表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/161

第十三話<敵として>-14

『くそ、どうすれば良い!?』

走りながら、策を練る琴和。

彼としては、まず矢子と旭の戦いを止めたい。

そして旭には今後ともこのような戦いから離れて欲しい。

だが現状を考えると後者は難しそうだ。

旭は自棄になった様子で戦っており、聞く耳を持たなさそうである。

それに今、再び説得しようとすると矢子に旭との関わりを知られてしまう可能性が高い。

矢子を警戒するつもりは無かったのだが、蘭子と違い一応は村雲の関係者。

それ故にカザーバと関わりを持った事を知られると厄介である。

以上のことから今、旭を戦いから離す事は厳しいと考える。


そこで旭の説得は今後にして、この場は二人の争いを止められれば良いと判断する。

しかしそこで大きな問題が発生する。

二人のとんでもない戦いに介入する事は至難の業であるからだ。

脅威なのは魔法の威力だけではない。

お互いの技により道や木々の破片が飛び散っては二人に降りかかっているのだが、

大きな塊は近づくなり、木っ端微塵に叩き切られている。

迂闊に近づこうものならば、斬られてもおかしくない雰囲気であった。


『ただ飛び込むだけでは巻き込まれてやられるだけだ。』

周囲を見渡す琴和。何か利用できるものが無いか探し始める。

すると自動販売機が目に入る。

『これだ!!』

ポケットから小銭入れを出すとコーラを買う。

そして強く振ると旭に狙いを定める。


『これを打ち落としたら中身が破裂して一瞬隙が生まれるはずだ、その時なら飛び込める!』

コーラを投げる構えを取る琴和。

旭の隙を作ると、矢子が飛び掛りかねないので、

タイミングは矢子と距離を置いた瞬間を狙うことにする。



「今だ!」

大きく振りかぶる琴和、しかしその時、背後から気配を感じる。


「おい、それをどうする気だ?」

その声に反応して振り返ると、

そこには赤いバンダナを巻いた男が腕を組んで立っていた。

「・・・あなたは?」

こんな状況下で遭遇する人は普通の人ではないという事は分かっているので警戒する。

一方バンダナの男は威圧するような素振りで話す。

「お前、村雲か?」

「違う。」

「じゃあ・・・禦だな!?」

急に殴りかかってくる男。その質問と行動からカザーバの一員と判断した琴和。


「やめろ!戦う気は無いんだ!」

拳を避けると距離を置くために後ろに下がる。しかしバンダナの男は

突進を止めなかった。

「おとなしくやられろよ!!」

「話を聞け!!」

コーラの口をバンダナの男に向けて封を開ける。

すると中身は噴出し男の顔面に吹きかかる。


「野郎!!」

男の突進は止まり、手で顔を一度拭くと琴和に睨みを利かす。

「フザケタまねしやがって!」

再び殴りかかる男。右手の拳は琴和の顔面を目掛けてくる。

「止めろっていっているだろ!」

とっさに左手で弾くと、カウンターを打つように右手で相手の胸を突き飛ばす。

すると胸を叩かれたせいか、むせるバンダナの男。

その間に琴和は話しかける。

「俺は禦でも村雲でもない。あなたたちに無意味に襲われているだけだ。

・・・だからこんな事はやめて、あの娘を連れて帰ってくれないか?」

半分無駄だとは思いながらも、説得を試みる。

少しでも厄介ごとを簡単に片付けたいという思いからだった。


「何言っていやがる・・・。」

胸を押さえながら歯を食いしばる仕草を見ると、引き下がってはくれないことは

容易に感じ取れる。

『仕方が無いか・・・。』

襲い掛かられたが、容易に反撃出来たことから

何とか退けられる相手と判断する琴和。

以前遭遇した門井や修也のような凄みは感じていなかった。

その中でバンダナの男は両手を胸の高さまで上げると睨みを利かせてくる。


「俺を怒らせたな。」

「何!?」

男の両手が鈍く光り始めると、不気味な炎のようなゆらめきが現れる。

「覚悟しやがれ!!」

叫びながら両手を広げると、何か術を放とうとする。

その時だった。


「動くな!!」

蘭子の声が男の後方から響き渡る。

ゆっくりと視線を後方に向ける男。

すると銃口が自分に向けられていることに気が付く。


『まさかアイツ、エアガンを本物の銃に見せかけて脅しているのか!?』

エアガンを購入する時に威嚇で使えるということは

話に出ていたが、実際にやるとは思っていなかった。

それ故に少し驚くと共に、見破られないか心配になる。


「・・・チッ、もう一人いたのかよ!」

琴和の懸念とは裏腹に、上手く騙せたようだった。

どうやら蘭子がコウモリを打ち落としていた場面は

見られていなかったようである。

そのまま動きが止まる男。両手のゆらめきも消え、おとなしく両手を上げる。


「アナタ、あの子の仲間なんでしょう?」

「・・・。」

「答えなさい!!」

大股で近づくと、男の後頭部に銃口を押し付ける蘭子。

脅しとはいえ、普段とは違った様子に少し怖さを感じる琴和。

「・・・一思いにヤレヨ。」

蘭子の方を恐る恐る見ようとすると、強く銃口を押し当てられ静止させられる。

「あの子に引き上げるよう伝えなさい。

そうしたら見逃してあげる。」

「なんだと?」

蘭子の提案は、琴和の気持ちを理解したが為のものだった。

『ナイスだ!』

琴和にとっては予想外の提案だったので少し驚いたが、

ありがたい行動と感謝をする。

