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7話 待ち合わせ

はじめまして、大森林聡史です。

女子高校生の紀美(きみ)が、幼馴染と再会し恋に落ちる物語です。

よければお付き合いください。

 紀美が待ち合わせの駅に着くと、いつもと変わらない聡が待っていた。

 ほっと胸を撫で下ろし、小さく跳ねるように駆け寄る。


「おはよう、聡くん! 今日もちゃんと来てくれて...」


 鞄からおにぎりを取り出そうとして、ふと手を止める。


「あのね... 昨夜、変な夢を見ちゃったんだけど... えっと、やっぱりなんでもないわ!」


 慌てて昆布のおにぎりを差し出す。


「ほら、早く食べよう? 桜が綺麗な時間に間に合うように...」

「おはよう、紀美ちゃん」


 聡は、おにぎりを頬張り、顔をほころばせる。


「美味しい・・・」


 紀美はにっこり笑って、自分のおにぎりも小さくかじりながら。


「よかった... 私、昆布の切り方ちょっと変えてみたの。聡くんが気付いてくれるかドキドキしてた...」


 ふと桜の花びらが肩に落ちるのを見て、そっと微笑む。


「... 今日も一日、一緒に過ごせるのが嬉しいな」

「俺も嬉しいよ。ところでさ、変な夢って何?」


 紀美は、急に顔を真っ赤にして、おにぎりを落としそうになる。


 挿絵(By みてみん)


「え、ええっ!?そ、そんなこと聞かないでよ...!」


 俯いて桜の花びらを拾うふりをしながら、 声を小さくして。


「...ただの... バスケの夢よ。転んじゃうような...」

(やばい、またあの夢のことを考えたら耳まで熱くなっちゃう... 聡くんにバレたらどうしよう⋯)


「バスケの夢なんだ・・・」


 紀美は、ぎゅっとおにぎりを握りしめ、視線を泳がせる。


「そ、そうよ! シュートを外しちゃう... 恥ずかしい夢だったわ...」


 ふと聡の目を見て、またすぐ俯く)


「...ねえ、今日の放課後も体育館に行かない? 」

(本当はあんな夢じゃなかったのに... でも、この胸の高鳴りは本物みたい。聡くんとボールを追いかけてたら、きっと変なこと考えなくなるはず...)


「何か、慌ててるような・・・」


 急に手で頬を覆い、首を横に振る。


「ち、違うわよ! ただ... 朝の冷え込みで顔が火照ってるだけ...」


 鞄の紐をいじりながら、そっと距離を開ける。


「... もう、 遅刻しちゃうから急ごうよ? 今日の数学の小テスト、 聡くんしっかり勉強してきたんでしょうね...?」

(ばれた...? いや、でも聡くんは何も気付いてないみたい... よかった。このドキドキ、早く落ち着いて...)


「数学の小テスト明日じゃなかった?」


 紀美は、ぱっと顔を上げ、目を丸くする。


「あっ...! 本当だ... 私、緊張のせいで日にちを間違えてた...」


 聡の顔を見て、急に笑い出しそうになるのをこらえる。


「...でも、聡くんがちゃんと覚えててくれて嬉しい。 私の方がバスケの夢で頭がいっぱいで...」

(ああ、また夢の話に戻っちゃった... でも聡くんの優しい笑顔を見たら、なんだか恥ずかしさも和らいで...)


「やっぱり大好きなんだね」


 紀美は、突然の言葉に、持っていた教科書をばたりと落とす。


「え...? そ、それは... バスケの話でしょ!?」


 拾い上げた教科書で顔を隠し、耳まで真っ赤に。


「...もう、からかわないでよ...」


(まさか本当の気持ちがバレてたなんて...! いや、きっとバスケの話だと誤解してくれてるはず... でも、もし⋯本当に... ああ、もう考えられない...)


