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第十三話<敵として>-10

「蘭子さん、大丈夫でしょうか。」

甲子郎と二人で林の中に続く夜道を歩いていると、ぼそりと矢子がつぶやく。

「一体何があったんだろうな。」

合わせるように甲子郎が返すと、矢子はチラリと横目で見る。

「・・・お味噌汁、少ししょっぱかったですよね?」

思わず噴出す甲子郎。苦笑いで「まあな。」と言うと、矢子もつられて笑ってしまう。



「今日も叔母は帰ってこないのか?」

しばらくしてから甲子郎が問いかけてくる。

「はい、もう慣れっこです。」

別に寂しげというわけでもなく、平気そうに言う矢子。

すると少し考えた後に、次の質問を投げかける。

「ところで叔母の研究って何だ?」

「さあ、私も詳しくは分からないんですよ。」

同じような雰囲気で答えると「そうか」と言って会話が止まってしまう。


「やっぱり叔母さんの事が気になりますか?」

唐突に聞き返してくる矢子。何かを探るような眼差しでチラリと見ると、甲子郎はニヤッとする。

「興味が無い、と言ったら嘘になるな。

早間は博士と呼んでいた。一体どんな事をやっているのだろうな。」

改めて聞き返すと、矢子は甲子郎の様子を伺う。

「・・・甲子郎さんは早間さんとどういう関係なんですか?」

「腐れ縁だ。」

「腐れ縁?ということは結構前からのお知り合いなんですか?」

「まあ、そうなるな。」

頭をかきながら答えると、矢子はジッと甲子郎を見つめる。

そして次の質問をしようと口を開いた時のことだった。


何か地面から特殊な力を感じ、ピクッとする二人。

「避けろ!!」

突然叫ぶ甲子郎。

二人はそれを合図にしたかのように左右に分かれて飛ぶと、

地面から土の杭が突き上がってくる。

横に飛びながら体をひねるようにして杭の方に体を向ける矢子。

すると杭が次々と地面から突き上がり、波が迫るように自分を追ってきている事に気が付く。

「止まるな!」

矢子が様子を確認するために体の向きを変えたことが大きな隙に見える甲子郎。

思わず声を荒げる。

しかし矢子は回避に専念せず、その場で小太刀に手を添える。

「てやぁぁぁ!」

威勢良く頭上から地面に向かって居合い抜く矢子。

小太刀が地面に向かって鋭い縦斬りを仕掛けると、アスファルトに

大きなひび割れが生まれる。

『・・・地面を割りやがった。』

小さな体で放った技に驚愕する甲子郎。

そのせいで、一瞬動きが止まってしまった。

すると足元が盛り上がってくることに気が付き慌てて横に飛ぶ。


「この技・・・!」

次々と突き上がる杭を避けながら周囲を見渡す甲子郎。

すると僅かな気配を感じ取る。

「そこか!!」

木々に包まれた暗闇へ発砲すると、何かに当たった音はせず手ごたえは無かったが、

急に杭の出現が止まる。

「甲子郎さん!?」

矢子が駆け寄ってくると甲子郎は彼女の方へ手を向けて静止させる。

「固まるな。・・・厄介なのに出くわしたようだ。」

無理して余裕の表情を作っている甲子郎。その視線は発砲した先に向けられている。


「甲子郎・・・それがお前の名か。」

木々の間から、薄らと大きな人影が現れる。

「やはりお前か・・・嘉島!!」

甲子郎が名を呼ぶと、嘉島は足を止め鋭い視線を向ける。


「嘉島・・・政継。」

その名の脅威は彼女も耳にしていたせいか、、一歩たじろぐ矢子。

ほんの少しの間だったが、重い沈黙が周囲を包み込んでいくのであった。

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