第十三話<敵として>-12
多くの木々に囲まれる道を必死に走る琴和と蘭子。
櫻子は二人の後ろを飛んでいる。
「まだ22:00じゃないよね?」
蘭子が走りながら聞くと、琴和は後方に広がる空を見る。
「ああ、でも出現時間は前も早かったんだ。やっぱり時間をずらしてきたようだね。」
琴和の視線の先には、コウモリ型の怪物が
数十羽、夜空を舞っている。
甲子郎たちと別れてからは、ゆっくりと蘭子の家に向かっていた一行だった。
しかし上空に怪物の姿が現れることにより、一変して慌しくなる。
本来ならば、怪物退治のために見回りをしているのだが、
甲子郎たちがいないこと、そして何より蘭子が弱っていることがあるので
この場は立ち去ることを提案する琴和。
今は逃げる為に必死で走っている状態だ。
「まだ上空から降りてこないな。」
不気味に空から見下ろす怪物たち。
警戒しているのか、攻撃はまだ仕掛けてこない。
「この間に出来るだけこの場を離れよう。」
二人に提案をする琴和。しかしそうは言ったものの、
いざ襲ってこられたのならば、確実に逃げ切れない。
それだったら今のうちに少しでも戦いやすい場所を
探した方が良いというのが本音であった。
だが蘭子の事もあり、とてもそんな提案は出来ずに
今はひたすらに逃げることを優先しようとする。
ここ数日間は蘭子を不安にさせることが多く起こっている。
その中で戦闘を起こすと、また何かが引き金になってしまう可能性があり、
琴和にとってはそれが怖かった。
その時である、蘭子が不意に提案をする。
「ねえ、このまま走っていても、どうせ追いつかれるんだから
今のうちに戦い易い所を探さない?
それに体力の無駄だよ。」
初対面の日と同様、自分の考えと同じ事を言う蘭子に少し驚く。
「でもお前・・・。」
足を止め、心配そうな目で蘭子を見ると、彼女は首を小さく振る。
「私は大丈夫だよ。それより今をどうにかしないと。」
ハンドバックからエアガンを出すと、周囲を見渡す蘭子。
どうやら戦うにおいて有利な場所を探しているようだ。
「・・・判った。今は怪物退治に集中しよう。」
自分の考えていたことと同じ提案をされたので、
戦う意思を見せた蘭子を無理に止める事はしなかった琴和。
すると、櫻子に目を移す。
「櫻子さんすみません。ここら辺に入れそうな建物ありませんか?
空から次々と襲われたら分が悪いので屋内に入りたいんですよ。
屋根つきの休憩所とかが良いかもしれません。」
急に戦う方向に変えたので、反対されるかと思ったが、
その気配は無く、櫻子は軽くうなずくと返事をする。
「判りました、探してみます!」
そう言うと上空に上る櫻子。
琴和も周囲に何かないかを探す。
「・・・あれは?」
何かに気が付いた琴和がそうつぶやくと、蘭子は反応する。
「何か見つかったの?」
「ああ・・・でもあまり嬉しくないモノだけどね。」
琴和が茂みの中を指差すと、目のようなものが光を見せる。
それに警戒をし身構えると、
剣歯虎のような牙を持った異型の犬がゆっくりと姿を現した。
「咬まれたら痛そう。」
臆することなく、蘭子が冗談を交えるように言うと、
本当に大丈夫なのかもしれないと思う琴和。
「まずは犬からだよね?」
蘭子が確認を取ってくると、琴和はうなずく。
「うん、俺が前に出て戦う。
蘭子は援護射撃しつつ、コウモリを注意しておいてくれ。」
「大丈夫なの?」
「ああ、でもコウモリまでは見ていられないから、そっちは頼んだよ。」
「頼むって言われても、どうすれば良いの?」
「襲ってきたら教えてくれればいいよ。
後はどうにかする。」
「どうにかって!?」
蘭子が突っ込むように問いかけると、琴和はニコッとした後、
ナイフを取り出し犬に突っ込む。
「ちょっと、何も考えていないんでしょ!!」
慌てて援護射撃をする蘭子。
怪物は横に飛び避けるが、琴和は追うように斬り付ける。
斬撃は犬の体をかすめて、毛を数本斬る。
「踏み込みが浅かったか。」
手ごたえが無かったので、続けて斬りつけようとする琴和。
すると犬の怪物は空高く飛び上がった。
「嘘だろ!?」
突然のことで犬を見上げながら驚く琴和。
蘭子は慌てて空に向かって発砲をするが、
犬が急降下を始めて、当てることが出来ない。
「冗談きついぞ!」
慌てて横に飛び、空から飛び掛ってくる犬を避ける琴和。
体勢を立て直し、犬の方に体を向けると、
蘭子が叫ぶ。
「琴和君!コウモリが!!」
上空にいたコウモリの怪物が一斉に急降下をし始め地上1m程の高さで止まる。
そしてその場で数秒間じっとこちらを見るかのように停滞すると、
二人を目掛けて、一気に突進をしてくる。
「蘭子!!」
盾になるように蘭子の前に出る琴和。
「危ない!!」
そう蘭子が叫ぶ頃にはコウモリは琴和の目の前まで来ていた。
だが次の瞬間、横から多数の石つぶてが
コウモリたちを襲い突進を止める。
「小田原さん!!」
慌てた様子で櫻子が戻ってくる。突進を防いでくれたのは
櫻子のようだ。
「助かりました。」
少し安心したような表情を見せて礼を言う琴和。
その間に、蘭子は犬の怪物目掛けて3発ほど発砲をして
けん制をする。
「気を抜いちゃ駄目!!」
「分かってる。櫻子さん、コウモリに石をぶつけ続けてください!!」
「分かりました!」
再びナイフを構えると犬の怪物に向かって走り出す琴和。
そして櫻子は周囲に散らばる小石を宙に浮かせ始めた。




