第十話<早まる出現>-12
扉の先は、部屋というより工場の現場跡だった。
縦にも横にも広く取られた空間には、使い捨てられた重機が多く並び、
錆びた資材が積み込まれている。
いたるところに工具類も散らばっており、足の踏み場も気をつけないといけなかった。
どうやらここは金属加工の工場だったようだ。
所々窓ガラスも割れており、壁はボロボロだった。
雨漏りもしていたのだろうか、水溜りも残っている。
「何処か出口は?工場ならいくつかあるはず。」
周囲を見渡す琴和。そして壁際にゆっくり歩き出す。
「矢子ちゃん、光玉を変わりにお願いして良いかな?
私が飛んで探し回った方が早そう。」
櫻子がそう言うと、矢子は首を振る。
「いえ、私が壁を壊します。そこから出ましょう。」
「あ、じゃあそれをお願いしようかな。」
その提案を聞くと、一番手っ取り早く確実な方法と思い、
窓のそばで振り返りお願いをする琴和。
すると真っ青になった矢子の表情を見ることになる。
「琴和さん、逃げて!!」
突然叫びだす矢子。彼女の視線には外から窓に張り付くようにして
琴和をジッと見る顔が溶けた人の姿があった。
矢子の視線の先に気が付くとその方向を振り向く琴和。
すると外にいた人は壁をニュッとすり抜けて室内に入ってくる。
「なっ!?」
あまりにも恐ろしい姿に一歩下がる琴和。
その間に違う幽霊と思われる人の手が琴和の首を両手で締め上げる。
逃げる暇も無くつかまり、両足をバタつかせもがく琴和。
「琴和さん!!」
刀に手を当てて近づこうとする矢子。すると目の前に転がっている多くの資材が
突然宙に舞い上がり、そのまま床に落下する。
ホコリを舞い上げ破片を飛び散らからせて、矢子の行く手を阻む。
「きゃぁあああああ!」
突然叫びだす櫻子。矢子が彼女を見ると、緑色の手が何本も櫻子の手を引っ張っている。
そして自分の足首にも強く、冷たい感触で掴まれていることに気が付く。
慌てて視線を足に向けると、青白い手が一本地中から湧き出て
しっかりと右の足首を掴んでいる。
ゾクッとして息を呑むと、工場の奥のほうからおぞましい気配が近づくことに気が付く。
恐る恐る視線を移すと、二階で見た男性がゆっくりと床を滑るように近づいてくる。
首を絞められ苦しむ琴和、謎の手に拘束される櫻子。
そしておぞましい男性が近寄ってくる状況に矢子は恐怖心でいっぱいになる。
「うわああああああああああ!」
突然左手を天にかざしながら叫ぶ矢子。
すると彼女の手は黄金色の強い光を放ち始めた。




