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第一話<見えない櫻>-3

硬く感じる風、冷たい空気

周囲は暗闇が始まり、冬の夜が開始している。


そのような移り変わりに気が付かないかのように、

琴和は黙々と歩いていた。夕食を食べる場所に向かうためだ。

彼には行きつけのファミリーレストランがある。

そこのレストランの味は、特別美味しいというわけではないのだが

彼はその味が気に入っていた。

だから今日も、そこに向かっている。


「確か今はシチューのフェアをしていたはずだよな・・・

いや、でも今日はハンバーグだ。・・・


でも確か季節限定だよな。今食べないと今後が・・・

・・・・・こんなことを悩んでるなんて、オレ暇だ・・・うぉ!」


住宅の塀によってできている十字路に差し掛かったとき

突然、何者かが目の前を飛び出してきた。

反射的に避けたので

ぶつかりはしなかったが驚きは相当なものだった。


一呼吸して、目の前を見ると

突然現れたのは中学生くらいだろうか、背中まで伸びた長い髪の

小柄な少女が、驚いた顔でこちらを見ていることに気が付いた。

どうやらこの少女は動揺しているらしい。


「大丈夫?怪我はない?」

琴和は怒ることもなく、優しく話しかける。

すると慌てた様子で

「・・・ごめんなさい!」

振り返りながら、そう言うと少女は琴和が来た方向へと

走っていった。どうやら急ぎの用事があるらしい。

「気をつけろよー。」

小声で少女に向かって言った後、再びレストランへ向かい始めた。



そうこうしている間にレストランに着く琴和。周囲の暗闇のせいもあり、

店の光が温かく感じる。



「いらっしゃいませ・・・あ、空いている席へどうぞ!」

入り口に入るとウェイトレスが慌ただしく、琴和にそう伝える。

いつもそのウェイトレスは丁寧に席まで案内してくれるのだが、

今日はそうもいかないようだ。手にいっぱいの下げた食器を持っている。

どうやらとても忙しいようだった。

琴和はここの常連客で、ウェイトレスもそのことを知っていた。

そこで店内をわざわざ案内しなくても平気だと判断されたのだろう。


「お疲れ様。」

大変ですねと言わんばかりの笑顔で、琴和はそう言った。

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