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第十一話<調(しらべ)>-7

「ここに入るのか・・・。」

女性服専門店の前で立ち止まる甲子郎。顔は少し引きつっている。

矢子の買い物に付き合おうと気軽な気持ちで来たものは良いが、

いざ店の前まで来ると、店内からの空気が自分にとって異質なものに思えて仕方が無かった。


「あの・・・やっぱりいいですよ?」

甲子郎の様子から矢子が心配そうに話しかける。

しかしその気遣いは逆に引き返し辛く感じるものであった。

「いや、何でもない、行くぞ。」

意を決して店内に入る甲子郎。

「う・・・。」

しかし自意識過剰になっているせいか、周囲の視線が異質なものを見るかのように

自分に集まっているのではないかという不安が襲ってくる。


「どんなものが欲しいんだ?」

気を紛らわせるために矢子に話しかける。

「そうですね、雑誌を見て『いいな』って思った雰囲気の服に似せて

組み合わせていくと良いって蘭子さんに教わったんです。

だから今日は大体のイメージは組み立ててきたんですけど、

色々見てみたいのが本音ですね。」

キョロキョロしながら矢子が言うと、それに合わせて甲子郎も辺りを見渡す。


「で、どんなイメージなんだ?」

そう質問されると矢子は少し照れた様子になる。

「えっと・・・蘭子さんみたいに大胆なものじゃなくって、

ちょっと落ち着いた感じがいいかなって思うんですけど・・・。」

小さく吹く甲子郎。

「確かにアイツのは、たまに色っぽすぎな時あるな。」

「でも隠しすぎても駄目なんですよね。」

「お、お前も大胆になったものだな。」

「そういう事じゃありません!」

からかうと良い反応で返す矢子。そしてそっぽを向いてマネキンが着た服を見始める。

「それがイメージしたものか?」

「いえ、組み合わせの参考として見ているんですよ。」

「そうか・・・。」

腰に手を当てて同じように見る甲子郎。すると矢子が話しかけてくる。

「今日はツインニットの物を買おうと思っているんですよ。」

「ツインニット?」

「はい、袖が七分くらいで、タンクトップの組み合わせがイメージですね。」

「・・・そうか。」

ちゃんと理解したかどうか怪しい表情を見せる甲子郎。

「あとスカートも買わないといけないんですよね。

蘭子さんはホットパンツを勧めてきたんですけど、

そうしたら上もそれなりに合わせないと駄目だし、

私にはちょっと早いかな・・・。」

「・・・そうか。」

同様の反応を見せる甲子郎。困惑が再び訪れたようだ。


その時である、甲子郎の携帯に連絡が入る。

「?」

携帯を取り出すと、着信は早間からと気付く。

「瀬戸だ、何だいきなり?

・・・分かった、丁度今近くにいる・・・

ああ、分かった。」

「お仕事ですか?」

電話を切ると、矢子が振り返り尋ねる。

「ああ、ちょっと行かなくちゃならなくなった。

でも1時間もすれば戻ってこれそうだ。

悪いが一人で選んでいてくれるか?

終わったらまた連絡をする。」

「はい、お仕事頑張ってください。」

その言葉を聞くと、軽く手を上げて一時の別れを合図しつつ

その場を去る甲子郎。

矢子は後姿を見送ると、再び服を選び出すのであった。

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