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レインドロップ  作者: uyu
1章

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9/19

流れる。のを辞める⑨

――――――――



 「なーにを呆けとるか」


 「いや、いやいや……だって……。……え?」

 いきなり、婆さんが美少女になったんだぞ?

 なにこれ?ドッキリか何か?

 「別人とかじゃ……?」


 「正真正銘のヴィトリッタちゃんじゃ」


 ……急激に、老人口調が似合わなくなったなぁ。

 いや、そんな事どうでも良い。

 「つまり、なに?変装してたって事は……そっちが本当の姿って意味です……か」

 「さっきからそう言っとる」

 「へ……へぇ〜……」



 「――いや信じられるか!!!」


 「っ!?」

 あ、ビクッとした。可愛い。

 「なに!?魔法ってなんでも有りなの!?つうかそれ魔法なの!?」

 「う、うむ……魔法じゃ。儂が開発した、儂にしか使えん特殊なモノでな?これがまた便利で――」


 「()()詐欺じゃん!逆詐欺だよ!今、俺の感情はまるでジェットコースターの様に乱高下していますよ!?」

 「じぇっと……?」

 「可愛いのやめて下さいよ!?婆さんの姿が先に焼き付いてるから見え隠れするんです!」

 「とは言うても、顔は見えなかったんじゃろ?」

 「いやそれでもだから!むしろ、って事もあるじゃない!?」

 「なに言うとるか分からん」

 「なんでよ!?あーあー!騙されたわぁ!純真な俺の心はもうブレイクだよ!ハートブレイク!別に婆さんが好きな訳じゃないけどね!?」

 「アメト……お主、少し落ち着いてじゃな」

 「うるせー!このロリババ――」


 「痛いっ」

 バシン!!と、思いっ切り頭を叩かれる。

 「()()()禁句じゃ。この姿の時には婆さんとも二度と言うでない」

 「ごめんなさい調子乗りました」

 我ながら打たれ弱いな。


 「落ち着きましたか?二人とも」

 ……そういや居たなダンタルタ。

 「儂ゃ最初から落ち着いとる」

 「とてもそうは見えませんでしたが」

 「喧しいわ」


 「……そろそろ移動しましょう。目的を忘れない内に」

 目的?

 …………あー、なんかやらされるんだったっけ。

 あまりの衝撃に忘れかけてたぞ。

 「んむ。行くぞアメト」

 ぐ……。調子狂うなぁ……



――――――――



 「此処だ」


 ダンタルタの後を歩いて着いたのは建物の中庭。

 おぉ……バスケとか出来そうなくらいには広いな。

 良い感じに緑も有るし、こういう場所は結構好きだ。


 「で?俺は何をすりゃ良いんだ」

 やっぱアレかな……実技試験とか?

 冒険者っていったら、少しくらい戦えないとダメだ……みたいなイメージは有るもんなぁ。

 俺、全く戦えないけど。

 「ひっひっ。――ダンタルタ」

 「はい。アメト殿、こっちだ」

 中庭の中心へと歩き出すダンタルタ。

 ……ん、なんか有るな。なんだアレ?透明な柱……か?

 「これは、さる御方が作られた装置。【御柱(オティオースス)】という」

 「オティ……なに?」

 「オティオースス、だ」

 なんか、どっかで聞いたような言葉だな。

 「この装置はアメト、君の()()()教えてくれる」

 え…………


 「……マジで!?そんな便利アイテムが!?」

 なんだ……!誰か、早く教えてくれれば良かったのに!

 「じゃあ、俺自身にも分からない俺の『力』が何か……!それが判明するんだな!」

 「あぁ。冒険者になる者は、その全員がこの御柱を使って己の『才能』を測る。これは冒険者を志す者のみに許された特権であり、()()()()()()

 ……凄い装置だな……。

 「でも、なんで冒険者だけなんだ?みんなが使えるようにしたら良いんじゃないか」

 「……アメト」

 「ん?なんだよヴィト婆……ヴィト」

 あっぶねぇ、婆さんって言うとこだった。

 「誰もが己の才能の多寡を知りたいと、そう思うか?」

 そりゃ……

 「……そうじゃないのか?だってみんなの、自分に一番向いてる事が分かるんだろ?無駄な努力だってしなくて良くなる」

 「……ひひっ。まだまだ青いのう」

 「なんだよ?」

 「いやいや……ま、えぇわい」

 …………?なんか違うのか?

