第七話<お武家様>-10
「これで一先ず平気かな?」
部屋に戻り、早速手当てをする蘭子。
「・・・すみません。」
小さい声で礼を言う矢子。その様子を見て蘭子は小さくため息をつく。
「そうだ、瀬戸さんって傷を治す魔法とか使えないんです?」
「あーそんな便利なものは出来ないな。」
顔を歪めて答える甲子郎。
「そうですよねぇ、出来たらとっくにやってるでしょうし・・・。」
そう言うと、蘭子は引き出しに向かう。
「ほら、男は外に出て。」
「え?」
驚く琴和を目を細めて見る蘭子。
「その子、服が土だらけでしょ。それに袖も切れて無くなっているし、血も付いているじゃない。
一回り大きいかも知れないけど、私の服に着替えてもらうから。」
今までは暗くて気がつかなかったが、確かに服のいたるところに
土汚れがついていた。怪我をした部分に関しては
袖全体が切り取られたようだった。
おそらく琴和たちがたどり着く前の戦闘時にそうなったのだろう。
「ああ、了解。行きましょう瀬戸さん。」
「んあ?ああ、それよりお湯が沸いているぞ。」
玄関に向かう途中にコンロに仕掛けておいたお湯が沸騰していることに気がつく甲子郎。
「あー小田原さん、火を止めておいて。」
「OK。」
そう言うと琴和は火を止めてから甲子郎と共に外に出た。
「いえ、そんな!私はこれでいいです。」
一方矢子は予想通り遠慮をする。しかし蘭子は、お構いなく自分の服を取り出す。
「え?ええ!?」
驚く矢子。彼女の前に出されたのはピンク色のノースリーブのセーターに白いミニスカートだった。
「お年頃なんだから、そんなジーパンにトレーナーじゃなくって、オシャレしないとね。」
「ちょっと蘭子ちゃん、この時期にその格好は寒いんじゃないかな・・・?」
櫻子が話しかけると蘭子はすかさず返す。
「いいんですよ、見た目重視!!」
「あの、私やっぱりいいです・・・。」
たじろぐ矢子。
「ダメ、その格好でいられたら部屋が汚れるでしょ!」
「・・・。」
蘭子の押しに負けて、矢子はしぶしぶ着替え始めた。
「何であの場所にいたんだ?」
玄関の外で甲子郎が琴和に話しかける。
「・・・蘭子の部屋から昨日のコウモリが見えた時に考えたんです。
もし、僕たちみたいに禦とも村雲とも関係ない人が
襲われていたらどうしようって。
そして僕たちならどうにか出来るのに、あのまま見て見ぬ振りしていいのかって。」
「その結論があの結果か。」
「ええ、すみません。」
そういうと微笑する甲子郎。
「いや、俺は好きだぜ。その考え方。」
「そうですか。」
照れるようにうつむく琴和。
「ところで、あの子は一体?やっぱり瀬戸さんが追っているお武家様ですか?」
話題が変わると、甲子郎は腕を組んで返す。
「なんでそう思うんだ?」
「日本刀を持っていたので、そう思ったんですよ。」
「確かにあの小太刀を見れば分かっちまうか。」
「そうなんですね?」
「ああ。ただそれについては部屋に戻ってから話そう。
あっちのお嬢さんも気になっているだろうしな。
ちなみに俺も今日になって初めて知ったことだ。
何でも村雲がらみだったらしい。」
「村雲・・・ですか。まあ詳しいことは後でですね。」
「ああ。」
「そう、後一つ。さっき早間さんって言ってましたけど、
それって前に会ったあの人ですか?」
「ああ、そうだ。まあいいだろう、教えておく。
アイツは村雲の人間だよ。」
「そうだったんですか。」
「そう、実に面倒くさい奴だよ。」
「ははは・・・。」
そうやり取りをしていると蘭子がもう入っていいよと扉を開ける。
「もういいの?」
「ゴメンね、寒かったでしょ?」
「いや、平気だよ。」
軽く笑顔で答えると、二人は部屋の中に戻っていった。




