第十五話<駆け巡るそれぞれの想い>-7
時計の針が12時を過ぎた頃、
琳と西松は殺害現場に来ていた。
結局、甲子郎を捕まえることは出来なかったが、
予定は変更せずに二人で現場を訪れている。
琳は例のごとくいつもの民族衣装から、カジュアルな服装に着替えている。
一方西松はスーツに身を固め、一見したらサラリーマンといった感じだ。
そんな共通性の無い二人組は、現在草むらの前にしゃがみこんでいる。
「骨だね。」
「骨だな。」
二人の目の前には、5センチ程の細い骨が落ちている。
それをジッと見つめる二人。
「これは、関係ないね?」
「ああ、関係ないな。やっぱり呪術的なものは感じないか?」
「うん、全く。ニシマツは何で関係ないと思うの?」
「そりゃ、近くにあんなものが落ちてたらなあ・・・。」
左の方角を指差す西松。するとそこにはフライドチキンがメイン商品である、
ファーストフード店のテイクアウト用の袋が落ちていた。
「じゃあこれは食べられちゃった後なんだね。」
「だろうな。」
「ちゃんとゴミはゴミ箱に捨てないとダメだね。」
そう言うと立ち上がり周囲を見渡す琳。
「ニシマツ、どう思う?」
「どうって、俺は検死がメインで、現場検証は専門外だぞ。
ましてや、うちの局員がもう片付けた後だ。何も残っていないじゃないか。」
「でも考えることは出来るはず。」
そう言われると右の拳をアゴに当て「フム。」と言い、周囲を見渡す。
「・・・そうさなぁ、しいていえば、綺麗過ぎだな、ここ。」
「キレイ?」
「ああ、ここって殺害現場なんだよな?
人の生き死にがあった場所だ、もっと血痕が残っていたり、
壊れた場所があってもいいだろう。
ましてや、ただの人間と犬が喧嘩したんじゃない。
禦の局員と怪物がやりあったんだ。
それなりに激しい戦いだったんじゃないか?」
「一般人に気付かれないように、キレイに片付けたんじゃない?」
「それはそうかもしれないが・・・それでも限度はあるだろう。
何かしら残っていてもいいはずだ。」
その意見を聞くと、琳は局員が倒れていた場所まで歩き、しゃがみ込む。
「確かにニシマツの言うことは正しいよね。
私もそう思う。局員の資料を見ると、結構優秀だったんだよね。
それだったら死に直面したら、抗って周囲をボロボロにするくらいの力を持っていたはず。
でも周囲の環境は壊れていないね。」
そう言うと資料を開いて見始める琳。
「それによく見たら、魔物の状態も変だよね。
刺し傷のような痕があるものもいれば、切り傷のような痕のものもいる。
殺し方に共通性が少ないね。
それにこんな傷を負ったら、もっと血が流れていてもおかしくないはず。
いくら魔法で周囲を清掃しても、何かしら残るよね。」
「ふむ、そうすると戦った場所はここではないってことか?
しかも戦った人間も一人ではない?」
「でもここに局員も魔物も倒れていたんだよ。」
「じゃあ誰かが怪物を倒して、死体を全部運んだか?」
「誰が何の為に?」
「さあ、そこまでは知らんよ。」
話が行き詰まる事を感じると、パタンと資料を閉じる琳。
「とりあえず、これ以上考えても予想の枠は超えられないね。」
「そうだな、もう少しヒントを探すべきだ。」
「オナカスイタ。何か食べに行こう。」
「調査しないのかよ!?」
西松のツッコミなど関係ないかのように、澄ました顔をする琳。
資料を鞄の中に入れると、立ち去る準備をする。
「こりゃ、本当に運動しにきただけだな。」
ヤレヤレといった感じで琳に近づく西松。
しかし、すぐそばまで来ると、琳は走り出してしまう。
「おい、何処に行くんだ?」
少し大きい声で呼びとめるが、聞こうとせずに走る琳。
そして彼女の先には一人の男の姿があった。