しかし男にとって、見逃すという提案は理解が出来ないものであった。

禦や村雲にとってカザーバはテロのような集団。

壊滅させるべき対象と考えられているからだ。

「どういうつもりだ?」

その提案にどんな意図があるのか必死で考える男。

蘭子のことも禦か村雲と判断しているが故の謎であった。


「早く伝えなさい!!」

中々行動を起こさないので更に威圧をする蘭子。

銃が本物でないことを気付かれない内に事を済ませたいので

心が焦りだす。



「・・・お嬢!!」

少し考えた後、男が大声で旭に声をかける。

「平次!?」

その声に反応して視線を向けると

動けない状態の男が視線に入る。

「蘭子さん!?」

矢子もその方角を見ると、蘭子が人質を捕っている姿に驚き、動きを止める。

「汚いわよ!!」

歯を食いしばり怒りを顕わにする。


「すまねえお嬢、ここは退いてくれないか?」

申し訳なさそうに言う平次。

「バカ言わないで!置いて行けるわけ無いでしょ!?」

矢子に警戒しながら言葉を返す旭。

すると琴和が前に出る。

「置いて行く必要は無い、今日はもう引き下がってくれないか?

そうしたら彼を解放する。」

『琴和さん・・・。』

矢子としてはこの場でカザーバを逃がす事は反対だったが

温和な琴和の性格を考えると仕方が無いと思い、口を挟むことを止める。



「分かった。本当に開放してくれるんでしょうね?」

村雲からの提案だったら応じるつもりは無かったのだが、

相手が琴和ということもあり剣を下げて提案に応じる旭。

矢子と知り合いということで全てを信用は出来なかったが、

今までの関わりから、まったく信じられない相手では無いと感じたからだ。

そこで琴和を試す為に矢子を警戒の目で見る。

「矢子ちゃん、君も刀を納めてこっちに来るんだ。」

視線に気が付くと、旭の警戒を少しでも解こうとする琴和。

ここで矢子が戦闘を止めてくれると、当面の目標は果たすことが出来る。

その考えもあり、自然と提案が口から出る。


すると矢子は大人しく言うことを聞き、旭と距離を置き始める。

カザーバを逃してはならないという気持ちはあるものの、

現状は琴和たちにとって危険なものという認識もあったからだ。

その中で争いを止めることが出来そうな流れになったので

有利なうちに、事を収めることが吉と考えたが故の行動だった。


『上手くいったじゃない』

矢子が刀を鞘にしまいながら近づいてくる様子を見ると、

心の中でつぶやく蘭子。

そのまま上手く事が収まる雰囲気になってくると、

少し心が緩んでくる。



「蘭子!!」

急に叫び、走り寄る琴和。

「え!?」

それは一瞬の出来事だった。

今まで何の気配も無かった茂みの中から

大剣を構えた藤堂が蘭子を目掛けて突進してくる。


「仲間を放してもらう!」

重量武器を持っているとは思えないほどの速度で

攻め入る藤堂。

蘭子は完全に隙を突かれたので身動きが取れなかった。

『間に合え!!』

心で叫ぶ琴和。しかし無情にも藤堂の方が先に到達しそうであった。

『やられる?』

その言葉が蘭子の頭に過ぎる。

しかし次の瞬間、目の前の状況は大きく変わることになった。


「!?」

上空からベンチが次から次へと藤堂を目掛けて降りかかってくる。

突進を止め、最初の3つは回避するが、途中から回避しきれなくなり大剣で切り崩す。

目の前の出来事の前に固まる蘭子。

その時、平次は生まれた隙を見逃さず、前方に走り出し距離を空ける。



「何者だ!?」

次々と襲い掛かるベンチに対処しながら周囲を見渡す藤堂。

すると蘭子の前に櫻子がゆっくりと上空から降りてくる。

「この子はやらせない。」

蘭子に襲い掛かった事が許せなかったのか、冷たい表情で怒りを表している。

薄らとにじみ出る威圧は、殺意に近いものだった。

「幽霊・・・だと?」

櫻子を見ると少し驚く藤堂。

その間に周囲に散らばる木の破片を宙に浮かせる櫻子。

「・・・櫻子さん?」

普段の温和な様子とは違う櫻子に少し恐怖を感じ、

呼び止めるように話しかける蘭子。

しかし彼女の声は届かなかったようで、破片はナイフのように

藤堂目掛けて飛んでいく。

「どういうことだ!?」

幽霊に襲われるという想定外な展開に戸惑う藤堂。

木の破片を何とか交わすが、後方から別の気配を感じ取った。


「てやぁぁぁ!」

背後から斬りかかる矢子。

一度は大人しく引き下がるつもりであったが、

蘭子が襲われた事により、再び牙をむく。

「矢子ちゃん!?」

治まりかけていた状態がぶり返し焦る琴和。

どうにかしてまた鎮めたいと考え、矢子を静止させるように名前を呼ぶ。

しかし彼の横からは再び平次が襲い掛かかり、邪魔に入った。

「借りをかえしてやる!!」

「いい加減にしろ!」

しつこい攻撃に苛立ち、思わず声が荒くなると瞬間的に熱くなる。

すると勢いづいたのか平和的解決など考えもせずに、

平次の突進を交わし、カウンターで裏拳を右頬に決める。

よろめく平次。

そんな彼に対して今度は蘭子が飛び蹴りを決め平次を転倒させた。


「蘭子!?」

「まずはこの男を!」

『仕方が無いか・・・。』

一度は治めようとしたが、

ぐちゃぐちゃになってしまったこの状況では収拾が

つかないと感じると、仕方なしに身構える琴和だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