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第十一話<調(しらべ)>-9

「あれ?矢子ちゃん?」

ショッピングモールを歩いていると、ショーウィンドウを眺める矢子の姿を見つけた琴和。

「琴和さん?どうしたんですか、こんな所で。」

声に気付いた矢子は小走りで近寄ってくる。

手には紙袋を持っていた。

「ああ、晩御飯の買出しだよ。」

蘭子と軽く昼食を取った後、バイト先へ送った琴和。

その後、買い物のためにショッピングモールへ足を運んでいたのだった。


「あ、今日は蘭子さんバイトで晩御飯を作らないと駄目なんですよね?」

「そう、だから買出し。まあいつも行っているけどね。」

そう言うと矢子が見ていたショーウィンドウを見る。そこには流行の服が

綺麗に展示されていた。

「服を見ていたの?」

「はい、今日は服を買いに来ていました。」

にこやかに答える矢子。

「そっか。しょっちゅう蘭子と雑誌を見ているもんね。

ただアイツみたいに衝動買いして溜め込んじゃ駄目だよ。」

「ははは・・・。」

冗談半分で会話を進めると、琴和はジッと矢子を見る。

「ところで今日は何を食べたい?」

「そうか、献立を決めないといけないんですね・・・。」

困った顔をする矢子。

「そういえば甲子郎さんって何が好きなんだろう?」

ふと疑問がよぎる琴和。

「じゃあ直接聞いて見ますか?」

見上げるように矢子が言うと、早速携帯を取り出す。

「あ、今仕事中じゃない?」

「平気ですよ。」

楽しそうに矢子が言うと携帯を操作し始める。


「んぁ?琴和じゃねえか?」

「甲子郎さん!?何でこんな所に?」

「さっきまで一緒だったんですよ。

もう仕事は良いんですか?」

「え?」

少し驚く琴和。

「ああ、悪かったな。これはお詫びだ。」

小さい箱を手渡す甲子郎。

「何ですかこれ?」

不思議そうに箱を見つめると、甲子郎は頭をかく。

「ああ、香水だ。気に入ったら付けてくれ。」

「え?」

「え?」

矢子だけではなく琴和も疑問系になる。

矢子の表情は戸惑いで、琴和の表情は『は?』といった

理解しがたい感じのものだった。

「何だよ、その顔は・・・。」

若干恥ずかしそうに琴和を見る甲子郎。

「え・・・いえ、何か意外だなと。」

「嫌か?」

今度は矢子を見る甲子郎。

「あ、いえ・・・有難うございます。」

戸惑いながらもお礼を言う矢子。恐らくそう言わざるを得ないと感じ取ったのだろう。



「で、お前は何でここにいるんだ?」

甲子郎が話題を変えてくると、琴和も乗ってくる。

「夕飯の買出しですよ。そうだ、甲子郎さんの好きなものって何ですか?」

「・・・特には無いな。何でそんな事を聞くんだ?」

頭をかきながら甲子郎が答える。

「いえ、今日は何を作るかなと・・・。」

「ああ、今日は蘭子がバイトか。で、悩んでいるわけだな。」

「はい、そうだ、たまには甲子郎さんが作ってみません?」

笑顔で提案をする琴和。すると甲子郎は不意を突かれた表情になる。

「俺が・・・か?」

「ええ、甲子郎さんの作るものに興味あるよね?」

矢子に同意を求めるとコクコクと首を縦に振る。

その様子を見ると、暫く考えた後にニヤリとする甲子郎。


「いいだろう、今日は俺が作ってやるよ。

買出し行くぞ、買出し。」

妙にやる気を見せる甲子郎。食品売り場に向かって歩き出すと、

琴和は笑顔で矢子と顔を合わせるのであった。

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