第八話<関わりを深めて>-6
「何で黙って行くワケ?」
現在地は蘭子の家の前の公園。
琴和に詰め寄っている蘭子は物凄く不機嫌そうだった。
「櫻子さんが中々帰ってこないと思って電話したら、まさか
矢子ちゃんと見回りをしているなんてねぇ!」
「いや・・・夜に連絡したら悪いかなと。」
「昨日もっと夜遅くに家に着といてそれは無いでしょ!」
反撃の出来ない琴和。その様子を見て櫻子が仲裁に入る。
「あの、蘭子ちゃん。小田原さんも悪気があったわけじゃ・・・。」
「櫻子さんは黙ってて!」
「・・・はい。」
瞬殺される櫻子。その中で矢子が話しかける。
「あの・・・やっぱり私、一人で回ります。」
すると蘭子は制止をする。
「いや、矢子ちゃんは悪くないのよ。
悪いのはこの人なんだから。」
蘭子の迫力に琴和はただたじろぐ事しかできなかった。
「そういえば矢子ちゃん、晩御飯は食べたの?」
唐突に話を切り替える蘭子。
「いえ、特には・・・。あ、でもいいんです、昨日もご馳走になったし!」
蘭子が次に言う言葉を昨日の経験から察知した矢子は
初めから食事はいらないと拒んだ。
すると蘭子は無理強いは良くないと思い今日は引き下がることにする。
「そう、分かった。」
そう聞くとホッとする矢子。すると櫻子は質問をする。
「そういえば今日お昼は何食べたの?
左手が痛かったら苦労したんじゃない?」
「お昼はレトルトのカレーを食べました。」
「ああ、それなら簡単に作れるね。じゃあ朝は?」
琴和が話しに混じると矢子は答える。
「あ、いえ朝は食べませんでした。」
その答えが出た時である、蘭子は矢子を見つめる。
「そんなんじゃ駄目よ!今日は全然食べてないじゃない!」
「え!?え!?」
戸惑う矢子。すると蘭子は琴和に話しかける。
「やっぱ今日は私行かない。
その代わり今からご飯作っておくから
23時過ぎたら矢子ちゃん連れてきて!」
「あ・・・ああ、分かった。」
「そんな、私はいいで・・・!」
断ろうとする矢子だったが、蘭子の座った目を見ると
どうしても断りきれなかった。
それを確認すると、蘭子は携帯を取り出す。
そして琴和たちに背を向けると電話をし始める。
簡単に事を済ますと、琴和たちに話しかけた。
「今甲子郎さんにも連絡をして二人と一緒に回ってもらうようにしたから。」
「え?」
「だって私が抜けるんですもの。二人じゃ心配でしょ?」
「え・・・いや、まぁ。・・・うん。」
何か言ったら、また怒られると思った琴和は、大人しくうなずいた。
「それじゃあ気をつけてね。行こう、櫻子さん。」
そう言うと蘭子は家に帰ろうとする。
その後二人の背中を見送ると、珍しく矢子から会話を振ってきた。
「・・・押し負けちゃいますね。どうしても。」
「うん・・・。」
甲子郎との待ち合わせもこの場であったこともあるが、
蘭子の迫力のせいか、二人はしばらくその場で固まったままになっていた。




