第十五話<駆け巡るそれぞれの想い>-16
「16時、過ぎたね。」
時計を見た後に、周囲を見渡しながら話しかける琴和。
目の前には遠くの方を見つめる矢子と、心配そうな表情の蘭子がいる。
彼等は蘭子が16時に櫻子と待ち合わせをしていた場所にいるが、
彼女の姿はそこには無かった。
「もう少し待っていたら、来てくれるかもしれません。」
蘭子の不安を少しでも和らげる様に、矢子が話しかける。
三人は、蘭子のバイトが終わってから、櫻子の事をずっと探し回っていた。
当ては無かったが、待ち合わせ場所を中心に、彼女が好きそうな場所を巡っていた。
しかし、櫻子の姿は見つからず焦りながらも、待ち合わせ時間になってしまう。
そこでひょっとしたら、待ち合わせ場所にいるのではないかと思い、今この場に来たのだが
やはり彼女の姿は無かった。
蘭子の顔を見つめる琴和。
今は櫻子を探す事が一番大事なのだが、
先ほどの西松の言葉が頭に残って、どうしても気になってしまっている。
そのせいか、先ほどから蘭子の顔をしばしば見つめているが、
やはり何も感じないという答えを、その度に出す事を繰り返していた。
その中で、また不毛な答えを出し終わり、
視線を彼女から離そうとしたところに、蘭子と目が合ってしまう。
「後10分待っても来なかったらさ、買い物をして琴和君の家に行こう。」
見つめられていたことには気づいていないかのように
蘭子がそう提案をする。
「でも、良いんですか?」
心配そうに矢子が聞いてくるが、蘭子は無理に笑顔を作って首を縦に振る。
「うん、だって琴和君の家に居たら、遅れて来るかもしれないじゃない。」
「そうだね、ひょっとしたら少し遠出をして戻るのに時間が掛っているだけかもしれないし。」
琴和がそう言うと、うなずく蘭子。
「やっぱり、深く考えちゃダメだよね。
不安になるだけだもん。」
蘭子がそう言って気丈に振舞うと、矢子は携帯を取り出す。
「電話?」
「はい、早間さんにも聞いてみようかなって。
もしかしたら探すのを手伝ってくれるかもしれませんし。」
何とか力になりたい姿勢を見せる矢子に蘭子は笑顔を作って見せる。
「大丈夫だよ。
それより矢子ちゃんは、今晩は何を食べたいかを今は考えて。」
少し屈んで、目線の高さを合わせると、携帯をしまう矢子。
「・・・今日はさっぱりした簡単な物が良いですね。」
少し考えた後、矢子が提案をする。
「それ、何だろう?結構難しいね。」
「鉄火丼で良いんじゃないか?」
「ああ、それ良いね。」
時間がかからないものを提案した事が
話を続けさせる源になっていく。
何気ない会話ではあったが、それは気を紛らわすには十分なものであった。
そのような感じで会話を続けていく3人。
そして時間は櫻子がいないまま、約束の10分は過ぎていくのであった。




