第十四話<理由>-8
「車を出しますよ、ベルトを締めてください。」
助手席に夏美を乗せ、研究施設の地下駐車場から車を出す早間。
その言葉を聞くと、疲れきったような力の無い様子で
ゆっくりとシートベルトをする夏美。
本当は、聞きたいことが色々とあったのだが、
彼女の姿を見ると今はそっとしておこうという気持ちになっていた。
しかし2分ほど走り、信号を曲がったところで夏美は俯きながら話しかけてくる。
「ありがとう、助かったわ。」
その表情は何かを思いつめているかのようなものであった。
とりあえず礼を言っただけなのかもしれないが、
早間は、彼女が何かを伝えたそうなのだと直感的に感じる。
そこで大人しく過ごすつもりの予定ではあったが、
急遽変更し、簡単な会話から始めることのにした。
「・・・お怪我はありませんでしたか?」
ありきたりの、誰もが思いつく言葉で話しかけると「ええ。」と返ってくる。
ハリの無い声で簡単な返答だった為、
やはり、そっとしておこうかとも思ったが、
もう少しだけ会話を振ってみることにする。
「ところで、夕食はどうします?
もういい時間ですよ?」
「・・・いいわ、そういう気分じゃないから。」
「そうですか、まあ、お腹が減ったら何か食べてくださいね。
空腹は体に毒です。」
何気ない素振りで話しかけると、夏美はスッと視線を移し、早間の横顔を見つめる。
「・・・そんな気を遣わなくってもいいわよ。
聞きたいことがあるって顔をしているわ。
乗車時間は限られているのだから、その間を有効に使って構わない。」
その言葉を聞くと、軽くため息をつく早間。
「その、人の表情や様子から心を探るの、少しキツイですね。」
「・・・ごめんなさい。悪い癖ね。」
「・・・・・・いえ、まあ自分も似たようなことは、よくやるので人のことは言えませんけどね。」
そう言うと丁度赤信号になり、車が止まる。
「博士も何か話したい事があるんですか?」
「!?」
一瞬であったが驚いた表情を見せた夏美。そこから自分の直感は正しかったと感じる。
「言ったじゃないですか、自分も似たようなことをやるって。」
「やっぱり貴方は只者じゃないわね。」
感心したのか、小さく微笑む夏美。その様子を確認すると青信号になり、車は再び走り出す。
「大丈夫ですよ、私は敵じゃない。
村雲が怪しいと思っている者同士じゃないですか。
・・・少し腹を割って話をしましょうか?」
その提案を聞くと、コクリとうなずく夏美。
「では早速話を始めましょう。
知っていましたか?ヴァークスが他にもいた事実を。」
正直なところ、今の夏美には辛い会話かもしれないとも考えたが、思い切って聞く早間。
すると夏美の表情は硬くなる。
「そうね・・・正直なところ予想はしていたわ。」
「と、言いますと?」
「ヴァークスの研究に携わる人が、日に日に増えていったからよ。
増員ということは、研究を大きくするということ。
そして大きくするということは利用価値があるということ。
そう考えると、私が関知しないところでも研究や実験が行われていても不思議ではないわ。」
「なるほど、拡大した研究の一部がさっきの彼らですか。
でもヴァークスの技術を一体どうするつもりなのでしょうか?
強力な軍隊でも作るつもりでしょうかね?」
「そうね、確かにヴァークスの部隊を作ると、かなりの脅威にはなるわね。
でも、本当にそれだけかしら?」
「まだ何かあると?」
「考えてもみて、ただ単にヴァークスの部隊を作るくらいだったら
現段階の技術でも可能なのよ?」
その言葉を聞くと先ほど戦った神庭や、少年を思い出す早間。
彼らの常人とは違った様子に少し引っかかる。
「・・・ですがそれは博士がいればの話ではないですか?
