第二話<物語る骸>-3
「朝早くから大収穫だったらしいわね、瀬戸君。」
「死後1日と経っていないので新鮮そのものですよ。生でどうですか?」
現在はAM11:00
部屋の広さは20畳くらいだろうか、
薄暗い部屋に外の光が若干入り込んでいる。
大きな黒い皮製の椅子に赤いスーツを身にまとった
女性が座っている。
細い眼鏡から見える眼差しは、
冗談を受け流した笑みと共に目の前にいる人物に向けられていた。
女性の目の前には木製の机がある。
この広い部屋でないと置き場所に困ると思われるような
大きさで、装飾はそれほどなかったが、
豪勢さをかもし出している。
そしてその机を挟んで立っているのは
先ほどの銀髪の男だった。
「ところで、どのような御用でしょうか局長。
先ほどようやく死骸の鑑識が始まったばかりですので
何も報告できませんよ。」
瀬戸と呼ばれている銀髪の男が女性に話しかける。
「ええ、分かっているわ。別件よ。」
局長と呼ばれた女性が手を組み瀬戸に話しかける。
「貴方の銃の改良が正式に認められたわ。
技術部の方に後で行って自分の要望を伝えて頂戴。」
「いえ、わざわざ出向く程の事では・・・
ただ発砲時の音を小さくしてもらえばいいだけですよ。
それっこそサイレンサーのようなものを・・・」
「それを伝えに行きなさい。」
瀬戸の言葉を途中で止めるようにスラリと言う局長。
「・・・これより、瀬戸 甲子郎は技術部に向かいます。」
その場を無難にやり過ごすためか、甲子郎はおとなしく命令を聞くようにした。
それを見ると局長は再び話しかける。
「・・・音を気にするということは、日本の街中で発砲する気?」
「ええ、今回は住宅地の多い場所で起きていますからね。」
お手上げのポーズで甲子郎は返答する。
それを見て局長は少し納得がいかない表情で再び話しかける。
「貴方なら銃に頼る必要はないでしょう?」
そうすると甲子郎は振り返りながら
右手を上げ、親指と人差し指を伸ばし銃の形を作った。
「俺は文化が好きなんですよ。」
そう言って扉に向かい歩き出した。
「・・・最悪の場合を想定して戦術局も準備を始めているわ。
できることならば、私たち諜報局だけで事を収めてほしいけど、
無理はしないで。力が必要になったら彼らを頼れば良いわ。
・・・もう長野の二の舞だけは避けないとだめよ。」
去り際の甲子郎に局長がそう伝える。すると立ち止まる甲子郎。
「ずいぶんと頼もしい後ろ盾を用意しましたね。」
そう一言残すと甲子郎は部屋を静かに出た。




