第十五話<駆け巡るそれぞれの想い>-13
「ちょこまかと逃げやがって。」
修也に銃を向ける甲子郎。
一方修也は動じず、強い視線で対抗する。
「やっぱり簡単には逃がしてくれないか。
・・・やるしかない。」
身構えようとする修也。
その動きに反応して甲子郎が引き金を引こうとする。
「修也!!」
突然横から声が降りかかる。
その声に制止され、動きが固まる二人。
ゆっくりとその方向を見ると、今にも泣き出しそうな顔の櫻子の姿があった。
「・・・良かった、生きていたんだね。」
今まで我慢していた涙がどっと溢れ出る櫻子。
手で涙を抑えようとするが、止まることは無かった。
「・・・・・・・・・そんな・・・櫻子・・・・・・。
何でお前がそんな姿で、こんなところに・・・。」
数秒間言葉を失っていた修也は、
甲子郎の前という事を忘れ、愕然として櫻子に話しかける。
「良かった、私の声が聞けて、姿が見えるんだ。」
涙ながら笑顔を作ると、震えながら近づいてくる修也。
「そんな・・・そんな。」
無意識のうちに涙がこぼれ出る修也。
そして1mほど離れたところで立ち止まる。
『どういうことだ?』
二人が知り合いだった事に驚かせれる甲子郎。
何がどうなっているのか理解できないまま、銃を向けたまま固まってしまった。
「すみません、甲子郎さん。
お願いです、銃を下してください。」
銃口の向きが気になったのか、櫻子が甲子郎にお願いをすると、
甲子郎は銃を下ろし、ようやく言葉を発する。
「これは、どういうことだ?」
「それは・・・。」
困った表情を見せる櫻子。
しかしその直後、修也は驚いた表情で櫻子を見つめる。
「お前、禦と知り合いなのか?」
そう聞かれると目線をそらし、うつむく櫻子。
「どういう事だよ、何で禦と知り合いなんだよ!?」
「貴方こそ何でカザーバに入っているの!?」
強く問いかける修也に、櫻子も同じような強さで問いかける。
その結果、二人はしばらく言葉を失ってしまう。
「毎晩あんな怪物を放して、一体何をしているの?」
沈黙を破るために櫻子が小さな声で問いかける。
「・・・それは。」
言葉に困る修也。その質問には大いに関心のある甲子郎は
彼の答えに注目をする。
「・・・迷ったのか。」
修也が固まっていると上から男の声が聞こえてくる。
そこには屋上からバルコニーを見下ろす嘉島の姿があった。
「・・・嘉島さん!?」
嘉島の姿を見ると、驚きの表情を見せる櫻子。
思わずこぼれた彼の名を甲子郎は聞き洩らさなかった。
「お前、嘉島も知っていたのか?」
櫻子に問いかけると、目を合わせず、反応も見せなかった。
「引くぞ、修也。」
「ですが嘉島さん!」
「命令だ。今、お前を失うわけにはいかん。」
そう言うと、手をかざす嘉島。
その直後、バルコニー全体が煙に巻き込まれる。
「修也!!」
煙に巻き込まれながら名を叫ぶ櫻子。
「・・・ごめん、櫻子。」
唇をかみしめ、その場を立ち去る修也。
「クソ、こんなんばかりかよ!!」
再び風の力で煙を吹き飛ばすと、そこに二人の姿は無かった。
「そんな・・・修也。」
暗い顔でうつむく櫻子。
「・・・櫻子、お前。」
甲子郎が近づいてくると、櫻子は逃げるように空に飛び立つ。
「どうなってやがる。一体。」
追う事は無く、櫻子の後姿を見つめる甲子郎。
彼女の後姿が見えなくなると、そこには綺麗な青空と静けさだけが残っていた。