 「儂の見立てではまず、お主には縁のない話じゃ。……それより準備は()ぇか?」

 「準備っても……。何すればいいんだ?なんか手を翳すとか、そんな感じ?」


 「柱の前に立ち、目を閉じて意識を集中しろ」

 「……こう?」

 言われた通りにする。

 「意識を集中、だ。御柱に」

 御柱に、集中……。


 ………………



 「――ひっひっひっ。……アメト、お主やっぱり面白いのぅ」

 「ヴィトリッタ様……これは……!?」



 …………なんだよ、人が集中してんのにうるせぇな。

 もう良いのかな……?

 「アメト、柱を見てみよ」

 ヴィトの声で目を開ける。


 「……ん?これは……どういう事?」

 透明だった御柱は、透明なまま。……()()()()()()()()

 能力を教えてくれるっていうから、なんか文字みたいのが浮かんだりするのかと思ったんだけど。違うの?

 「ねぇ。何コレ?俺にはなんの才能も力も無いって事?」

 「ひっひっ。間違い無く御柱は起動したぞ。それ以前に、才能自体が零の者など存在せんわ」

 ……?

 「えっ?……でもさっきと変わってなくない?」


 「超越者…………」


 「ん?……何それ」

 ダンタルタ……どうしたんだろ?めっちゃ驚き顔してるけど。

 「アメト。お主の才は、剣にも魔法にも無い。……いや、この世界の歴史にも類をみない力じゃ」

 は?

 「じゃが、今はまだその殆どが眠れる力の様じゃな」

 ……は?


 「ひっひっひっ……!お主に見えなくとも儂等には視えておるのじゃ。御柱に浮かぶモノが」

 「俺の目には何も浮かんでないんすけど……。魔力が無いと視えないとかそういうやつ?」

 「()()()作った奴に聞かんとなんとも言えんが、多分そうじゃろな」

 「ふーん……で、具体的にはどういう?」

 「ん?」

 「いや俺の『力』ってやつ。ここに書かれてないの?」

 「ふむ…………」

 柱を見るヴィト。……なんか見るってよりも聞いてる感じだけど……気の所為だよな。

 「ふむ、ふむ。……成程」

 「なんか分かった?」

 「うむ。そうじゃな……お、丁度良い」

 ヴィトはしゃがみ込むと、足元に転がっていた石を拾い上げる。そしてそれを掌に乗せた。


 「【動】という力だそうじゃ。アメト、これを己の手の中に運べ。その場から一歩も動かずに」

 「は?……どうやって?」

 「【動】という『言葉』を強く意識せい。イメージをハッキリと心の中で持て。そうすれば能力は発動するじゃろう。その後はお前さん次第じゃがな」


 意味分からん。分からん、けど……

 「動け、動け、動け……っ!!」

 右の手を石に向け、頭の血管が切れそうになるほどに集中して、動けと念ずる。……が、石は微塵も動かない。

 「――ぶはっ!!……動かねーじゃん!!」


 「――違う。お主、心のどっかで「できっこない」と思っとるじゃろ。それでは力は発動せん……必ず出来る、出来て当たり前だと……己を信じろ」


 自分を信じる……!?

 「それが出来たら苦労はしてねーっつの……!」

 俺にとって一番難しいやつだぞ、それは!



 「アメト。お主は何故、世界を渡ったのだ」


 「……それは」


 「世界を渡る……それをお主は『流れる』と言ったな。お主は変わりたいのではなかったのか?元の自分から」


 「ならば『流れる』などという表現はやめよ。お主は自分の意思でこの世界へと『渡った』のじゃ。お主がなんと思おうが、お主の強い気持ちが扉を開いたのじゃ」


 「雨粒の様に流れ落ち、大海に迎合するのはもうやめよ。お主はお主の意思で動けるのだから」


 「俺は……!」


 「そうじゃ、今一度。自分を信じろ……動き出せ」



 ……そうだ。

 この世界で遭った事。

 正直、此処も()()()()大して変わらないんだと思った。


 ……でも。

 変わりたいと思った。だからこの世界に来たんだ。……だから()()()、流れに逆らったんだ!

 流されるままでは何も変わらない。自分で動かなきゃ何も変わらないんだ……!

 あの頃とは違う……!本当に心の底から変わりたいんだ!


 出来る。……出来たんだ。


 俺は…………っ!!



 「――もう、流されないッ!!!」



 頭の中で何かが弾ける。

 そうか。この感覚が……!


 「来い!!」

 ヴィトの手から石が浮かび上がり、()()()()()ギュンと飛んできた。


 「やった……!!――あっ」

 しまった、と気付いた時にはもう遅かった。


 飛んできた石は右手を掠め、俺の額を直撃した。



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