第七話<お武家様>-3
「今晩、家を尋ねるよ。・・・と」
14時が過ぎた頃に、琴和は街を歩いていた。
昨夜、聞かされたことが頭から離れず
気分転換に散歩をしていたのだった。
甲子郎の話は、どの部分を取っても
理解したような理解できないようなもので、
考え出したらきりが無くなってきていた。
そして不安のようなもののせいか、落ち着かなくなっていた。
それは蘭子も同じのようで、
『昨日聞いた事ってホントかな?』
というメールが昼前に届いてから
ずっとメールでのやり取りが続いている。
そこで琴和は、直接会話をした方が
お互い落ち着くのではないのかと考え、
夜に尋ねることにした。
また、甲子郎が言っていた
『22時には出歩くな』
という話を守って家にいても、もし
家の中にまで怪物が侵入してきたら危ないのではないかと思い、
ガードマンという意味で、その時間には
蘭子の家にいた方が良いと考えた。
そこで、返事がてらに家に訪問する旨を伝えると、
とりあえず携帯をしまう。
街の様子はいつもと変わらなかった。
忙しそうに歩き去る人々、
建物を見ると、多くの店が賑わっており、
道路には車が次々へと走り抜けていく。
子供たちが自分の横を走り過ぎていくと
クレープ屋の甘い匂いが鼻に入る。
本当に毎日怪物が現れているのかと疑うくらいに
人々は何も知らない様子で過ごしている。
それを見ると、自分は夢でも見ているのではないかとも
感じられていた。
しかし、その直後に夢ではないと実感させられる人を目撃してしまった。
昨日、自分たちの目の前に立ちふさがった少女が
目の前にある噴水の外枠に腰をかけていた。
こちらには気づいていないようで、ただ空を見上げているだけだった。
甲子郎の話では彼女はカザーバの者ということだ。
それは、あの怪物たちを解き放っている集団であるということになる。
しかし、琴和には目の前の少女に恐怖心を抱けなかった。
むしろ、何故あのような怪物を作り出しているのか、そして
彼女自身について聞いてみたいと思っていた。
このまま近づいたら危険かもしれない。
そう思いつつも、自分は禦でも村雲でもないので
大丈夫じゃないかとも思った琴和は、聞きたい事を抑えきれずに
少女のそばに近寄った。
「こんにちは。」
「!?」
笑顔で少女に挨拶をする琴和。
すると驚きの表情を見せる少女。
そして素早く立ち上がり、身構える。
その様子を見て琴和は慌てて話を切り出した。
「あ、安心して。僕は禦でも村雲でもないから。ただの一般市民だよ。」
「・・・一般市民がなんで禦と村雲を知っているの?」
「昨日聞いたんだよ。あの銀髪の人覚えているよね?
あの人が教えてくれたんだ。」
警戒を解くために、琴和は温厚に話しかけていた。
すると、少女は身構えるのをやめる。
「じゃあ教えて、何で昨日あの場所で戦っていたの?」
琴和はじっと見つめられると、苦笑いをする。
「それについて聞きたいのは僕の方なんだよ。
あの怪物を作っているのは君たちなんだよね?
何で僕を襲うんだい?一体僕が何をしたんだ?」
キョトンとする少女。その表情は警戒から困惑に変わっていた。
「あなた、本当に一般人だったの?」
「そうだよ。」
そう答えると、少女は右手で自分の左腕を掴んでうつむく。
「・・・そうだよね、じゃないと昨夜、銃を向けられた時に助けるはずないし、
今だって不意を付いて捕まえられたもんね。」
警戒が解けたことを確認すると、琴和は一つ提案をした。
「えっと、今は時間平気かな?
色々聞きたいことがあるんだ。でも立ち話もなんだから
喫茶店でお茶でもどう?おごるからさ。」
困った表情になる少女。それを見るなり慌てて琴和は話しかける。
「あ、確かに名前も知らない男についていくのは変な話だよね。
僕は小田原琴和。君は?」
すると、少女は物凄く驚いた眼差しを琴和に向ける。
「え?どうかした?」
その様子に琴和は少し驚くと、少女は首をブンブン振った。
「いえ・・・何でもない。
・・・二ノ宮 旭」
「そう、いい名前だね。じゃあ近くのお店に行こうか。」
笑顔で答えると、旭は軽くうなずいた後、横目で琴和を見つめた。




