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第一話<見えない櫻>-5

「ちょ、ちょっと!!」

「シーっ!!お願い大きな声出さないで!この人の事、

周りの人には見えてないから!」

「はぁっ!?」


突然の事で琴和も慌てだす。

だがそれ以上に慌てている女性が小声ながらたたみ込む様に

琴和にそう話しかけていた。


『何を言っているんだ?一体何なんだ、この娘は?』

言葉は出なかったが、頭の中でそう思う琴和。

挙句の果てには、やばいのに絡まれたとまで思うほどだった。


「あ、席はこちらでよろしいのでしょうか?」

慌ただしい場面にウェイトレスが水とおしぼりをトレイに載せて持ってきた。

どうやら忙しいながらも琴和のために持ってきたのであろう。


「あ、ええ、この人が待ち合わせをしていた人なんです。お水はそこに

置いておいてください!」

「ちょ、ちょっと!?」

「そうだ、ホットコーヒー二つ急ぎで追加をお願いします!は、ハハハハハ。」

琴和の台詞をかき消すかのように喋りだす娘。

怪しさ満点である。


「か・・・かしこまりました。」

ウェイトレスはその勢いに押されたのか、騒ぎに関わっている暇はないのか

戸惑いながらもその娘の言うことを聞くことにしたようだ。

そして席を後にしようとした時のことである。


ウェイトレスは何か思い出したかのように自分の持ってきた水とおしぼりを

琴和の目の前に置いた。

「新しいお水をお持ちしたので、先ほどのものと

交換いたしますね。」


そう言うと、ウェイトレスは黒い服の女性の目の前にある

水とおしぼりをトレイの上に下げはじめた。


「え?」

思わず疑問系の琴和。そしてその時、

目の前の黒い服の女性が物凄く悲しそうな表情に

変化したことに気が付いた。

もうこの世の終わりなのではないかと思うような顔である。


「あああああ、えっとこの人、水いっぱい飲むから

それも置いておいてください!!」

白い服の娘がウェイトレスに飛び掛るようにお願いをする。

その様子にウェイトレスも驚き、声も出せずに

ただうなずき、下げた水を琴和の前に置いた。


「そ、それじゃぁコーヒーお願いねぇ、アハハハハ・・・」

追い返すように話しかける白い服の娘。

ウェイトレスはそそくさとその場を離れた。


その姿が遠のくことを確認した後、返却された水を

黒い服の女性の前に戻す娘。


「大丈夫、大丈夫。誰もあなたの水を取ったりしないから。」

慌てながらも笑顔で話しかける娘。

すると黒服の女性は笑顔になった。

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