第七話<お武家様>-2
「報告書を読ませてもらったわ、ご苦労様。」
局長室に二つの人影があった、
甲子郎と麗華である。
ゆっくりとした口調で麗華が話しかけるが、甲子郎は
特にリアクションをせずに、姿勢を正して立っているだけだった。
「今日はリアクションは無しなの?」
麗華は椅子を90度回転させて、試すような横目で見ると、甲子郎はようやく口を開く。
「回りくどいことは辞めましょう。聞きたいことがあるのでしょう?」
「あら、判ってるじゃない。」
椅子を正面に戻すと、手を合わせる麗華。鋭い視線は甲子郎に向けられる。
「何で、二人をそのまま帰したの?」
「一般市民と判断したからです、今のところは。」
「じゃあ何故、禦のことを話したの?」
「必要と判断したからです。」
「禦のことを知った時点で「一般」では無くなることは
貴方も知っているでしょう?」
すると甲子郎は局長と目を合わし、説明を始める。
「確かに、通常ならば彼らを保護するべきでした。
しかし、彼らは謎が多すぎます。
例え厳重なセキュリティのある施設とはいえ、禦の関連施設に
近づけることは少々リスクがあるかと。
ですが、彼らの様子を見ると、本当に何も知らない
一般市民のようでもありました。
正直なところ、人によっては危険性を感じないといっても
過言ではないくらいです。
そこで自分の考えとして、
今後、交流を続けて少しずつ彼らのことを探ろうかと。
幸い、彼らが芝居をしていなければ
自分を頼ってくると想定できるので、交流はし易いでしょう。
そのためには禦や村雲、そしてカザーバについては
軽く知ってもらう必要がありました。
一方、仮に芝居をして自分を、または禦に対して
何か企んでいても、自分との交流は必須なので
接触は容易です。
どちらにせよ、彼らのことをじっくりと探れる形を取りました。」
甲子郎が話し終えると、麗華はそのまま動かず一言尋ねる。
「彼らを探ってどうするの?」
「・・・いずれは保護をする必要があると考えます。」
甲子郎がそう言うと、麗華は軽くうなずいた。
「判ったわ。任せることにします。
じゃあ次の用件よ。」
一枚の紙を差し出す麗華。
「え?」
ビクッとした後に固まる甲子郎。鳥肌が立ったことに気が付かないほどの驚きだった。
「やっぱりそうなるわよね、その写真。
私も目を疑ったわ。でも今まで会った事のない人よ。」
「・・・これは?」
驚きの収まらない甲子郎を見ると、麗華は目をつぶりため息をつく。
「お武家様の正体よ。実は村雲の人間だったなんてね。
少し事情があるようだけど、管理仕切れていなかったなんて
間抜けな話よね。」
麗華が話をする中、甲子郎は資料に目を通す。
「こいつが!?・・・準局員?どういうことだ?」
「あら、いきなり肩書きに気がついた?」
「それどころじゃないですよ、どこから突っ込んでいいか
判らないくらいですよ、この資料は。
この人物が自分の追っていた者とは考えにくいです。」
「まあ琳の例もあるし、ありえなくはないと
理解するべきかしらね。」
「・・・これは早間からの資料か。」
「聞いてみる?」
「当然です。」
勢いよく部屋から出ようとする甲子郎。
「待ちなさい、まだよ。」
その声に反応するように立ち止まる甲子郎。
振り向いて目を合わせると、立ち上がる麗華。
「これより、お武家様の捜査任務から
この地域におけるカザーバの行動の調査に変更よ。
といっても、しばらくは自分の思うとおりに動いていいわ。
不思議な二人組みのこともあるでしょう?」
「了解、でもお武家様については
もう少し探らせてもらいますよ。」
そう言うと、甲子郎は部屋を出て行った。




