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第九話<夕食>-5

「ピンポーン」

部屋にドアベルの音が鳴り響く。

扉を開けると、そこには矢子の姿があった。

「えっと、あの、その・・・。」

慌てる矢子の姿を見ると、来てくれたという安心感から

思わず笑顔がこぼれる琴和。

「いらっしゃい。」

そう言うと部屋に案内をする。

「お邪魔します。」

小さな声で恐る恐る入る矢子。


「ほら、矢子ちゃん来たよ。準備しよう。」

琴和が蘭子に話しかける。

しかし蘭子はそのまま動こうとはしなかった。

「ちょっと待って、今いいところなの!」

先ほど始めたゲームが予想以上に面白かったようで

ずっとやりこんでいる状態だった。

その様子に琴和は軽くため息をついて苦笑いをする。


「とりあえず矢子ちゃん、これにコート掛けて。」

ハンガーを渡す琴和。するとPコートを脱いで掛ける矢子。

「あ、それひょっとしたら昨日貰った服?」

服の雰囲気が違うと気が付いたので聞いてみると、「はい。」と

答える矢子。

「あの、変でしょうか?」

不安そうに矢子が聞き返してくる。

「そんなこと無いよ。とっても似合ってる。」

にこやかに琴和が答えると、櫻子も笑顔でうなずく。

その反応を見ると、少し恥ずかしそうにして蘭子の方を向く矢子。

しかしその時だった、高速で矢子に飛び掛る

一つの影が迫ってくる。


「やーん、カワイー!」

矢子を抱きしめる蘭子。影の正体は蘭子であった。

「ちょ、ちょっと楠木さん!?」

もがきながら抵抗する矢子。すると、蘭子はぴたっと止まる。

矢子が一歩下がると、すかさず両肩をガシっと手で掴む蘭子。

「私の事は蘭子!いいわね?」

座った目で言うと、矢子はただ首をコクコクと縦に振るしか出来なかった。

それを見ると笑顔になる蘭子。

「よし、そうと決まればゲームをしよう、丁度一人じゃ倒せない敵だったんだよねー。」

そう言うなり、矢子の手を引いてテレビの前に連れて行く蘭子。

それを見て慌てる琴和。

「おいおい、飯は!?」

「あ、あと魚を焼くのと味噌汁温めるだけだからお願い。」

「・・・マジか。」

大人しく調理を始める琴和。

それを見て矢子は戸惑う。

「あの、私もお手伝いを・・・。」

「いいのよ、台所は狭いから一人のほうが効率上がるの。」

「そう・・・なんですか?」

「そうそう。」

そして再びゲームを始める蘭子。矢子にもコントローラーを渡して

とても楽しそうである。

その様子を見て、『まあいいか』と思う琴和であった。

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