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第六話<仮面>-10

「寒いか?」

琴和たちは、近くにある公園のベンチまで移動していた。

甲子郎はベンチ付近で一度しゃがみ、地面に手を付くと、

近くに集まれと言った。

すると、冬の夜だというのに、不思議と寒さは感じなかった。


「いえ、何か運動後のせいかそうでもないです。」

蘭子がそう言うと甲子郎はニヤッとした。


「瀬戸さん、一体貴方は何者なんですか?」

琴和が話を切り出す。その顔は少し怖いものがあった。

その表情をジッと見つめる甲子郎。

そして再び空を見上げた。

「ジャーナリスト、って言っても信じてもらえないよな。こんなの持っていたら。」

ベンチに座りながら、懐にある銃を見せる甲子郎。

「脅しているつもりですか?」

琴和がそう聞くと、甲子郎は前かがみになって首を振る。

「いや、そういうつもりじゃないんだ。

・・・そうだな、こうしよう。俺も素直に話そう。

だからお前たちのことも素直に話してくれないか?」


甲子郎が提案をすると、蘭子は琴和を見た。

すると首を縦に振る。

「分かりました。」

その言葉を確認すると、甲子郎は両手を組んで話を始める。


「お前たち、怪物退治はこれで何度目だ?」

そう聞くと、三人の表情は驚きと戸惑いでいっぱいになった。

それを確認すると、甲子郎は話を続ける。

「4つ目だか、角が生えたかの犬。

巨大な翼の鳥、肩から尻尾が生えた白と黒の犬。

そんなものか?」

その言葉を聞くと、三人は更に焦ってしまった。

「何で知っているんですか?」

思わず蘭子が問いかけると、甲子郎は答えを返す。

「そういうのを取り扱っている機関の人間だからだよ。」


「え?」

「実はな、この世の中って世間一般で言われている

科学で証明できないものというものが多く存在しているんだ。

お前たちも見たから、信じるだろう?怪物の存在や、幽霊の存在を。

それだけじゃない、呪術、超能力、魔法、言い方は何でもいいが

そういうのだって存在する。

俺はそれらに関連した事件を取り扱う機関の人間なんだ。」


甲子郎のあまりにも現実味の無い話に唖然としてしまう琴和と蘭子。

しかし、実際怪物や幽霊の存在は確認しているので、信じられなくは無い話ではあった。

「さっき禦って言ったよな?

それは俺が所属している機関の名前だ。」

「禦って、機関の名前だったんですか?」

そう琴和が言うと、甲子郎は話を続ける。

「そうだ。昔から、怪物がちょくちょく現れていてね。

それを倒していた集まりが、禦の始まりと言われている。

それが次第に、不可思議な事象の全てに着手し始めて

今に至るっていうわけだ。

もともとは日本だけの活動だったのだが、

今となっては全世界にまで拠点を広げている。

それに伴って、本部も何かと便のいい中国に構えているんだ。」


「そんな機関があるなんて、知らなかった。」

蘭子がぼそりと言うと、甲子郎は反応する。

「そりゃそうだ、禦の存在どころか、怪物や魔法の力なんてものが

世の中に知れたら、無茶苦茶になっちまう。

俺らの存在、そして扱っているもの全ては

非公式であり、完全に秘密を厳守しなくてはならない。

だから、お前たちも今、俺と話していることは誰にも

話してはならない。もし話したら、法律なんて

関係ない処分があると思ってくれ。」

「法律が関係ないって、どういうことですか?」

少し不安そうに琴和が聞く。

「言っただろう、全世界にまで広がっているって。

各国禦の活動に関しては侵害してはいけないんだ。

そのくらいの権限が無ければ怪物どもや

非科学的な力を使う者とやり合うのに支障がある。

そして何より、禦が従うものがあると、

俺たちの特殊な力を利用される可能性があるからな。」

「特殊な力?」

蘭子が聞くと甲子郎は地面を指差した。

「何で今寒くないか分かるか?」

「まさか・・・これがそれですか?」

そう聞き返すと、甲子郎は軽くうなずく。

「そう、さっきも言ったが、呪術なり魔法なり言い方は

どれでもいい。そういうものだと理解してくれ。」

「そんなものが、実在するなんて・・・。」

琴和が独り言のようにつぶやくと、

蘭子が甲子郎に質問をした。


「あの、先ほど村雲ともいいましたが、

それは一体何ですか?」

すると甲子郎は蘭子を見て答える。

「村雲は、言うなれば日本限定の禦だ。

日本政府直属の、怪奇現象等を取り扱う機関で

禦に協力はするものの別の機関だな。

権限は禦のように強くないが、力はそれなりにある。

それで俺は、お前たちは村雲の人間かなとも思ったんだよ。」


その答えを聞くと、蘭子は困ったように言葉を返す。

「いえ、それでもないんですけど・・・。」

すると甲子郎は両手を広げて話を始めた。

「ああ、そのようだな。様子を見ていたら判ったよ。

だがな、そこで一つ大きな疑問が出てくるわけなんだ。」

そう言うと鋭い目になる甲子郎。


「お前たち、何で怪物と戦えるんだ?」

「え?」

その問いに困る蘭子。

すると甲子郎はベンチから見える死骸を指差して、話を続ける。

「普通の人間は怪物とここまで戦えるはずないよな?

何か特殊な訓練を受けているか、何かしらの力が使えるか、何かあるはずだろう?」


そう聞かれると琴和が話を始める。

「そう、実は僕自身もそれが判らないんですよ。

何でここまでできるか。

何故か体が反射的に動いて戦えるんです。

それだけじゃない、幽霊が見えたり

感情も変になっている気がします。

瀬戸さん、怪奇現象を扱っているなら、

こういうケースって何か知りませんか?」


そう聞かれると、甲子郎は困ってしまい、思わず言ってしまう。

「おいおい・・・聞きたいのはこっちの方なんだが。」

「やっぱり判りませんか。」

琴和がため息を付いて答えると、甲子郎は少し考えてこう言った。

「とりあえず、今までの経緯を包み隠さず教えてくれるか?」

時間は23時をすでに周っており、夜が更に深くなっていた。

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