第十三話<敵として>-9
「お前、一体何をした?」
急に琴和の肩を組んできた甲子郎。
今は21時になり、琴和たちはいつも通り、見回りを開始していた。
しかしまだ時間になっていないので、緊張感はあまり無い状態である。
「え?何のことですか?」
突然のことで理解できなかった琴和。少し焦りながら聞き返すと
甲子郎は疑った目で見る。
「今日の飯、少ししょっぱかったぞ。
それにアイツ、元気が無いようだ。」
自分たちの前を歩く蘭子を右手で指差して小声で言うと、琴和は呆れた目で答える。
「それで僕が何かやったと思った訳ですか?」
「違うのか?」
「違いますよ!」
思わず大きい声になる琴和。
すると、その声に反応して蘭子が振り返る。
「何してるの?」
肩を組まれている琴和を見ると、理解できないといった表情で問いかける蘭子。
「いや、大した事無いよ。」
琴和は手を広げて左右に振ると、笑顔で誤魔化そうとするが甲子郎はジッと蘭子を見つめる。
「お前、体調悪いのか?」
ストレートに聞く甲子郎。
櫻子は先ほどのこともあり、あまりその話題は振ってほしくないと感じ顔をしかめたが、
矢子は蘭子の様子がおかしかったことが
気になっていたのでその質問に敏感に反応する。
一方琴和は蘭子がどう反応するのか少し心配になっていた。
「やっぱりそう見えます?」
素直に自分の様子がおかしい事を認める言い草を見せる蘭子。
表情も少し疲れた感じであった。
すると甲子郎は琴和から手を放し、少し考える素振りを見せる。
しばらく蘭子を見つめると、言葉を放つ。
「よし、今日はお前帰れ。」
端的に指示をする甲子郎。すると普段なら嫌がり、食いついてきそうな内容なのだが、
今日は軽くため息をついた後、大人しくうなずく蘭子。
「ごめんなさい、今日はそうさせてもらいます。」
その発言に目を丸くする琴和。今までの経験から、絶対大丈夫といって
帰らないと思っていたのだが、全く正反対の答えを蘭子が出したからだ。
「大丈夫なんですか?」
矢子にとってもその答えは、普段の蘭子からは考えられないので
思わず心配が口から出てくる。
すると「うん。」と一言返事をすると琴和を見る蘭子。
「じゃあ琴和君、帰ろう。」
「え?俺も?」
突然、琴和にも帰りを促す蘭子。
今日受けたショックから中々立ち直れない自分を感じていると、
琴和も同じく、引きずっているのではないかと思ったからだった。
「そうよ、私一人だけ夜道を歩かせるつもり?」
少々強引な手口で琴和を帰路につけさせる蘭子。
「それもそうだな。
よし琴和、お前も蘭子を送ってから帰れ。」
頷いたあとに甲子郎がそう指示をすると、琴和は頭をかいた後
「分かりました。」と了解をする。
それは蘭子の元気が戻らない中、戦闘に入ったら危ないと判断したからである。
「今日は私と甲子郎さんで何とかやります。
お二人はゆっくり休んでください。」
矢子が心配そうに言ってくると、「そうするよ。」と琴和は返事をする。
「それじゃあ帰るなら急ごう、早くしないと怪物に遭遇するかもしれない。」
櫻子が周囲を見渡しながら提案すると、蘭子は甲子郎に頭を下げる。
「それじゃあ、おやすみなさい。」
挨拶を簡単に済ませると、その場を去る琴和たち。
今日はこれ以上、何も起こらないように願いつつ帰路につくのであった。




