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第九話<夕食>-6

テーブルに皿を並べる琴和。

料理が出来上がり、食べる準備を始めている。

蘭子たちもゲームを止めて作ったものを少しずつ運んでいた。

「甲子郎さん遅いね。」

蘭子が味噌汁を温めながら話しかけると、琴和が反応をする。

「ああ、少し遅れるから食べていてくれってメールが着たよ。」

「そっか。じゃあこれ運んでくれる?」

矢子にお皿を手渡す蘭子。

「はい、くすの・・・蘭子さん。」

慌てて言い換える矢子。すると味噌汁をかき混ぜながら蘭子が言う。

「昨日、禦の女の子が良いコト言ってたわぁ。

呼ばれ方によって人の親しみ方が変わるんだって。

だから親しむために私の事は蘭子さん。OK?」

そう言うと、矢子はコクコクと首を縦に振る。その様子に笑顔の蘭子。


テーブルの前では琴和が準備をしている。

そこに矢子は皿を持ってきたわけだが、

何処に置いていいか分からなかった。

そこで琴和に尋ねることにする矢子。

しかしその時に、今蘭子が言ったことが頭に過ぎる。

そして一瞬考えた後に口を開く。


「あの、琴和さん、これは何処に?」

「え?」

急に名前で呼ばれて戸惑う琴和。

その様子に矢子も戸惑ってしまう。

「あ、あの私何か!?」

すると蘭子がドカドカと近寄ってきて琴和の肩を抑える。

そして力押しをする笑顔で話しかけてきた。

「そんな事ないよね、琴和君?」

「ちょ、お前。」

その時、スッと矢子の表情が視界に入る。

その心配そうな表情を見ると、何も言えなくなってきた。

「いや、何でもないよ。」

そう言って皿を受け取ると、蘭子は鼻歌を歌って台所に戻っていく。

『まあいいか』

その様子を見て、再びそう思う琴和であった。



配膳が終わると、三人はテーブルの前に座る。

「美味しそう。」

櫻子がそう言うと、蘭子は自分の分を皿に分けて

彼女の前に供える。

「じゃあ甲子郎さん来ていないけど食べようか。」

琴和がそう言うと、箸を持つ矢子。

すると蘭子が思い出したかのように言う。

「あ、醤油持ってくるの忘れた。」

「ああ、待っててね。」

立ち上がり、醤油を取りに行く琴和。

その間、矢子はジッと目の前の食事を見つめている。

どうやらお腹が減っているようだ。

彼女の様子を見ると思わず微笑んでしまった。

しかしその時である、琴和は矢子に気を配っていたために

足元の段差に気が付かず転んでしまった。

そして宙を舞う醤油。

「あ!!」

櫻子が声を上げた時には、醤油ビンは中身を蘭子に撒き散らしていた。


「・・・・・琴和君?」

静かに話しかける蘭子。その時琴和は恐怖しか感じ取ることが出来なかった。

「ちょっと何するのよ!!」

「ゴメンゴメンゴメンン!!」

ただひたすらに謝る琴和。

「あの、これを。」

矢子が布巾を手渡すと必死にふき取る蘭子。しかしシミになった醤油は

取れそうも無い。

「あーもう落ちないじゃない!!」

そう騒いでいると、扉が突然開く。


「何だぁ?随分と騒がしいじゃねぇか。」

入ってきたのは甲子郎だった。頭をかいて楽しそうに見ている。

「ちょっと聞いてくださいよ、琴和君が醤油を掛けてくるんです!」

「掛けてくるって、わざとじゃないだろ!」

その様子を見てにやける甲子郎。

「おいおい、それは重罪だな。」

「そうですよね!!」

そうやり取りをしながらテーブルの前に座る甲子郎。

「よし、とりあえず飯をくれ。」

二人が騒いでいる中、マイペースにそう言うと、

矢子がお茶とご飯と味噌汁を持ってくる。

「あの、これを。」

「お、すまねえな。」

何食わぬ顔でそれらを受け取ると、味噌汁に手をつけ始める甲子郎。

「・・・本当に上手いな、こいつの料理は。」

そう言うと矢子を見る。

「お前も食ってみろ。」

すると味噌汁に手をつける矢子。そして黙ってコクコクと首を縦に振る。

「何だ、アンタもお供えして貰っているのか。」

櫻子の前の魚を見て甲子郎が話しかける。

「はい、とても良くしてもらっています。」

「そうか、それは良かった。というかお前らうるせえ!」

部屋に入ってから、ずっと言い争っている琴和の頭をコツンと叩く甲子郎。

「痛!何するんですか!!」

「いいから食え!」

甲子郎の拳でようやく言い争いが終わると、琴和は不機嫌になる。

「食べますよ、もう!」

そういうとガツガツと食べ始める琴和。

蘭子も服をあきらめて食べ始める。

その様子を時々窺いながら、矢子は黙々と食べていた。


皆が食事をようやく始めたところで、櫻子が矢子に話しかける。

「賑やかな食事っていいでしょう?」

すると矢子は手に茶碗を持ったまま固まって、少し照れたまま

軽くうなずくと、また箸を動かし始めた。

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