第十三話<敵として>-8
薄暗い地下駐車場に、忙しない様子で10数人が
車周辺で積み込みや乗車の作業をしている。
そこはカザーバの施設内にある駐車場で、時刻は20時半になろうとしていた。
「今日はやけに武器を積み込むのね。」
ワンボックスカーの後方で門井が積荷に気付くと、作業している男が振り向く。
「ええ、門井さんたちだけ危険な目に遭わせるわけにはいきませんから。
自分たちだっていざと言う時はね。」
力強くガッツポーズを取って答えると門井は小さく笑う。
「そう、じゃあ無理しない程度に援護はお願いしようかしら。」
「すみません、遅れました!」
作業の中、慌てた様子で修也が駆け寄ってくる。
「おう、積荷はあるのか?」
「いえ、ありません。」
車の傍で作業をしていた中年男性の問いかけに
誠実な素振りで答えると、後ろから赤いバンダナを巻いた痩せ型の男に肩を叩かれる。
「ほら、遅れてきたから余りものな。
選択肢は無いぜ。」
ニヤッとして清涼飲料のペットボトルを渡される。
「え、これ嫌いなんだけど。」
「遅いのが悪いんだ。貰えるだけありがたいと思えよ。」
嫌そうな顔を見せる修也。作戦中の水分補給という名目で配給される飲み物であるが
本日の物は口に合わないものであった。
「何だったらコッチと交換する?」
修也の横からリンゴジュースが現れる。声の主は旭だ。
「いいの?」
少し嬉しそうな顔を見せると早速、手を伸ばす修也。
「良くねーだろ、お嬢は30分も前から此処にいたんだぞ。」
「え?そうなの?」
車の後部座席から体格の良い男が顔を出してにやけながら話しかけてくると
少し驚いた様子で旭に聞く修也。
「もー寛さん、修也さんをからかわない。」
「何言ってるんですか、俺は翁様の代わりにお嬢が不自由しないためと思ってですね・・・。」
「アハハ、その割には真実味がない。顔がにやけてるわよ。」
和やかな状況の中、修也と飲み物を交換すると、旭は車の積荷を確認する。
「ちょっとこれ大剣じゃない!藤堂さんも戦う気なの?」
バンの積荷にある一際大きい剣を見ると、振り返り誰かに確認を取ろうとする。
「いえ、あくまで念のためですよ。
本部から一人の欠員も許さないと再三連絡がありましてね。
自分らが戦闘に入るのは、本当にどう仕様もない時だけです。」
細身で顔のこけた男性が旭の前に出て説明をすると、少し納得のいかない様子になる旭。
「だからといってこれを持ち歩くのは駄目じゃない?
検問があったら一発で逮捕よ?」
「なあに、その時はその時ですよ。
それより、お嬢様が窮地のときに助けに入れない方が良くないです。
もし何かあられた場合、翁様に顔向けできません。」
「もう、お爺様がどうとかは止めてって言っているでしょ。
別に私がどうなったって、皆には罪無いわよ。」
「まあそう言うな。皆、お前のことが心配なのだ。」
旭が不貞腐れていると丁度、嘉島がゆっくりと向かってくる。
すると全員嘉島のほうを向き、言葉を待つように静まり返る。
「いいか、今のところ順調に事は進んでいる。
一番重要なことは捕まらない事、そして情報の漏洩を防ぐ事だ。
奴等を混乱させるために
今日からはヤンカの出現時間を変更することにするが、
優勢だからといって気を抜かず
慎重に事を運ぶぞ。」
全員の意識を統一させると嘉島は車に乗り込む。
それを合図にしたように、皆も乗車をし始める。
「藤堂、古傷に障るから無理はするな。」
「・・・はい。」
車が動き出すと顔を本人に向けず、外を見ながらボソリと言う嘉島。
それに穏やかな表情で返事をする藤堂だった。




