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第十一話<調(しらべ)>-6

3月も半ばに差し掛かり、春の陽気を感じる日が時折姿を見せ始めていた。

まさに今日はその日に当たり、厚着で出かけると少し汗ばむ感じである。

明るい太陽の光を窓越しに少し浴びながら早間は人通りの無い道を車で走っている。


呪術研究所を出てから、早間がまず行った事はラーメン屋探しだった。

情報によると、行方不明の皆本 勝也は術の実験が成功したら

途中にある有名なにんにくラーメンの店に寄る予定だったらしい。

そこから研究所とラーメン屋を線で結んで、

その延長線上に皆本が消息を絶った場所があるのではないかと考えたからだ。

店の検索にはパソコンを利用した。

単にラーメン屋といっても数多く存在しており、どこが該当の店かは断定は出来なかったが、

有名でにんにくラーメンを大々的に宣伝している店ともなると、数店に絞る事が出来た。

また術を試すということから人目のつかないところ、つまりは郊外よりにある店で絞り込む事により

皆本が行こうとした店を一店、割り出す事が出来た。

その店の名は「陽勝軒」。

深夜まで営業をしているラーメン屋で、会社帰りに車で

来店する客が多いらしい。早間はまず、その店に行ってみることにした。


店に入ると、店員が早速近寄ってくる。有名な店ともあり

時間はまだ昼前であったが、席は満席になっていた。

「すみません、少々お時間をいただきますがよろしいでしょうか?」

「あ、いえ、食事ではなく実はお聞きしたい事がありまして・・・

この方を昨夜、見ませんでしたか?」

店員に顔写真を見せる早間。しかし店員は首を振る。

「・・・ちょっと見覚えありませんね。

すみませんが写真お借りしてもいいですか?」

写真を手渡す早間。するとキッチンの方に下がり、

他の店員にも聞き始めてくれたのだが、渋い顔で戻ってくる。

「皆記憶に無いと言っていますね。」

「そうですか、有難うございました。」

店員の様子から情報は無しと判断した早間は写真を受け取るなり、店を出ようとした。

「失礼ですが、警察の方です?」

「そうですね、そんなところです。ご協力感謝します。」

突然の質問を軽く受け流す早間。そして車に戻ると、更に先を目指した。



車を走らせること5分、早間は道路の脇に黒いワンボックスカーが停まっている事に気が付く。

不思議なことに周りに店も家もないというのにその車は停まっていた。

「さ・42-49・・・ビンゴだ。」

車の速度を落とし、ナンバープレートを確認すると早間は独り言をする。

その番号は行方不明になっている皆本が所持する車の番号である。

車を近くに停めて先ほど目を通していた資料を取り出し、再度確認をする早間。

「とりあえず車を調べるか。」


車を降り、警戒しながら近づく早間。

外から見ると人は乗っておらず、エンジンも掛かっていない様子だった。

ドアに手を伸ばすと、鍵が掛かっており開けることができない。

そこで軽くため息をつくと、とりあえず窓から車内を見ることにする。


車の中は特に荒らされた様子も無く、持ち主だけが忽然と姿を消したといった感じだった。

次に周りを見てみる。

車は林に面したところに停まっており、その周りには道路標識以外は特に何もない。

そこで少し歩いてみる早間。すると、5m程先にガードレールが途切れて

林の中に入れそうな場所を見つけた。

探るようにその場にしゃがみこむ早間。すると、林の中に足跡を見つける。

それは男性用の靴で作った形だった。

「この先に行ったのか?」

そうつぶやき、林の中に入ろうとする。


しかしその時だった。車が3台、こちらに向かって走ってくることに気が付いた。

初めは特に警戒する必要はないと感じる早間。しかしそれらの車は

荒い運転で早間を取り囲むように停車をする。

身構える早間。すると車の中から黒いスーツを着た体格の良い男性が

次々と出てくる。

「早間 卓だな?」

「何者ですか?」

威圧するかのように問いかけられるが、早間は落ち着いて返す。

「我々は村雲の捜査員だ。君は今回の件から下ろされた。

これ以上の詮索は禁止だ。直ちに帰りたまえ。」

「どういうことです?」

「それを知る必要はない。ここは我々に任せてもらおう。」

そう言うと、捜査員と名乗る男たちは皆本の車を調べ始めたり

林の中に入っていったりした。

「少なくとも、理由は聞かせてもらいたいものですね。」

腕を組みながら言うが、返答に応じようとはしなかった。

と、その時に早間の携帯が鳴る。


「はい、早間です。」

電話は早間の上司に当たる人間からだった。

「早間、今回の件からは直ちに身を引くのだ。」

電話越しに落ち着いた男性の声がゆっくり伝わってくる。

「今、捜査員も私に同じ事を伝えに来ましたよ。・・・どういう事ですかこれは?」

「・・・お前が余計なことまで探ろうとした為と報告を受けている。」

「余計な事って、研究についてですか?それは捜索に必要な事と判断したからです。」

「だが、上はそう判断しなかったようだ。」

「ですが・・・。」

「ここは大人しく引き下がった方が良い。

私もこれ以上はかばえないぞ。命令に背くとどうなるか分かるな?」


未だに納得のいかない早間だったが、上司の用件を伝える様子から

ここは身を引いた方が良いと判断する。

「分かりました。これより通常任務に戻ります。」

携帯を折りたたむと、早間は男たちを見る。

「それでは私は戻ります。後は頼みますよ。」

そういい残すと車に戻りエンジンを掛ける。


「気に入らないな。」

独り言をつぶやくと、車をUターンさせて街へ向かっていった。

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