを作った。そこまではいい、中を空洞にしてグレアムの呪われた勇者の剣を埋め込んだのも許す。
私が問題に思っているのは、本物のイリオスの剣はいったいどこにあるのだということだ。
勇者が自ら名を冠した剣を、女神は許すわけはない。魔王討伐に必要とするなら、多少は目をつぶっただろう。だが、もう魔王は、バルスはいないのだ。それなら、女神はイリオスの剣を奪い、破壊するだろう。
魔王を討伐したというのは、ほどなくして下々の魔法使いにまで伝わった。もちろん神々にもその功績は耳に入る。
だが、そこにひとつ落とし穴があった。神は地上には滅多に降りない。
奇跡を起こす時にのみ、神が地上に遣わされる。神の中の上位にいる女神は、この数千年地上には降りていない。
女神は魔王討伐をその目で確認していはいない。魔王が討伐されて、3年ほど経ったころ、魔王の気配を感じた。かつて、愛した男だったからか。私には感じられた。生きているのだ、魔王は、バルスは。
イリオスを問い詰めたかったが、私は魔王が生きているという事実に満足した。と同時にイリオスガ何かを企んでいることに気づいた。
魔王を討伐したとみせかけて、封印したのではないかということだ。そして、その封印が解けた。とはいっても、魔王たる気配はない。おそらく、おそらくだが、呪いが解けたのではないかということだ。
呪いが解け、勇者バルスに戻れたのなら、女神は気づかないはずだ。これもイリオスの策略か。
本物のイリオスの剣を奪うために、女神が地上に降りるかもしれない。イリオスは、何度も女神からイリオスの剣を返上するようにと言われているのにも関わらず、無視し続けているからだ。
アシュフォード王のもとに届いたイリオスの剣。あれはニセモノだ。ニセモノを女神が見抜けないだろうか。女神が降りてくるなら、必ず本物のイリオスの剣がある場所だ。
勇者の剣を埋め込んだニセモノのイリオスの剣は、呪いを発しているはず。女神は呪いを与えることはできても解呪できないため、敏感だ。
大気が揺れる音がする。部屋の窓が揺れ、扉の建付けが歪む音がする。家自体がギシギシと軋む。鳥たちが狂ったように、群れを成さずに飛び回る。迷走しているようだ。
私は慌てて外に出た。東の空が明るい。日没が近いというのに。あれは、アシュフォード王国の方角。
女神が降臨したのだ。空気がまだ震えている。普段静かな北の森が騒がしい。魔物が戦闘態勢にでも入っているのか。
本物のイリオスの剣は、アシュフォード王国にあるというのか、イリオス。




