第七話<お武家様>-6
「何かいいことあったのかい?」
20歳前半の青いYシャツを着た
爽やかそうな雰囲気の男性が旭に話しかける。
「え、いや・・・何でそんなこと聞くの?」
「嬉しそうな顔してるからだよ。」
「そんなこと・・・ない。
それより修也さん、嘉島さんは何処にいるの?」
すると修也は目に掛かりそうな前髪を少し横に払い、
時計を見る。
「そうだね、今頃は九州に着いたくらいかな?」
「え?福岡に行っているの?」
驚く旭を見て修也は眼を丸くする。
「あれ?知らなかったの?」
「知らない・・・。」
「そうだったんだ。郁葉様からの呼び出しがあったらしいよ。
何でもチャージャに関しての話もあるらしい。」
「チャージャが?」
「そう、だからてっきり旭も一緒に行くのかと思ってたんだけどね。」
「何で教えてくれなかったんだろう・・・。」
「明日には戻ってくるからよ。」
旭がぼやくと、後ろからスポーツ刈りの男性が話しかけてくる。
耳には金色でリング状のピアスを着け、レンズの小さな色メガネを架けている。
黒いスーツから覗くワインレッドのシャツは独特の雰囲気を出していた。
「門井さん、来ていたんですか!?」
「久しぶりね、水瀬君。旭ちゃんは最近会ったばかりよね。」
「何で門井さんがここに?九州にいるはずじゃ?」
旭が驚いたように質問をすると、近くの椅子に腰をかける門井。
「そうねえ、人手不足という理由かしら。こっちは大変なんでしょう?」
窺うように修也を見つめる。
「いえ、まだ行動を起こし始めたばかりですから、そこまでは。
これからですよ、本当に大変なのは。」
修也が軽く首を振ると旭は門井の前に移動する。
「人手不足で来たということは、しばらくはここにいるんですか?」
質問されると、門井はメガネの下から、にこやかに答える。
「ええ、しばらくお世話になるわね。」
「歓迎しますよ。」
修也が手を差し出すと、握手をする門井。そして質問をする。
「今日もまたヤンカを放つの?」
「ええ、その予定です。」
修也が答えると旭は二人にさりげなく質問をする。
「ねえ、ヤンカの術って完璧なのかな?」
「どういうこと?」
「本当に禦と村雲だけ狙うようになっているのかな?
例えばさ、一般人を襲うことってないのかな?」
そうすると、門井は腕を組んで答える。
「そうね、実は一般人を100%襲わないかというと
答えはNoなのよね。」
「え!?」
その答えを聞き驚く旭。修也も少し動揺したようだ。
「あの術はね、異能の力を持つ者を襲うように仕組んでいるのよ。
人では異能の力を感じることは難しいけど、動物の感性ならばそれが判りやすいわけ。
それを利用しているのよね。
そして異能の力を持つ者なんて禦か村雲くらいだから
今は実用しているのよ。
でも、仮に一般人でそれなりに異能の力を持っていたら
襲われてしまうわね。」
その答えを聞くと旭は黙り込んでしまった。
琴和がまさにそのケースに当たるからだ。
しかし、今琴和の存在を知らせると、
自分が昼に重要な機密を話したことがバレかねないと思い
どうしても言い出せなかった。
そして同時に琴和が異能の力を持っていることを確信することとなった。
実際のところ、そのような風には感じなかったのだが、
門井の話からすると、何かしらの力を持っているということが分かった。
琴和自身よく分かっていないことは昼に経緯を聞いていた時に理解したので、
教えてあげようと一瞬思ったが、係わり合いをこれ以上持ってはいけないと考え、
黙っていようと心に決めた。
「どうしたの?旭ちゃん。」
旭の様子に気がついた門井が表情を窺うと、旭は笑顔で返した。
「いえ、なんでもないです。それより今日も私は作戦に参加をします。
そろそろ準備を始めますね。」
そう言うと、逃げるように旭は自分の部屋に向かった。




