第十三話<敵として>-4
10階建てのビルの上に双眼鏡を使って
下の道路を見渡す人影がある。
彼の視線の中には黙々と歩く旭の姿が映し出されている。
「こちら雲の目。
追跡の姿は見られない。」
人影は無線機を取り出しそう報告すると、
旭の携帯が鳴り始める。
それに反応して電話に出ると
小声でぼそりと話し始める。
「了解。これより帰還します。」
十字路に差し掛かると左に曲がり、
すぐさま右手に見える小さな路地に入り込む。
その後も、小さな路地を迷路を辿るかのように
小走りに進み、15階建てのビルに入っていく。
建物の中に入ると、
肌寒い外とは変わって、温かい風に包まれる。
上着を脱ぎ手に持って廊下をゆっくり歩き出すと、
人の気配の無い静けさに包まれた世界に足音が響き渡る。
その足音はゆっくりとエレベーターに向かって行くのであった。
エレベーターの前に立ち止まりボタンを押そうとすると
急にドアが開く。すると目の前には嘉島の大きな姿が
目に入る。
「只今戻りました。」
突然の登場に一瞬驚くが、直ぐに落ち着いて報告をする旭。
その様子にゆっくりと視線を向ける嘉島。
「無事のようだな。首尾はどうだ?」
エレベーターからゆっくりと降りながら質問をすると、旭は道を空けながら返答する。
「はい、問題なくヤンカの術を放ちました。
反応した数は3羽、上々です。」
「3羽か。これで本日16羽。
・・・もう少し数を増やすか。」
「増やすというのは、術者の増員ですか?」
独り言のようにぼそりと言った嘉島の言葉に答えを求める旭。
「いや、術を施した鳥だ。
数がほとんど減っていない事から、やつらに気づかれていないという事が判る。
これは大きな隙だ。何人たりとも襲わないようにしているから
やつらはこのまま気付かないだろう。
ならば数を増やして作業効率を上げるべきだ。」
そう言うと、目の前にある柱の下にある内線をかけ始める。
「私だ、ヤンカの数を増やす。
鳥を30羽ほど用意して欲しい。」
端的に事を済ますと、旭を見る嘉島。
「本当は私が術を放ちに外へ出れば良いのだが、
顔が知られていている挙句にこの身長だ。日中だと、どうも目だってな。
お前も禦に顔を見られているが、私ほどマークはされていないだろう。
術を放つことで、やつらに気付かれる危険性があるが、もう少しの間、
辛抱して欲しい。」
労いの言葉を掛けると、旭は首を振る。
「いえ、私なら大丈夫です。
それより今は、チャージャのお姉さんを早く助け出すことです。
そのためなら私、まだ頑張ります。」
旭が毅然とした態度を見せると、嘉島は少し寂しげに「すまんな。」と一言残す。
そしてゆっくりと振り返り、奥の部屋に入っていくのであった。




