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第十一話<調(しらべ)>-13

赤茶色のテーブルの前には鮮やかな色をした夕食が

並べられている。黄色いスープは円を描く白いクリームと共に湯気を立て、

真っ赤なトマトを中心とした淡い緑の野菜は新鮮さを伝えてくる。


その場所で早間は何かを疑うかのように硬い表情で周囲を見渡す。

「あら、どうしたの?そんなに怖い顔をして。」

早間の目の前にワインを注ぐ赤毛の女性。その動作に合わせる様に目を合わせる早間。

「どういうつもりですか博士。

突然呼び出したりして。」

「どうって、今日はお仕事中止になったんでしょう?

それだったら私の暇つぶしに付き合ってよ。一人の食事じゃ寂しいじゃない。」

「何でそれを!?」

自分が捜索の任務を下ろされたことを知っていると気付いた早間は、

勢い良く立ち上がり少し怖い顔で女性を見つめる。

すると女性は早間の隣にゆっくりと座り、肘を机について両手を組み、顎を軽く載せる。

目を軽く細めて微笑むと軽くため息を一つ。

「昼過ぎの事よ、怖い顔した村雲の捜査員がやってきて

君が何処にいるのか聴いてきたわ。

携帯の電源を切っていたようね。誰にも邪魔されたくなかったといったところかしら?」

「たまたま電波が届かない場所にいただけです。

・・・博士のところにもアイツ等はきたのですか?」

「ええ、少し怖かったわね。まあ、何も知らなかったから答えようがなかったけど。」

冗談交じりとはいえ女性が「怖かった」と答えると、自分の行動で迷惑をかけたと感じて

目を逸らし、顔をしかめる早間。


「あの、いくつか質問をしてよろしいですか?」

一呼吸置いた後に、早間は真剣な眼差しを向けて話しかける。

しかし女性は薄らと笑みを浮かべると、ワインのグラスを目の前に差し出して

早間の真剣をすり抜かせるようにかわす。

「その前に、乾杯。」


普段とは違う雰囲気の女性に一瞬戸惑う早間だったが、すぐさま注がれたワインのグラスを

手に取り軽くグラス同士を触れ合わせる。

すると女性はワインを口に運んだあとに笑みを見せる。

「美味しいわね、このワイン。やっぱり高い物は違うわね。」

「よろしいでしょうか、博士。」

リラックスした女性をよそに、堅苦しく接する早間。するとため息の返事を貰うことになる。


「君、年はいくつ?」

「今年で31です。」

「私より3つ年上ね。そうしたら女性を喜ばせる方法くらい心得ていてほしいわ。」

「え?」

思いがけない台詞を聞き動揺する早間。その様子は顔にも大きく出ており女性に笑われてしまう。


「あはは、冗談よ。言ったでしょ、暇つぶしに付き合ってって。

軽い素振りは見せておいて、実は女が苦手なようね。」

「そんな素振り、いつ見せましたか?」

動揺を隠すようにワインを口に運ぶ早間。

「素振りなんて、普段の生活からにじみ出るものよ。

それで、何が聞きたいのかしら?」


サラダを取りながら女性が話を振ってくると、早間はワインをテーブルに置き話し始める。

「・・・私に情報を提供するよう呪術研の研究員に連絡をしたのは博士ですね?」

「江戸川君、元気だったかしら?」

「何故そのような事を?」

「・・・村雲を深く知りたいと思っているのでしょう?

それは私も同じ。だから力を貸したまでよ。」

「何故ですか!?そんなことをしたら博士の立場が危うくなります。

今だってそうです。私は今日の事で村雲に目をつけられたでしょう。

それなのに家に呼び出して。きっと怪しまれますよ。」

声を大きくする早間にサラダを皿に取って差し出す女性。

「そうね、そうかもしれないわ。でもいいじゃない?」

「良くありません!自分のせいで誰かに迷惑が掛かるのは嫌なんです。」

「何を言っているの?別に貴方のせいじゃないじゃない。

これは私が勝手にやっていることよ。」

「ですが。」


困った表情に変わった早間に顔を向ける女性。

「今まで多くの村雲の人間を見てきたけど、君は何か違うわ。

その真直ぐさが村雲への不審に繋がっているのかしら?

いえ、不審じゃない。敵対に近いものすら感じられる。」

「そんな感情は抱いていませんよ。午前中に言った通り

悪事に加担したくないだけで・・・。」

「私は研究内容的に人の思考による行動パターンについても

研究する必要があってね。それに基づいて君を見るとそう見えるわ。」

そこまで言われると、車で送った時のような余裕は無く

何かを諦めた表情になってサラダを食べる早間。


「はは、そこまで見抜かれているとは。

これはいけませんね。まずい状態です。」

「ええ、そうよ。だからこれからは

そういう感情を抱いても、周りに気付かれないようにしなさい。

・・・私のようにね。」

鋭い眼差しで早間を見つめる女性。


「博士も・・・。」

戸惑い続きの早間は思わず固まってしまう。

「話は終わりよ。今日はもう楽しみましょう。私は敵じゃない。」


再びグラスを差し出すと優しい笑顔で乾杯の合図をする女性。

その言葉を聞き、表情を見ると警戒心が一気に解かれたような気持ちになり

肩から力が抜けた感じになる。

そしてふと、安心感のような温かさを感じると、自分のグラスを再び手に取る。


「私もです。」

合図に答えるようにワインを軽く当てると、少し笑みを浮かべて答える早間だった。

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