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第十話<早まる出現>-11

会話をしていると、近くの部屋の中から固い木材同士がぶつかったような音が聞こえた。

音に反応して部屋を見ると、扉は開きっぱなしになっている。

「この中に逃げたのかな?」

「そうかもしれません。」

警戒して部屋に入る三人。

室内は広く50畳ほどあったが机やロッカー、その他何かの機材などが

倒れて混沌としており広くは感じなかった。


「荒れ放題だね・・・。」

周囲を見渡しながら琴和が話しかける。しかし矢子は何の反応も示さなかった。

「・・・。」

「どうしたの?」

矢子の様子を見ると、その場に立ち止まり何かの気配を探っているようだった。

表情は、少し不安さがにじみ出てているように見える。

「どう・・・したの?」

矢子の異様な雰囲気を見て不安になる琴和。その次の瞬間、背後から冷気に包まれた気配を感じ取った。

「何だ!?」

後ろを振り向く琴和、すると固まっていた矢子は扉の方向を慌てて振り向く。

「いけない!!」

「バタン!!」

扉が勢いよく勝手に閉まる。

「え!?」

驚く琴和。そして櫻子が声を上げる。

「あぁぁっ!!」

櫻子が見ている方を恐る恐る見る琴和。そこには部屋の奥で力なく立っている中年男性の姿があった。

彼の目は虚ろで、自分たちをジッと見ている。

「ゆ・・・幽霊?」

あまりにもおぞましい姿なので一歩後退する琴和。

目の前の男性は、人とは違った違和感を放っていたので

直ぐに幽霊だと分かったが、櫻子や街でたまに見かけるものとは異質なものであった。

体中に憎悪の念のようなものを突き刺してくる感じがする。

「いけない・・・この人は危ない。」

怯えたように何歩か後ろにさがる矢子。

それに反応したかのように、男性は床を滑るようにゆっくり近づいてくる。

「矢子ちゃん!!」

矢子の手を掴んで扉へ走り出そうとする琴和。しかしその時である。

「ガゴン。」

宙に浮き上がる粗大ゴミと化した机や機材。

そして二人を目掛けて飛んできた。

「うわあぁぁ!」

矢子の盾になるようにかばう琴和。そして『もうだめか。』と心に感じ目をつぶる。


「ガチャン!ガンガンガン!」

金属同士が強くぶつかり合う音が部屋に鳴り響く。

琴和は恐る恐る目を開けると、目の前では次々と空中で机と機材がぶつかり合っては落下している

光景が展開されている。

「逃げて!!」

櫻子が叫び訴える。どうやら櫻子が教えてもらったばかりの魔法で丁度いい機材をぶつけて相殺させたようだ。

琴和はうなずくと、矢子の手を引いて扉に向かいノブを回そうとする。

「開かない!?」

鍵は掛かっていないのだが、ノブが回らず扉が開かない状態だった。

「琴和さん、下がって!!」

掴まれた手を引いて、琴和を扉から下がらせる矢子。そして左手を扉に向ける。

「心波!!」

手が青く光ると閃光になって扉を突き刺し破壊する。それを確認すると櫻子は

周りにある機材を全て宙に浮かし始めた。

「ごめんなさい!」

櫻子は全ての機材を男性に向けて飛ばすと琴和たちに近づく。

「早く逃げましょう!!」

その言葉を合図に部屋から飛び出す三人。すると近くの窓ガラスが震え始める。

「ガシャン!」

「キャァッ!」

来た道を走って逃げようとしたのだが、窓ガラスの横を通った瞬間ガラスは割れて内側に破片が飛ぶ。

それに驚いたのか矢子は一瞬足を止めて怯むが琴和が腕を引っ張る。

「止まっちゃ駄目だ!走るんだ!!」

再び走り出す二人。窓ガラスは通る瞬間に次々と割れて、破片が体に当りそうになる。

「クソ!何なんだよ、アイツは!!」

後ろを気にしながら走る琴和。すると櫻子は後方で飛びながら前を指差す。

「小田原さん、あれ!!」

目の前には階段の付近に先ほどの猿の怪物がこちらに睨みを利かせている。

「うおおおおお!」

矢子の腕を放して一人先行して飛び出す琴和。

すると怪物は首元を狙って飛び掛ってくる。

「でやぁ!!」

怪物の顔面に目掛けて飛び膝蹴りを決める。

しかし決定打にはならず、

怪物は廊下に叩きつけられるが直ぐ起き上がった。

「足を止めないで!!」

櫻子はそう叫ぶと、窓ガラスの破片を宙に浮かして怪物目掛けて飛ばす。

するとガラスのつぶては怪物に刺さり怯ませることができた。

今なら怪物を仕留められると思ったが、不気味な幽霊の事もあり

今は階段を駆け下りる三人。焦る気持ちも強く、

階段を降りる動作がとてももどかしく感じる。


一階に着くと、来た道を振り返り確認することも無く、

そのまま出口に向かって走ろうとする。

「待って!!」

急に櫻子が呼び止める。

「どうしたんですか!?」

振り返る琴和。その時である。

「ズガーッ!」

音に反応し、慌てて出口の方を見ると、

そこには天井が崩れ落ちる光景が展開されていた。

「こっちの扉を!!」

自分たちが入ってきた道を閉ざされたので、仕方無しに

初めに進む方向として選ばなかった扉を開ける。


扉は重かったが、力いっぱい押し込むことで何とか開くことが出来た。

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