第三話<化鳥>-5
「・・・冗談でしょ?」
三人の目の前には鳥のようなものが存在していた。
しかし決して鳥ではない。
体は普通のカラスのように見えるが
翼が異常に長い。広げたら5mくらいありそうだった。
その様子はアンバランスではあったが
禍々しい雰囲気がにじみ出ていた。
以前のように眼は4つもないが
街灯のみの暗い状態でも恐ろしい眼差しは
こちらに向けていることが判った。
道路の真ん中に翼を広げて立っており、今にも襲ってきそうだ。
しかし現在は河川敷近くで、前回と同様に
人影は見られない状態で助けは期待できない。
『戦うべき』
蘭子の頭に、その言葉のみが頭をよぎった。
「に・・・逃げよう、蘭子ちゃん。」
櫻子が震えた声で話しかける。
しかし蘭子は動じてはいなかった。
不思議と落ち着いている。
「また、変なのに会っちゃいましたね。フライドチキンの呪いかな・・・。」
冷静に琴和に話しかける。
すると奇妙なことを返事として返された。
「楠木さん、今、何か考えましたか?」
琴和の様子もとても落ち着いているようだった。
でもそのことは少しも疑問にならなかった。
蘭子自身も不思議なくらい冷静だったからだ。
しかし質問の意図はよく分からなかった。
「考えた内容ですか?とりあえず戦ったほうが良いかな、ですね。
何でそんなことを聞くんですか?」
こんな状況下でも普通に聞き返す蘭子。すると琴和は答える。
「以前、犬に遭ったとき一瞬意識が飛びましてね。
その時に頭をよぎった考えが楠木さんの独り言と
まったく一緒だったんですよ。それで今回はどうかなって。」
「独り言って”逃げ切れない”とか”戦うべき”とかですか?」
「ええ、そうですよ。」
「・・・そんな話、聞いていませんでしたよ。」
「ええ、昨日言うの忘れていました。」
落ち着いた口調で二人のやり取りがされていた。
その様子は櫻子にとって信じられないものだった。
「二人とも、逃げましょうよ!!」
櫻子が叫びに近い声を上げるが、逃げる気配を見せない二人。
「今も、意識が飛んだんですか?」
「いえ、今日はスムーズに考えが浮かびましたよ。」
「私も意識は飛んでないかな。それで、小田原さんは今なんて考えましたか?」
蘭子の問いに琴和は心なしか笑みを浮かべて答える。
「”戦うべき”一緒ですよ。」
すると琴和はポケットから折りたたみ式のナイフを出した。
「小田原さん、それって!?」
「前の会社の同僚とキャンプ行った時に必要かと思って
買ったんですよ。それを今日は持ってきました。」
「職務質問されたら逮捕されちゃいますよ。」
蘭子が冗談を言うかのようなそぶりを見せると
お互いの目があった。そしてうなずく二人。
「ちょっと、二人とも!?」
声を上げる櫻子、するとそれが合図になるかのように
目の前の化鳥に向かって走り出した。