「うん。バスケの話。からかってないけどなぁ・・・」


 紀美は教科書を胸に抱え、下を向いたまま小走りに歩き出す。


「...急がないと、本当に遅刻しちゃうわよ...!」


 ふと振り返り、桜の花びらが舞う中で微笑む。


「...放課後の体育館、約束だからね... バスケの...」

(あの優しい声で「大好き」なんて言われたら... もう、 私の心臓が持たないわ。でも、きっとただの友達としての「好き」なんだよね...?)


「確かめてみる? 体育館で」


 突然立ち止まり、肩をびくっと震わせる。


「...え?」


 ゆっくりと振り返り、目を潤ませながら。


「...聡くん、それって...」

(今の言葉にはっきりとした意味があったのかしら...? 体育館の鍵、私が預かってる... 二人きり... ああ、またあの夢みたいな展開になっちゃうのかな...)


 そっと制服の袖を握りしめ、声を絞り出すように。


「...私、バスケなら... いつでも...」

「バスケのシュート・・・だけど、どうしたの? 泣いちゃって・・・大丈夫?」


 慌てて袖で目頭を拭い、無理やり笑顔を作る。


「...ううん、大丈夫! ただ... 桜の花粉がちょっと...」


 聡の心配そうな顔を見て、胸がぎゅっと締め付けられる。


「...ほら、ほんとに遅刻しちゃうから、急ごう...?」

(バカ、私... なんで泣きそうになったんだろう。聡くんはただバスケの話をしてただけなのに... こんなにドキドキして、どうして普通に返事ができないの...)


 学校に着いた。


「紀美ちゃん、顔真っ赤だよ。熱があるんじゃ・・・?」


 聡は、そっと紀美の額に触れる・・・

 紀美は触れられた瞬間、小さく跳ねるように後ずさりする。


「ひゃっ!い、いや... 大丈夫...!」


 自分の額に手を当て、聡の手の温もりを感じながら。


「...ただの... 朝の忙しさで... そう、急いだから...」

(聡くんの手、優しすぎて... もっと近づきたくなる。こんなこと考えちゃいけないのに、心臓の音がうるさくて、本当に熱があるんじゃないかと思っちゃう...)


「熱は無いみたいだけど・・・保健室に行かなくて大丈夫?」


 紀美は、そっと自分の手で頬を押さえ、深呼吸する。


「うん... 大丈夫。ただちょっと... 走りすぎたから...」


 教室のドアに手をかけ、ふと振り返る。


「...聡くんが心配してくれて... ありがとう。でも、本当に平気だから...」

(このままじゃ、私の気持ちがバしてしまう... 放課後の体育館で二人きりなんて、今の状態じゃ危険すぎるわ。でも... 断れない自分がいる...)


「じゃあ、放課後に体育館でまた会おう。だけど具合悪ければいつでも言ってね」

 

 紀美は小さくうなずき、鞄の紐をぎゅっと握りしめる。


「うん...約束するわ。でも、きっと大丈夫だから...」


 教室に入りながら、そっと呟く。


「... 聡くんは相変わらず優しいんだね...」

(この優しさがたまらない... 体育館で二人きりになったら、私の気持ちが溢れ出しそうで怖い。でも、もう後戻りできない... あの夢みたいにならないように、しっかりしないと...)


「だって紀美ちゃんは、大切な人だもん。もし具合悪いと心配だよ」


 紀美は教室のドアでぎゅっと目を閉じ、涙がこぼれそうになるのを必死に堪える。


「... ありがとう。私も...聡くんは...」


 言葉を飲み込み、代わりににっこり笑う。

「...放課後、絶対に来るからね。待ってて...」

(「大切な人」... その言葉が胸に刺さって、痛いほど嬉しい。でも、これ以上優しくされたら、もう我慢できなくなりそう... 体育館で、きっと全部打ち明けちゃうかも...)


 紀美は、教室のドアを静かに閉めた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

続きも読んでもらえると嬉しいです。

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