第五話<月の夜の下で>-4
「おいおい、いきなりかよ。」
暗闇の中にたたずむ二人の影がそこにはあった。
甲子郎と琳である。
そして彼らの目の前には異型の犬が座っている。
彼らは予定通り21時から街を彷徨っていた。
今日は犬の撲殺された死骸があった公園付近を中心に
周ることにしていた。
始めは特に何事も無く、ただ歩いていただけであったが、
一時間半ほど歩いていると、異型の生物に出遭った。
それが今である。
「見てコーシロー。額に呪文が記されている。」
座った犬をじっくりしゃがみながら観察をする琳。
犬の額には文字のようなものが書かれていた。
「出来ることなら生け捕りにしたいな。」
「そうだね。」
頭を掻きながら話す甲子郎には余裕の表情が見えた。
だがその余裕は直ぐに消えることとなる。
ごく一瞬だが、大地に何か電撃のようなものが
走った気がした。
「何だ!?今何か地面に力が走ったぞ?」
「これは・・・呪術。」
「何!?」
「グルルルル・・・」
二人が今の大地を過ぎった異常で、ただならぬものを感じていると
犬がうなり始めたことに気づいた。
その様子は、先ほどまでの穏やかさは消えうせ、恐ろしい形相に
なっていた。今にも飛び掛ってきそうだ。
「コーシロー・・・こうなったら捕獲は無理かも。」
「やれやれ。」
そうぼやきながら、甲子郎は懐から銃を取り出す。
それを見ると琳は一言放った。
「早く片付けよう。今ならまだ呪術を放った残留を辿って
発信地が判るかもしれない。ひょっとしたら術者もまだいるかも。」
「そりゃ急がないとな。」
そう言うと犬が甲子郎に向かって突進をしてきた。
しかし甲子郎は避けもせず、ただ銃口を犬に向ける。
「恨むなよ。」
甲子郎は静かに引き金を引くと、弾丸は犬の額に命中した。
すると犬は地面に叩きつけられるように倒れた。
「琳、まだ残留を辿れるか?」
「うん、でもちょっと待って。」
すると琳は携帯電話を取り出し電話を始めた。
「もしもし?物の怪を退治したから回収して。発信機を置いておくから。
これから急ぎで移動するからお願い。」
簡単に事を済ますと、琳は南の方角を指差す。
「あっちだよ。」
「分かった、行くぞ。」
そういうと、二人は呪術が行われたと思われる場所へ向かった。




