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第三話<化鳥>-6

「てやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

先に仕掛けたのは蘭子だった。

前回同様に鋭い飛び蹴りを化鳥に向ける。

すると、バランスの悪さからか化鳥は避けることができずに

右翼に喰らった。

よろめく化鳥。



その隙を突き、琴和は懐に飛び込もうとした。

しかし化鳥は左の翼でなぎ払ってくる。

攻撃に反応した琴和はジャンプをしてかわした。

すると化鳥の翼は道路脇の道路標識にぶつかった。


「・・・うそ。」

金属と何か硬い物がぶつかったような音がした後に

鉄の棒が倒れたような音がした。

翼にぶつかった道路標識が折れて倒れたのである。

その様子に思わず唖然とする蘭子。

さらに青ざめる櫻子。

言葉を失った琴和。


しかし固まった三人のことを化鳥は待ってはくれなかった。

再び翼による攻撃が始まる。

「ちょとちょっと!!待ったぁ!!」

慌てて離れる蘭子。

「だぁぁぁぁっ!!」

必死でかわす琴和。

「カァァァァァァァァァァ!!」

暴れまくる化鳥。

その叫び声は少し間抜けではあった・・・。


化鳥の攻撃は周囲を次々へと破壊していく。

ガードレールは切断され、道路には亀裂が入る。

「なんなんだよそれは!!」

琴和は化鳥相手に叫ぶ。

するとあることに気がついた。

敵の攻撃を目で追えるのだ。

『いけるか?』

そう思うと、ものすごい大振りの攻撃を仕掛けてきた。

「小田原さん!!」

蘭子が叫ぶ、それを合図にするかのように琴和は化鳥の攻撃を避け

懐に入った。


化鳥は渾身の一撃をかわされ、隙だらけになっていた。

そのチャンスを逃さずにナイフを突き刺そうとする琴和。


しかしナイフがあと少しで届きそうなところで、化鳥の体が

宙に浮いたのだった。


「と・・んだ。」

ただ唖然として空を見上げる三人。

化鳥は理不尽な翼を羽ばたかせて、空からこちらを睨み付けている。

それは鷲が獲物を空高くから見ているように感じられた。


「二人とも、もういいから逃げて!」

櫻子が叫ぶ。それに反応して蘭子が言葉を放つ。

「逃げるにも逃げれそうにないよ、相手は飛んでいる・・・」

「蘭子ちゃん!!」

櫻子の叫び声で異変に気づく蘭子。

化鳥は勢いをつけて下降してくる。

そして体を回転させて大きな翼を地面に振り下ろした。

地面からドスンという鈍い音が響き渡ってくると

多くの小石が体に飛び掛ってきた。


「・・・何でもありかよ。」

何とか二人は避けることが出来たが、その威力に改めて唖然とした。

道路が裂けたように穴が開いている。

「・・・ヤバイですよこれ。」

蘭子がそうつぶやきながら空を見上げると

化鳥は夜空から不気味な様子でこちらを睨み付けていた。

月光が逆光となって映し出されたシルエットは

悪魔のようにも感じ取れた。


「クケァァァァァァァ!!」

化鳥が叫ぶと再び急降下してきた。

それに反応して避け続ける二人。

その繰り返しが5、6回ほど続いた。


「楠木さん、逃げて。」

攻撃を避け、化鳥が上空に戻ったときに

琴和は話しかけた。さすがに相手のポジションと

破壊力に圧倒されたのか琴和は最悪の事態を考え始めていた。

せめて蘭子は・・・それが琴和の出した答えだった。

それを聞くと蘭子は琴和を見つめる。そしてある提案をした。


「・・・その覚悟があるのなら、鳥の攻撃を引き付けてもらえます?」

「え?」

その提案の意図を琴和は理解出来なかった。

ただ蘭子の様子から、逃げるために引き付けてほしいと言っているのでは

ないということは判った。


『とは言ったものの、どうやって引き付けるんだよ?』

そう思ったら足元に道路が砕けた破片が落ちていることに気がついた。

「そうだ!」

そう言うと小さな小石状の破片を握り締め化鳥に投げつける。

すると簡単に石は避けられたが、化鳥の敵対心は

琴和に向けられたようだった。


化鳥が琴和に向かって急降下を始めた。

そして翼を地面に叩き付けた時、再び信じられない光景が琴和の目の前で起きた。


化鳥が降下してきたタイミングに合わせて

蘭子が飛び蹴りを決めていたのである。


その攻撃により化鳥は地面に叩きつけられた。

「小田原さん、今です!!」

蘭子が声を上げた時、既に琴和は化鳥に飛び掛っていた。

そしてナイフを化鳥の体に突き立てる。

すると凶器の翼をバタバタさせたが、直ぐに動かなくなった。


「大丈夫ですか!?」

蘭子と櫻子が走り寄ってくる。

その返答を笑顔で表現する琴和。


「良かった・・・無事で。」

櫻子が静かに蘭子に抱きつくと、やさしい顔で蘭子は彼女の手に触れた。

「ごめんなさい。」

不思議と言葉が口からもれる。

幽霊なので触れることは出来ないのだが

なんとなく肌が接しているような感じがしていた。

そして何故か温かみのようなものも感じた気がした。


そのやり取りを琴和は優しく見守り、心が温まるような気がした。

だが温かい時間はあまりにも短いものになってしまった。


「二人とも・・・あれ。」

琴和は蘭子と櫻子に化鳥を指差しながら話しかける。

その声は驚愕のあまり声が小さくなっていた。

「う・・・そ。」

「・・・・・・・・・。」

今、倒した化鳥の翼が見る見るうちに小さくなっていく。

そして終いには普通のカラスの状態になっていた。


「何なんだよ、何なんだよこれは。」

琴和がそう言うと蘭子は彼の手を引っ張り始めた。

「不気味だから・・・帰ろう。」

その姿はとても怯えたものだった。

一昨日と同じように戦った後はさっきまでの強さを感じることが出来なかった。

琴和自身も急に不安になり、早急にその場を去ることにした。

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