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第十二話<離れた地での約束>-4

「ねえ旭、何でこの人はここまで必死に戦っているの?」

チャージャの部屋で映画を見ている二人。

内容は悪い組織にさらわれた息子を

元軍人の父親が一人で助けに行くものである。

激しいアクションシーンが多く組み込まれているこの作品を見ている中、

唐突に質問をするチャージャ。


「それは、自分の子供がさらわれているから助けるためよ。」

「何で助けるの?」

「大切な存在だからだよ。」

「でもそうすることによって自分が危険な目に遭っているんだよ?」

「自分の身よりも大切なものと思っているからよ。」

次々と質問を深めていくチャージャに、一般的とも思える返答をする旭。

すると考え込む少年。


「・・・やっぱり僕たちと同じだね。考えることは何ら変わらない。」

何かを確認し結論を出した素振りを見せたチャージャ。彼の横顔を覗き込むと話しかける旭。

「それはそうよ。私たちは何ら変わらない存在だと思うよ。」

彼女の目をジッと見つめるチャージャ。

その動作に戸惑うことなく、じっとしている旭を確認すると再びテレビ画面に目をやる。

「ここに着てからテレビ、書籍、そして人の話等、多くの君たちの文化に触れてきた。

確かに文化は根本から違うけど、物事の感じ方、捉え方に何ら変わりは無かった。」


暫く固まるチャージャ。そして一言だけ放つ。

「やっぱり僕、旭に迷惑をかけている。」

「何を言い出すの?」

不安そうに返す旭。

「考え方が同じだから分かるよ。僕たちの捉え方で考えても、

僕は君に迷惑をかけている。」

黙って立ち上がるチャージャ。そして窓を開けると肩を小さく震わせる。


「情けないよ・・・こんなになっちゃうなんて。」

そうつぶやくと体の周りに光の粒がいくつも輝き出し、

全身が包まれたと思うと、姿を消してしまった。

「チャージャ!?」

慌てて大声で呼び止める旭だったが、その声は彼に届くことは無かった。



「へえ、少しは力が戻ってきたようね。」

後ろからする声にビクッとする旭。

恐る恐る振り返ると、そこには腕を組んで壁に背をもたれる郁葉の姿があった。

「郁葉様?いつの間に!?」

「今さっき。それにしてもどうしちゃったのかしらねぇ。

この映画、ここからが面白いのに。」

暢気な口調でビデオを止める郁葉。

「分かりません、ただ私に迷惑をかけているって言って、

急に何処かへ・・・。まさか帰った!?」

「それは無いわね。故郷へ帰るには、まだ力が足りないわ。

きっと近くへ飛んでいるだけね、彼。」

何かを見透かしたような素振りで郁葉はテレビを消しながら答えると

テレビのリモコンを見つめる。

「あ、ごめんなさい。アナタはまだ見ていたかしら?」

「いえ、私は別に・・・。」


「じゃあ何で見ていたの?」

突然に意外な問いに少し戸惑う旭。

「え、私は・・・そのチャージャに見せようと思って。」

そう答えると旭に目を向ける郁葉。

「その気遣いが彼に申し訳なさを与えているのかもしれない。」

「そんな、私はそんなつもりじゃ・・・!」


慌てて反論する旭。

「そう、アナタはそんなつもりじゃない。

自分が出来る事を良かれと思い、正しい事としてやっているだけ。

だけど彼には辛いこと。嬉しく、ありがたいけど逆のこと。

優しさという名の柔い牙は、時として心に刺さる自責の杭。」


「・・・。」

理解するのに難しい表現をする郁葉の言葉を必死で理解しようとする旭。

「私は・・・何か間違っているのですか?」

真剣な顔で質問をする旭を見ると、郁葉は近寄り旭の頬にそっと手を添える。

「いえ、アナタは間違っていないわ。

私からも礼を言いたいくらい頑張ってくれた。

ただ、一つ気付いていないだけ。」

そう言うと、手を離す郁葉。そして目を合わせると、何かを問いかけるような素振りを見せる。


「アナタがやりたい事は何?」


「!?」

その一言にドキッとする旭。すると郁葉はソファーに腰をかける。

「もしアナタが病気で倒れて、大切な人がずっと看病してくれるとするわね。

その人は自分のやりたい事、仕事、プライベート、

それら全てを捨ててまで看病してくれるの。


看病する本人はアナタのためと考えるか、

それ以前に看病したいからやっているだけで

別に迷惑とは感じていないかもしれない。

でも看てもらっている本人にとってはどうかしら?」


考え込む旭。

「でも・・・その話は分かりますけどチャージャは身も心もボロボロで。」

「本当にボロボロな時は何も出来ないわ。

少しでもそう感じるようになったら元気になってきた証拠。

あとはバランスの問題ね。」

「バランス・・・。」

「大切な人の錘になることは、とても辛いこと。

お互いに認め合い、吊りあいの取れた関係を作ることは必要よ。

合わせ過ぎず、合わされ過ぎず。」


郁葉の話を聞くと、考え込むようにうつむく旭。その表情には戸惑いも見える。

「私は・・・どうすれば。」

その言葉を聞くと郁葉は「そうね、難しいところよね。」と言った後、暫く何も話すことはなかった。

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