先ほどのヴァークスを思い出してください。
人格が少し崩れていました。
やはり術が上手くいかなかったところがあったのでしょう。
・・・ひょっとしたら、博士の力がなくてもヴァークスを作る研究をしているのかもしれませんね。」
「要するに、そろそろ私は用済みってことかしら?」
「そういう訳ではありませんよ。」
早間が悪い冗談をあしらう様に否定をすると、
夏美は薄っすらと一瞬微笑し、すぐ真面目な表情になる。
「でも、あながち外れではなさそうよ。目の付け所がいいわね。
私無しでもヴァークスの技術を利用したいようよ。」
「・・・何か心当たりでも?」
夏美の意味ありげな台詞に反応する早間。
その表情は少し固まったものであった。
「ルイン計画って知っている?」
「・・・Ruin?破滅、崩壊ですか。物騒な名前ですね。」
「そうね、でもルインという言葉をもじっているもののようよ。
実際にはProject Lu-In。RではなくLよ。」
「それは一体?」
「分らないわ。」
「分らない・・・ですか?」
「そう、それが一体何なのか、正直分らないわ。
ただ、その計画にヴァークスの技術が絡んでいるという事は知っている。」
「どういうことです?」
ここで再び赤信号に捕まる車。
車を止めてギアをニュートラルにすると、夏美を見る。
「あれは、矢子の手術が終わった後、
施した術の履歴をチェックしていた時のことよ。
たまたま見たことのない名称を見つけたの。」
「それが、Project Lu-In・・・ですか?」
「正直驚いたわ。私の関知しないモノが含まれていたのですもの。
でも、冷静に考えてみたら予想は出来た事だったのよ。
ヴァークスに組み込む情報は莫大な量だった故に、多くの研究員に
作成の分担をしていたのだから。
私に知られず細工をすることなんて容易かったのよ。」
「・・・解析はしてみたのですか?」
「もう、何度も試みたわ。
でも、複雑にプロテクトが掛かっているようで、結局は何も分らなかった。
そして術を施された矢子本人に聞いても分らなかった。」
ここで信号が青に変わり、再び走り出す車。
視線を前方に戻しつつ、話をする早間。
「上に掛け合ってみたのですか?」
「当然よ。でも、何も教えてくれなかった。
それどころか、テスト用で作成され消し忘れた、
ただのゴミプログラムという回答を出してきたのよ。」
「ゴミプログラムなのに、複雑なプロテクトが掛かっているのですか?」
「そうよ、だから信用を置けるわけないわ。
・・・でも、その場は納得をした振りをして事を荒立てなかった。
そのお陰で、どうやら上は問題視をしていないようね。」
「上手く身を守りましたね、賢明です。」
「ええ、そうね。
今、研究施設を取り上げられるわけには、いかないから。」
「・・・そうですね、博士の研究を好き勝手に悪用させる訳にはいきません。」
すると、うつむいて何かを考え込む夏美。
そして早間の顔を5秒程ジッと見つめた後に再びうつむく。
「そんな事じゃないわ。」
静かに否定をする夏美。
それに反応し、様子を窺うと切なそうに話を始める。
「矢子に施した手術は私の全力を注ぎ込んだ。
今のところ問題は出ていないし、経過も順調よ。
・・・でも、今後は100%大丈夫かは分らない。
だから、もし何かあった時の為に、すぐ対応できる設備が必要なのよ。
でもその設備は私の研究室しか無いの。
同じ設備を整えるのには莫大な資金と時間が必要で、
他に用意するのは、ほぼ不可能なの。」
そこまで話すと、鼻をすするような音が聞こえる。
どうやら夏美は泣いているようだった。
それに驚き、じっくり話を聞くために早間は道路の脇に車を停める。
「本当は、村雲が私の技術を悪用している事は
もう分っているし、出来ることなら縁を切りたい。
さっさと、禦に訴えようかとも思った。
でも、出来ないじゃない。
禦の内部にも村雲の内通者がいるのよ?
私の願いも届かず、研究室を取り上げられる可能性があるし、
情報漏えいを阻止するために、研究室を破壊される可能性だってある。
矢子は姉さんの忘れ形見なの。
私が守らなければいけないの。
・・・もう、どうしようもないのよ。」
車の扉にもたれる様にして辛そうな素振りを見せる夏美。
その姿は、今までの凛とした雰囲気が一切なく、少し見るのが辛く感じる。
だが、そう感じつつも、一つのことが大きく引っかかる。
「・・・何故、ここまで私を信用してくださるんですか?」
思い切って聞く早間。
村雲の上層部に知られてはいけないことを、
自分に対して次から次へと伝える理由が見えなかった為だった。
確かに、自分は村雲に不信を抱いていることを
夏美には知られていたが、そこまで信用されている実感はなかった。
すると、夏美は自分のことを鼻で笑い、切ない目に涙を浮かべて
視線を早間に向ける。
「・・・何でだろうね、ごめんなさい。」
目線が合うと、しばらく動けなくなる早間。
それは、ほんの数秒だったのだが、長い時間のように感じられた。
『・・・不安なんだ、今も、これからも。』
そう感じ取る早間。今まで周りには仲間と呼べる人はいなかった。
その中で自分という、村雲に不信を抱く人間が現れたことで
妙に、仲間意識を強く感じ、安心して少し気が緩んでしまったのかもしれない。
そして、今さっき命を狙われたことで不安な心が最高潮に達したのだろう。
そう考えると自分に色々と話をしたことが心細さからなのだろうと何となく分る。
そして『きっと、誰かに助けて欲しいんだ』とも感じ取ることも出来た。
視線を正面に戻し、背もたれに寄りかかる早間。
そこで深く息を吐き、違う質問をする。
「もう一つ教えてください。
何で矢子ちゃんをヴァークスにしたんですか?」
暗い表情を見せる夏美。うつむき、2、3秒固まると、素直に話し始める。
「素体の選定理由は、貴方も知っての通りよ。
実験体がなかった事と、
ヴァークスの研究は私自身の体の構造を基準にやっているから、
私と近い構造を持った人間の方がやり易かったの。
だから血縁者の矢子を選んだ。これが理由としていること。
でも本当は違うわ。
貴方も知っているでしょう?
矢子が遭った不幸を。
両親と乗っていた車が事故で大破。
その時に姉さんと義理のお兄さんは死んだ。
そして矢子は、命は助かったものの脳死状態で目覚めることはなかった。」
「・・・だから、ヴァークスにしたんですか?」
「そうよ。ヴァークスの手術をすれば、再び目覚めさせられる。
再び歩ける、再び会話も出来る。
だから私は矢子を被験体に選んだ。
でも本当は、ヴァークスなんかじゃなくって
普通に矢子を助けたかった。
ただ、矢子を元の状態に戻したいだけだった。
現に私の研究は元々矢子のような脳死の人を助ける為のものだから、
それは可能だったの。
でも、そんな不利益な事を村雲は許さない。
施設や資金は、ヴァークスに費やす以外は自由に使えなかったの。
だから仕方なくヴァークスにするしかなかった。」
「・・・そうですね、そうするしかなかったでしょうね。」
「でも、本当にこれで良かったのか、正直分らないわ。
自分のエゴで矢子を目覚めさせたのかもしれないって最近、強く思うの。
私も矢子と同じように、過去に姉さん以外の家族を全部失ってね、
ずっと二人だった。だから姉さんは私にとって大切な人だった。
でもその姉さんも死んで、私にはもう矢子しか残されていないの。
だから、何が何でも目覚めて欲しかった。
でもそれを押し付けたせいで矢子は普通には生きられなくなった。
本当だったら今頃学校に通っていて、
普通の女の子として生きているはずだった。
でも現実は違う。村雲に戦士として存在している。
今、ひょっとしたらカザーバと戦っているかもしれない。
危険な目に遭っているかもしれない。
矢子は幸せになれないかもしれない・・・。そう思うと・・・。」
その話を聞き、涙がこぼれ落ちる夏美を見ると、早間は胸が締め付けられる思いになる。
しかし、言葉を失ったわけではなく、
心の中では夏美を肯定する思いで一杯になり、自然と言葉が口から出る。
「そんな心配をすることは無いと思いますよ。
現に今、矢子ちゃんは笑っているじゃないですか。
笑顔を見せるということは、幸せを感じているということだと思います。」
本当に感じていることを、そのままの表現で表すと、
夏美は、声を上げて泣き始める。
その様子から、今まで溜め込んでいたのだと痛感をする早間。
そっと手を肩に乗せようとしたが、思いとどまる。
少し伸びた手を引っ込めると、
今はこのまま、静かに見守りたいと感じていた。
しばらくすると、夏美は落ち着き「ごめんなさい。」と言うと、
早間は首を振る。
「いえ、謝ることはありません。むしろ私に話をしてくださってありがとうございます。
お陰で、これからどういう道を進むべきか分った気がします。」
「進む道?」
夏美が不思議そうに聞くと、早間はスッと笑みを見せて夏美を見る。
「護衛として博士の下に初めて来た時は、
もし禦が狂った時の為に必要な技術だと理解してやっていました。
ですが、日が経つにつれて、疑問が湧いてきていました。
その中での今日です。博士のお話を聞いて確信しましたよ。」
視線を正面に移し、一呼吸を置く早間。
「狂っているのは村雲の方です。」
力強く村雲を否定をすると再び夏美を見る早間。
「と、いうわけで現状を打破するために、どうにかしましょう。」
「どうにかって・・・どうにもならないじゃない。
それに一体何をするつもり?」
「貴女と矢子ちゃんを村雲から解放します。」
その言葉を聞くと驚いた表情で一瞬固まる夏美。
「・・・相手は強大な組織なのよ?
そんな簡単に行くわけないわ。」
「ええ、もちろんです。
ですがこのままでは駄目な事は分っているじゃないですか。
だったら何か行動は起こすべきです。
・・・それに100%不可能というわけではないようですしね。」
「どういうこと?」
「禦の内部に村雲の内通者がいるようですが、
果たして、それは本当に脅威なのでしょうか?
考えても見てください、何故、村雲はヴァークスの技術を
禦に隠そうとするのですか?
もし、内通者の力が強ければ隠さず、公然と研究が出来るようにするでしょう。」
「・・・つまり内通者の力は絶対的では無い?」
「そして禦の内部は村雲色に染まってはいないという事も言えます。
やはりヴァークスは禦的にNGなのでしょう。
ですから、染まっていない正しい禦の権力者に今の現状を伝えれば
勝算はあります。」
「すると、信用の置ける禦を探し出せればいいのね。」
希望が見えてくると、少し元気を取り戻す夏美。
その様子を見ると、早間は小さく微笑む。
「いえ、実はもう信用の置ける禦は見つけているんですよ。」
「え?」
「毎晩矢子ちゃんたちがお世話になっている瀬戸 甲子郎。
あいつは信用が置けますし、その上司も頼れる人です。
二人に話をすれば、何とかなるでしょう。
何せ上司に当たる人は諜報局の局長さんですから。」
驚いた顔の夏美。あっけなく問題が片付きすぎて少しの間、言葉を失ってしまう。
彼女の意表を突かれた様子に早間は小さく笑い、してやったという気持ちになっていた。
「一体、貴方と瀬戸さんは、どういった関係なの?」
驚きが収まったところで夏美が甲子郎との関係を聞き始めると、早間は一瞬考えた後に
素直に話し始める。
「そうですね、仲が悪いようにしているので
不思議に思うかもしれませんが、
本当は、自分にとって家族同然の存在ですよ。」
「仲が悪いようにしている?」
「ああ、そうでした。博士の前ではそんな素振りは見せていませんでしたっけ。
普段ならしょっちゅう喧嘩をしていますよ。まあ、あくまでフリですが。」
「・・・どういうこと?」
「簡単ですよ、禦と仲がいい人間に村雲が重要な事を伝えるわけが無いじゃないですか。
先ほども言いましたが、あいつとは家族のようなもので、
どうしても接触することがありましてね。
ですが、だからといって仲良くやっていたら村雲は私に対して警戒をするでしょう。
今、こうして博士と話をしていますが、もし禦と仲良くやっていたら
私は博士の下に回されなかった思います。」
そこまで話すと、夏美は怖いものを聞くような顔をする。
「まさか、貴方は禦の回し者?」
「違いますよ。」
苦笑いで否定する早間。
「そうですね、簡単に説明をしますと、
私は村雲が暴走をした時に、内部から止める役を、
それとは逆に瀬戸は禦が暴走した時に内部から止める役を
担当しているだけです。
別に禦や村雲の命令で動いているわけではありませんよ。」
「何でそんなことをするの?」
理解できない様子で夏美が聞くと、、早間は背もたれに体重を預け、上を向く。
「・・・そうですね、過去に辛い思いをしましてね。
二度と繰り返さない為でしょうか。」
その言葉を聞くと、過去に何があったのか気にはなったが、
深く聞くことは止める夏美。
あまり話したくはなさそうな雰囲気を敏感に感じ取ったからだ。
言葉に詰まりを感じていると、
早間は会話を更に振り始める。
「まあこれから禦に話をするにしても、
したたかな村雲の事です。真実を隠される事も容易に考えられます。
だから今のうち、集められる情報は集めておきましょうか。
すみません、そこで話は少し戻るのですが、
ルイン計画について上に掛け合ったとおっしゃいましたが
一体、誰に掛け合ったのです?」
突然話が戻ったので、少し流れに乗り遅れたが、ぱっと答える夏美。
「米倉所長よ。」
その返答に一瞬固まる早間。
「腑に落ちませんね、先ほどの行動といい、その対応といい。」
「どういうこと?」
「・・・16年前、村雲で何があったかはご存知ですか?」
「16年前?・・・大勢の犠牲を出した、あの事故の事?」
「あれは事故じゃありません。事件です。
日本の役人が金と権力で村雲をたぶらかすから起きたのですよ。
村雲がしっかりとしていれば防ぐことが出来ました。」
「それが何の関係があるの?」
「米倉所長は当時、村雲のあり方に意義を唱えていたうちの一人なのですよ。
正義感が強く、不審な事は許さないタイプの人間だったという話です。」
「そうだったの?」
「ええ、実直の米倉。当事はそう呼ばれていたようです。
その所長ですが、16年前の事件では活躍したそうで
人命救助だけでは無く、腐った村雲内部を暴くのにも一役かったそうです。」
「・・・そんな人が今は不審の対象に成り下がったのね。」
「だから腑に落ちないのですよ。
人間ってそんなに変わるものでしょうか?」
早間の言葉を聞くと少しハッとする夏美。
「・・・確かにそうね。何か大きなきっかけがあれば
心の持ち方が変わる事はあるけど、基本的なものは
変わらない事が普通ね。ましてや大人なのだし。」
「すると何らかの理由はあるのかもしれませんが、
基本はまだ実直である可能性はあるということですね。
・・・今度試してみるか。」
「試す?何を?」
「ええ、何か聞き出せそうな気がしませんか? 」
「え?」
夏美の疑問を笑顔で
流すかのようにして、早間はエンジンを掛け車を発車させる。
「さて、そろそろ帰りましょうか。」
にこやかに提案をされると、少しうつむいて、首を縦に振る。
「・・・ご飯、家で食べていかない?」
少し走ったところでポツリと食事に誘う夏美。
その様子を横目で確認すると、穏やかに答える早間。
「いいですね。でも何か食べるものがあるのですか?」
「・・・途中で何か買っていきましょう。」
「ははは、そうですね。でしたら私がおいしいスパゲッティを作りますよ。」
「そう、楽しみにしているわ。」
小さくだが、ようやく笑みを見せる夏美。
それにつられて早間も少し安心したような笑みを見せるのであった。




