第十五話<駆け巡るそれぞれの想い>-3
「あれ?ここにもいない。」
突然開く局長室の扉。その犯人は琳である。
「誰か探しているの?」
椅子に座りながら麗華が問いかけると「コーシロー。」と
端的に答えが返ってくる。
「瀬戸君?彼なら出掛けているわ。」
「・・・何処にいったの?」
「分らないわ、教えてはくれなかったけどカザーバがらみではあるようね。」
麗華の答えを聞くと、てくてくと近づいてくる琳。
彼女の手元にある書類を覗きに行く。
「貴女くらいよ、私の資料を遠慮無しに見るのは。」
「殺された局員の資料?」
「そうよ、私が命じた任務で命を落とす事になるなんてね。
責任感じるわ。」
軽くため息を吐きながら背もたれに寄りかかると、琳に視線を移す。
「瀬戸君に何か用かしら?」
「うん、用。」
「どんな?」
「ニシマツと局員が殺された場所に行くの。だからコーシローも連れて行くの。」
その言葉を聞くと、扉に目をやる麗華。すると、半開きの扉から西松の姿が見える。
「ドクターを連れて行ってどうするの?」
「実際の現場を見たら死体以外からも情報が得られる可能性があるよ。
それに最近、ニシマツは運動不足。歩かせるの。」
「そう・・・まあいいか。とりあえずドクターも入ってきなさい。
扉が開きっぱなしというのも良くないわ。」
麗華の呼びかけに答える西松。
ゆっくりと扉を閉めると軽く一礼をして近くのソファーに座る。
「ドクターは何か武器を持っているのかしら?」
「いやいや、私は戦いが全く駄目でね。危ないものは持たない主義だ。」
さりげなく聞く麗華に両手を広げて否定をする西松。
「でも局員が殺されたのよ。少しは備えてもらわないと。」
「その為の甲子郎だ。」
「なるほどね。」
その答えに納得をすると、麗華は受話器を取る。
「コーシローには繋がらないよ。」
電話をかけようとすると、琳が無駄だと言わんばかりに
話しかけてくる。
それに答えるように静かに受話器を置くと両手を組んで机に肘を突く麗華。
「もう電話をしたの?」
「ううん、昨夜壊したらしいよ。」
「え?携帯を?」
「うん、何か腹が立ったから地面に投げつけたら動かなくなったんだって。
今朝、技術部にデータだけでも吸い出せないか頼み込んでいたよ。」
「何やっているんだか・・・。」
呆れながらため息を吐くと、額に指を当てる。
「さて困った、アイツは何処に行ったんだろうな。」
西松が背もたれによっかかりながら天井を見上げると、琳は麗華の手元の資料を見ながら
甲子郎が行きそうな場所を考える。
「コトカズたちの所かな?」
「それは無いわね。」
何気なく言う琳の答えにスラっと否定する麗華。
「何で?」
「昨夜の事よ、彼に対して突然もう小田原琴和たちと関わるなという命令が出たの。」
「何で?」
「カザーバと戦っているだけで、調査は何も進んでいない。
これからは調査に専念する為だそうよ。」
「意味分らない。カザーバと戦う事だって十分必要な仕事だよ。
それにコトカズ達だって放って置けない存在だよ。」
「そうだと思うのだけどね。
現にカザーバの人間の情報は瀬戸君が見回りをしているから得ているようなものだし、
彼らだって野放しに出来ないのだけれどもね。」
「誰からの命令?」
迫るように聞く琳。
「分らないわ。私も昨夜、突然支部長から電話でそう伝えられただけだから。」
「じゃあ支部長命令?」
「それがよく分らないのよ。電話の口調からだと
支部長もよく分らない様子だったから。」
「すると元老院?
でもオカシイよ。元老院が一局員の行動に口を出すなんて変。」
「・・・そうね、長野クラスの大事だったら分かるけど、
現場レベルの話では異例中の異例ね。」
「誰だろう・・・風間・・・いや違う。」
少し考え込む琳であったが、突然動き出す。
「ニシマツ、出掛けるのは一時間後ね。部屋に迎えに行くから。」
「ん?ああ、分った。部屋に居れば良いんだな?」
姿勢を直して西松が答えると、琳はてくてくと扉に向かい始める。
「ちょっと、何処行くの?」
麗華が問いかけると、琳は立ち止まり振り向く。
「納得いかない。文句言って来る。」
「おいおい、一局員が掛け合っても元老院クラスは話も聞いちゃくれないぞ。」
呆れながら西松が言うが聞こうとしない琳。
だが麗華は止めようとせずに、一言だけつぶやく。
「・・・まあ良いか。」
特に止めることも無く放っておく麗華。
琳が部屋を出ると、手元の書類の整理を再開するのであった。




